銀魔神の館
「到着」
夕刻、地面に着地して、カチグオネルが言う。
馬車を降りて館の玄関口、どうやって入れてもらおうかと悩もうとした時。
《ネクタイにしているのは、ゴブリンズの新作じゃないかい?》
どこからか機械を通した壮年の男の声がした。
「ほう、あなたが銀魔神ですね。正解です。腰につけてるやつは古め」
《ほうほう、確認・・・ほう、あのレア時期の。入りたまえ、入りたまえ》
玄関はがらんとしていてひとけはなく、美しい絨毯がしいてある。
その大きさが変わる魔法の絨毯に案内され、銀魔神のプライベートルームへ。
そこにいたのは、チョッキと白いズボンをはいた太鼓腹の男。
あたまにはターバンを巻いて、ターバンに大きな宝石と羽根が飾ってある。
ひとしきりシルバーアクセサリーについて問答を楽しんだケビンと銀魔神。
待っている間、メイトとギフト君は紅茶を飲んだり、渦巻きアメをなめたり、トランプをしたりしました。
本題に入る入る頃には、日も暮れて。
「『ゆめのあと』はたしかに、わたしが持っていた」
「過去形?」
「そうだ、ゴールドドラゴンに間違って奉納してしまった」
「どういうこと?」
「月に一度、この界隈を守るために、ゴールドドラゴンに金装飾を奉納している。その時に間違って渡してしまったんだ」
「ゴールドドラゴンは性格が悪いときく。悪用されないといいが」
「それにはおよばん。返してくれと言うと「イヤだ」と言うので、魔法をかけた」
「ほう、どんな?」
「石の力の封印術だよ」
「なるほど」
「ゴールドドラゴンの城は迷路のようになっている。ペガサス馬車なんかで向かったら食われてしまうぞ。魔法の絨毯と案内人を呼んでやろう」
煙があがり、そこには茶色のローブを着た魔法使いらしき美しい男が現れた。
「話は聞こえていましたよ」
「ベンソン、こちらケビン、メイト、ギフト」
それぞれが仕草で挨拶する。
「どうも」
カチグオネルを館に預かってもらうことになった。案内人の魔法使いベンソンと共に魔法の絨毯に乗り、メイトたちはゴールドドラゴンの城へと向かう。
山々の間に大きな湖。
そこで食事をしようということになった。
ギフト君が湖にもぐり、黄色いエビを三十匹も取って来てくれた。
魔法の炎でそのエビをケビンが焼いている。
その間メイトは、しばらく横になり休んだ。
魔法の絨毯から指先を出して、湖面に触れる。
月光の下、水が走り軌跡を残して、銀色に散った。
食事を終えて、再度魔法の絨毯は上昇し進み始める。
いつの間にか、山の中にそびえたつ城影が小さく見えてきた。
夜空を飛んでいる途中、メイトがベンソンに言った。
「そう言えば、素敵なおめしものね」
「ああ、母がしたててくれたローブなんです」
「エルフのローブよね?」
「ああ、バレたか。義理の母がエルフなんです」
「へぇ~・・・お住まいはエルフの里なの?」
「ええ、まぁ」
「すごいなぁ。一度は行ってみたい場所だわ」
「とても美しい所ですよ」
少し自慢げに、ベンソンは口元を上げた。