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ゴールドドラゴンの城


崩れた階段に、板がはぬけた橋、仕掛けのしてある絵画・・・いりくんだ道。

 まるで迷路のような道順と不気味な薄暗さにに少し緊張しながら、地下へと向かう。

 ゴールドドラゴンは金にしか興味がないらしい。

 ならば金装飾の調度品があってもおかしくないのに、とメイトが言うと、

 ベンソンが、地下にコレクションしてあるんですよ、と答えた。


「ゴールドドラゴンは、灼熱の炎を吐きます。どうか機嫌をそこねませんように」

「うん、魔法銃を一丁、メイトに渡しておこう」


 ケビンは二丁のうち一方を、メイトに差し出した。


「使い方は?」

「今、思い出してる」


 メイトは魔法銃をにぎり、しばらく目をつぶっていた。


「もうすぐ目的地です」

「ベンソン、『ゆめのあと』のありかは、君が知っているんだよな?」

「いえ、探すしかありません」

「なんてこった・・・」


 休憩をしていたギフト君が目覚める。


「難儀そうだね」

「だいたいのありかは?」

「うん、近づいてきている」

「目的地についたら、分かるかな?」

「分かると思うよ」

「うん、それならいい。命がけだ」

「あ、明るい場所に出るよ」

「声をひそめて下さい」


 地下に入ると松明の火が燃えていて、

 そしてそのともしびに照らされた金と金装飾に目が眩みそうになった。

 まるで丘か山のように金のコインが盛られていて、そこにドラゴンが眠っている。

 火を噴かれたら、炭になってしまうかもしれない。

 緊張でかたずを飲むメイト。


 ベンソンとケビンがドラゴンに近づくために魔法の絨毯を降りた。

 大きな柱の影まで魔法の絨毯で移動すると、思わずため息がもれるメイトとギフト君。


 誰だ、と少し呂律のない声がした。


「おやおや、そのしゃべり方、寝ぼけておいでか?ベンソンですよ」


 ああ、ベンソンか、とまた回っていない呂律で話したのはドラゴンだ。

 口から何かを出し、そして再度ゴールドドラゴンは喋った。


「何の用だ」

「「ゆめのあと』の力、欲しいですか?」

「『ゆめのあと』の所持者はその目が金色になると聞く」


 ケビンが言う。

「それは逸話だ」

「返さぬ」

「持っているんですね?」


 そう言ったか否か、ケビンは魔法銃をゴールドドラゴンに向けた。

 そうするとドラゴンは、さきほど出した何かをまた口に入れた。



「ガムを噛んでいるのかしら?」

 遠目から彼らの様子を見ているメイトがそう言った。

「今はそんなことより、石を探さないと」

「それもそうね」

「この部屋にあると思う」

「もっと詳しいことはわからないの?」

「近づいたら分かると思う」



「返してはもらえませんか?」

 返さぬ、とドールドドラゴンが言って、しっぽで金の山を踏み鳴らした。

 ケビンが魔法銃を撃つ。

 ぐ、と苦しみに耐えるゴールドドラゴンの声がした。

 ケビンとベンソンが避け、ドラゴンの鋭い爪がえぐるようにかすめた。

 ゴールドドラゴンが動き出す。

 それをかわきりに、魔法銃の応戦。


 メイトとギフト君は見つからないように部屋中を魔法の絨毯で飛び回る。

 木箱を見つけ、開いてみる。

「これ?」

「違う・・・」

 メイトとギフト君は溜息を吐いた。


 

 ケビンは飛びすさりながら、銃を撃つ。

 だんだんと追い込まれていく中、その顔には動揺ひとつない。

 背後には金のコインの山。

 鋭い爪の攻撃をよけ、金色が舞う中、銃を撃つ。

 ゴールドドラゴンがのけぞり、口を開けた。

 その時、ギフト君がはっとする。

 魔法のうちわを取り出し、ギフト君は宙を飛ぶ。


「移動してる理由が分かったっ。『ゆめのあと』はドラゴンの口の中だっ」


 それを聞いたメイトが、近くにあった金の杯と金のスプーンを鳴らした。

 魔法の絨毯に飛び乗る頃には、ゴールドドラゴンはメイトを追いかけている。

 とてつもない速さで魔法の絨毯は天井へと向かって飛ぶ。

 そしてとてつもない速さでゴールドドラゴンの顔がせまった。


 メイトは魔法の絨毯を一回転させてドラゴンの首元へと銃の狙いを定めた。

 魔法銃にエナジーを淹れ、先から光があふれるほど貯める。


 その銃弾は引き金をひくことで、見事にドラゴンの首のうしろに命中した。

 悲鳴をあげて口を開けるゴールドドラゴンは、気絶をして倒れた。

 倒れた拍子にとんでもない音を出し、足元いっぱいの金のコインが飛び散った。


 ギフト君が一番近くにいて、ほぼ同時に高みの見物をしていたベンソンが動いた。

 ベンソンはドラゴンの口の中に手を入れて、四角い白い箱のようなものを示した。

 ギフト君が吟味する。


「これだっ」


 少し呼吸が荒くなっているメイトを支え、ケビンと魔法の絨毯がやってきた。

 ケビンは足元の金貨をざくざくと踏みながら案内人のもとへと向かう。


「封印術は銀魔神が解けるでしょうか」

 ベンソンがそう言うと、ギフト君がうなずいた。

「封印術は、基本的にかけた本人しか解けないことになっている」

「どこかで聞いたことはあったが、やはりそうなのか」


 ケビンとメイトが『ゆめのあと』近くに到着する。

 白い箱をいろんな角度で観察している案内人の魔法使いベンソン。

「『ゆめのあと』の所持者は種族をこえた愛を手に入れるとは本当でしょうか?」

 ケビンが答える。

「ああ、そう言われている」

「なるほど。『ゆめのあと』、いただきます」


 煙があがったかと思うと、案内人の魔法使いは姿を消した。


 唖然としているケビンが、は?と思わず声を出した。

 どこに行ったの?とギフト君。

 意識がもうろうとしているメイトが、眠そうに言った。


「きっと、銀魔神のところよ」

「なるほど」

「封印を解きに行ったんだ・・・」


 ケビンは魔法の絨毯にメイトを横にさせギフト君を片手で抱えると自分も乗った。


 これから先、どうなるの?とメイトがぼやく。

 帰り道わからないよ、とギフト君。

 ケビンが胸ポケットの魔法書を示した。


「大丈夫。こんなこともあろうかと、魔法書に来た道をおぼえさせていた」

「じゃあ、来た道を戻ればいいんだね」

「そういうことだ」

「時間、かかるね」

「休んでいなさい」


 メイトは小さく何度かうなずくと、すぐに寝息をたてはじめた。



     ♚♛



 ゴールドドラゴンの城の迷路を抜け出す頃には、朝になっていた。

 メイトが目覚め、横にケビンが眠っているのを見つける。


「ん?」

 ケビンが視線に気づいて、目覚めた。

「おはよう」


「少し休めた・・・意外だ」


 体を起こし、たばこをふかし始めるケビン。

 ギフト君はまだ眠っている。


「お腹すいてきた・・・」


「これ」

 ケビンが赤いリンゴをしめす。


「どうしたの?」

「途中でリンゴの木があった」

「ありがとう」


 空飛ぶ魚の群れが、朝霧にかすかに魚影を落としている。

 明けてくる光に、まだ少しうとうと寝ぼけている一匹とメイトがぶつかった。

 メイトは頭を押さえる。

 ケビンが苦笑しながら、メイトの頭をなでた。

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