銀魔神死す
開け放たれた玄関に、魔法がかかっていた。
館の主人がかけたものらしく、踏み込むとと、その部屋に閃光と共に移動していた。
ケビン、メイト、ギフト君の順に部屋に到着する。
魔法銃をかまえていたケビンが、ぼやく。
「なんてこった・・・」
数秒の間のあと、遮られていた視界が開く。
「なに?」
「どうしたの?」
そこには、床に倒れている銀魔神。
ケビンが様子を見て、かぶりを振った。
「死んでいる・・・」
「まさかベンソンが犯人なの?」
「おそらく」
「この館にまだいるのかしら?」
「いない」
ギフト君が言うと、ケビンが立ち上がった。
「封印は解かれたんだろうか?」
「そんな感じはしない」
「だから、いざこざがおきた・・・?」
「かもしれないわ」
「ベンソンは行方不明ってわけか」
「何かあしがかりになるもの、残ってないかな?」
「エルフの里じゃないかしら?」
「エルフ?」
「そう。きっと、そこよ。あのローブ、プラチナエルフの製品だったわ」
館を出て、カチグオネルの無事を喜ぶ。
ペガサス馬車に乗り、出発する。
そのあとを魔法の絨毯がついてきたので、途中で馬車の扉を開けた。
中に入ってきた魔法の絨毯は自分から丸くなると、安心したかのように席におさまった。
昼下がり、森に入ってしばらくペガサス馬車は地面を進む。
カチグオネルが歩をゆるめ、言った。
「おるぜ」
馬車から降りると、そこにはベンソンが立っていた。
視線が合うと、微笑された。
「まさかこんなに早く再会するとは思いませんでした」
「なるほど、再会の予定はなかったわけだ」
「ははは」
「笑いごとじゃない。それから、言っておきたいことがある」
「なんだろう?」
「種族を超えた愛を手に入れる、というのは逸話の類だ」
「ふぅん・・・なるほど」
ベンソンは持っていた白い箱のようなものを、投げてよこした。
それをキャッチして、ギフト君に見せるケビン。
「どうだ?」
「うん、本物だ」
ケビンは背中を見せて歩きだだしたベンソンに言う。
「こんなにもあっさり渡してくれるのか?」
「もう、興味ない」
「銀魔神のこと・・・」
「ああ、かっとなって、つい、ね・・・母上にバレなきゃ別にいい」
ベンソンが立ち止まる。
そして、矢が一本、威嚇のために放たれ、メイトの足元近くに刺さった。
「エルフ」
いつの間にか目の前に現れた女のエルフに、弓矢を向けられる。
ケビンが言う。
「こちらに戦意はない」
両手を降参のポーズにしているメイトを観察し、そのエルフは言った。
「そのティアラ、うちの里の製品だな」
「ああ、存じませんでした」
「そうか、まぁいい」
「話は終わりましたの」
「うちの息子に何の用だ」
「息子?」
女のエルフはどうやらベンソンの義理の母親らしい。あまりにも若く美しい姿だ。
戦意を放つその姿でさえ、どこかなまめかしい。
「あの、母上・・・話は終わりましたから・・・」
なるべく冷静を装ってはいるが、ベンソンから動揺が見えた。
放たれた矢が、それぞれの近いところに刺さる。
数人の女のエルフが集まってきて、威嚇したのだ。
ベンソンが、僕の友人です、と声を荒げた。
「『ゆめのあと』を持ってきたよ」
ギフト君がそう言うと、ああなんだ、と間合いを詰めてきたエルフ達が矢を収めた。
エルフ、身体の線を強調した妖艶な服が、若々しい姿にまとわれている。
「今回の『ゆめのあと』は、プラチナエルフが装飾する、という天命だな」
「そうだね。僕、ギフト」
「ああ、なるほど。よもやあのひとり好きのベンソンに友人がいたとは。案内しよう」