宝石魔女の屋敷
屋敷の前について、カチグオネルが「到着」と言う。
宝石魔女は宝石が大好き。
自分の心臓を宝石にして、魔女になってしまうくらい宝石が好きなのです。
そんな魔女に、「宝石をプレゼントしに来ました」と言うと、案外と簡単に屋敷に入ることができた。
金髪のメイドが案内をして、お昼時で食事中らしく、その部屋に招かれた。
そこにいたのは中年の女で、彼女の背後に飾ってある絵画にも本物の宝石が輝いていた。髪飾りにネックレス、イヤリングに指輪、爪の装飾も宝石だらけ。
「それで、くれる宝石は?」
「条件があります」
「なに?」
「宝石をプレゼントするかわりに、あなたがオークションで競り落とした『ゆめのあと』を見せていただきたい」
「ほう、いいだろう。ただし、宝石のプレゼントが先だ」
「見てからがいいな」
「プレゼント」
「見てから」
「プレゼント」
「見てから」
「ほう、せきーーーーーーーーいぃ」
突如気でも狂ったのか、魔女は立ち上がり、テーブルにあがった。どこからか出した魔法の杖二本で、魔法攻撃をしてきた。光が飛ぶ。ケビンとメイトは横に飛び避けて床を転がり、ギフト君はテーブルの下にもぐった。
その場で自分の分の紅茶を淹れ、飲みだす金髪のメイド。
ケビンは魔法銃、メイトは魔法の杖を取り出した。
応戦しようするが、魔女の放つ光が飛び交う。
そろりひそりとテーブルの下を移動していたギフト君は、長い長方形のテーブルの反対側につくと、イスを使ってテーブルの上にのぼり、魔女のうしろに回り込みました。魔法のうちわを取り出し、両手に持ってあおぐ。するとギフト君は宙に浮き出し、魔女がふりむいた頃、気絶眠りの魔法を放つことができました。
倒れる魔女を椅子にしばりつけ、どうしようか、となった時。
「この部屋にあるんですよ、例の宝石」
そう言ったのは金髪のメイドで、飲んでいた紅茶のカップを置いた。
「協力しますよ」
「え、この金庫?」
「そうです」
黒いダイヤル式の金庫が、宝石を埋め込んだ壺の隣にある。
メイトが魔法の杖を振った。
金庫には何も変化がない。
「これは、魔法では開かないんです」
「なるほど」
メイドはナフキンに持参のマジックペンで何かを書いて、ケビンに投げてよこした。
「金庫の番号です」
大きな丸眼鏡をはずし、束ねていた髪をほどく、金髪のメイド。
メイトが「あ、手配書に載ってるひとだ」とぼやいた。
金髪メイドが、にっと笑った。
「怪盗花猫、見参」
「あ、これ番号が反対なのか?おお・・・本当に開いた」
皆の視線が金庫に向く。
金庫の中には、桐箱が一つ若い香りを放っていた。
「ギフト君、見たら本物かどうか分かるんだよね?」
「そうなんです」
桐箱を開けると、そこにはこぶしほどもあるカットされた透明な宝石。
「どうなんだい?ギフト君」
ギフト君は残念そうにかぶりをふった。
「これは、『ゆめのあと』じゃない・・・」
「じゃあ、それ、僕にくれないかな?」
怪盗花猫が言うと、ケビンが質問した。
「君が狙っているのは『ゆめのあと』ではないのかい?」
「いや、『それ』が欲しいから潜入したんだ」
「我らの知るところではない」
「オーケー」
桐箱に宝石を戻すと、「いっただき~」と彼女は楽しそうに言った。
バルコニーのらんかんに足をかけ、怪盗花猫が振り向いた。
「お礼にひとついいことを教えよう。『ゆめのあと』は、銀魔神が持ってるよ」
「なんだって?」
「じゃあね~ん」
怪盗花猫は、まるで消えてしまったかのように華麗にその場を去った。
♚ ♛
「『ゆめのあと』の所持者は、魔神なの?」
「銀魔神とはあだ名だ」
ケビンのスーツに合わせたネクタイは、黒に黒が浮き立つような柄。
指輪の魔法石、蔵之助からシルバーアクセサリーをいくつか取り出した。
ネクタイを飾ったり、腰を飾ったり。
魔法書を開いているメイトとギフト君は、それをなんとなく見ています。
「銀魔神、魔法書に載ってるよ?」
「彼は、魔法使いなんだよ」
「ほ~・・・」
「シルバーアクセサリーが好きなの?」
「銀魔神が?」
「そう」
「そうらしいね」
なぜだか機嫌がよさそうなケビンは、鼻歌をくちずさみはじめた。