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第7話 これからの予定と……なんで私、抱っこされてるの?

「クライヴ。あの二人をどうするつもりなの?」

 目の前の光景に、私は半ば呆然として訊いた。

「わたくしに、召使をどうこうする権限はありませんが、良くて解雇でしょうね。幸いこの西の建物には、外部に隠しておくような秘密も無いですし。王宮内の者でしたら、生涯幽閉か……悪くすれば……」

「ちょっと悪口を言っただけで? どんなお屋敷の召使でも主人筋の事を色々噂したり、まして悪口を言うなんて、良くないと思ったけど……」

 私が言った言葉に少し満足そうにクライヴは笑う。

「よくおわかりじゃないですか。小さい事を見逃していると、いずれは大きな事になってしまいます。秘密が国外に漏れないとも限りません。国を治めると言うのは、綺麗ごとじゃ勤まらないのですよ」

 それはそうだろうけど。私の国では皆信頼し合って暮らしていた。だから、そんな考えは少し寂しい気がする。


「それより、セシリア様はこんなところで何をなさっていたのです? 探したのですよ。西の建物だったから良かったものを。行方不明になられるなんて、セシリア様は自分の侍女も処罰の対象にしたいのですか?」

 厳しい顔でクライヴは私に訊いてきた。もし私がいなくなってしまったら、彼女たちも……。

「悪かったわ」

「とりあえず、お部屋の方に戻りましょう。明日の予定をお話しします」

 クライヴは、ため息交じりにそう言って私を自室に促し歩き出す。

 私は、何か割り切れないと思いながらも、付いていくしかなかった。



 クライヴに連れられてお部屋に戻ると、アンとセルマが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。

「セシリア様っ。ご無事でよろしゅうございました。よもや、お城の中にいかれたのかと……」

 アンが心底安心したように言う。

「ごめんなさいね。心配かけてしまって。少し建物内を探検していたの」

「探検なら、私どもと一緒になさればよろしいのに……」

「そうね、次からはそうさせて貰うわ」

 独りになりたかったからと言う言葉は引っ込めた。

 ここは、小国では無い。

 独りの時間が欲しいなんて、ワガママな願いなのだから。

 そう思って、私は曖昧に笑い返した。


「さぁさぁ、お前たちは少し席をはずしなさい。セシリア様に明日の予定を説明するのですから」

 クライブが二人に部屋を出て行くように促した。

「かしこまりました」

 しずしずと彼女たちが出て行くと

「セシリア様。どうぞお掛けになって下さいませ」

 私はクライヴに言われたとおりに、テーブルの横の椅子に座る。

「さて、明日のご予定ですが、よろしいでしょうか」

「ええ」

 クライブは、何か手帳のようなものをめくりながら、予定を読み上げようとした。



 その時、遠くから大股で歩く男性の足音とざわざわとした感じが伝わってくる。

「お待ち下さいませ」と焦って言う女性の声も聞こえている。

 クライヴが動かないので、不思議に思って見上げると、右手でこめかみあたりを押さえてた。

 そのうち大きな音を立てて、乱暴にドアが開いたかと思うと、大股で入ってきた男性にひょいっと、抱えあげられていた。



「きゃ~~~~っ!!」


 なになになに? なんで、私は抱っこされているの?

 抱えあげられると言っても、お姫様だっこでは無く。

 父親が小さな子供にするような抱っこで。

 傍から見ても見ようによっては、微笑ましいかもしれないって……そんな事じゃなくって……。


「大きくなったなぁ」

「ふへぇ?」

 私はそのセリフに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

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