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第53話 ギャバン陸軍大臣への依頼

 あちらに正規軍が護衛でいたから、商人が雇った傭兵が大臣に助けを求めてきたのね。

 きちんと訓練された正規軍に傭兵は勝てない事が多いから。

 それにしても、何かおかしい。

 これ見よがしに正規軍に護衛をさせて、まるで何かを疑って下さいと言わんばかりの……。


「このままでは軍の方針が立ちません。追い払うだけで良いのか、取り押さえるのか、はたまた殲滅するのか……」

 私が考え込んでいる間に、ギャバン陸軍大臣が言ってくる。

 あちらに正規軍がついている理由などどうでも良いのだろう。軍の仕事は目の前の敵を処理する事だ。

 だけど、商人相手に殲滅って……。


 私はフレデリックの方を見る。

 だけど、『どうぞ、お好きなように』とばかりに肩をすくめられただけだった。

 自分で判断しろという事なのね。

「ギャバン陸軍大臣。アダモフ公国の商人達と正規軍を無傷で捕縛することは可能ですか?」

「無傷で……ですか? お優しい事ですな」

 バカにしたように笑われた。優しいも何も、状況が分からなすぎるから連れてきてもらいたいだけなのだけど。


「勘違いしないで欲しいわ。交渉に使うのに傷があまり付いていない方が良いと思ったのよ。だって、本来ならどちらも正規軍がでるはずの事では無いことだし。それを死人でも出してごらんなさい。外聞が悪いわ」

 私はなんでもない事の様に受け流した後に言う。

「まぁね。出来ないのであれば、仕方が無いけど?」

 ちょっとだけ大臣を(あお)った。


「我が軍の実力。とくとお見せいたしましょう」

 ギャバン陸軍大臣はそう言って、ニヤッと笑って見せ。退出していった。


 私はホッと一息つく。フレデリックが横にいてくれるとはいえ、現場で叩きあげたみたいな指揮官はやっぱり怖い。

「我が姫もなかなかに怖いな」

 私の心情を知ってか知らずか、フレデリックがのんきに言っている。

 そうそう、ギャバン陸軍大臣はちゃんと仕事をしてくれるだろうから、こちらとしても資料をそろえておかないと……。


「フレデリック。あの……調べて欲しいことがあるのですが」

「おまけに人使いが荒い」

 気を悪くするどころか含み笑いをしているし……。

 

 だって仕方が無いでしょう? 私が単独で使える駒は一つも持っていないのだから。

 わかってるわよ。王様使っちゃいけないことくらい。っていうか、軽く不敬罪適応できそうなのだけれども。

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