この世界の価値は本当は
閲覧注意。少し残酷な描写があります。
知っているだろうか
昔娘がいた
大地の恵みの約束のため生まれてきた
日照りの日
嵐の日
娘の体は悲鳴を上げていた
弱い弱い娘の体は
地上の暮らしに耐えられず
大地の恵みを下ろせなかった
そこは辛く苦しい島だった
それでも
神は人のため約束の娘を与え続けた
数百年ののち、人が神を忘れた頃
それでも娘は生まれ続けた
娘は辛いと泣きながら
娘は苦しいと泣きながら
それでも約束を果たし続けた
生きて生きて生きて
娘は小さな幸せを喜びながら生きて
そして死んだ
約束など誰も知らない島で
愛など知らない人の間で
娘は生まれて生きて、そして死んだ
約束を守り、人を想い、幸せだと小さく笑ってそして死んだ
大地の恵みの約束は
娘を知る者に引き継がれた
娘のささやかな幸せを知る者に
娘の苦労を知る者に
娘の理解されない愛と誠を知る者に
その心は
怒りと復讐に満ちていた
ずっと世界はこんなふうだったと
ずっと世界はこんなものだったと
その瞳には狂気があって
冷たく世界と人とを眺めていた
世界とは。
世界の本当の価値とは。
人の存在の本当の価値とは。
昔娘がいた
大地の恵みを約束するために生まれてきた
そのためだけに生まれてきた
優しく忍耐強い娘だった
時代が変わり今、そんな娘は存在しない
冷たく笑う、心の狂った娘がいるだけだ
これまでの全ての娘の復讐のために生まれた狂った娘
娘は今日も歌っている
全ての闇を呪うため
全ての邪悪を呪うため
楽しく楽しく歌っている