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第50話 フレデリックの想いとセシリアの告白

「セシリア。もうそういうのは、やめにしないか?」

 フレデリックも私が座っている場所のすぐそばの椅子に腰を掛けながら言った。

「そういうの?」

 ついそのまま聞き返す。

「先ほど言っていたではないか、王族の婚姻について……。確かに王族の婚姻などそんなものかもしれんが……だが……」

 フレデリックは、その先を言いかけて何か引っかかったように言葉を止めた。

「フレデリック?」

「ああ。いや……そなたは好きでここに来たのでは無かったのだな。大国からの申し出を断れずここに来たのであろう? 大泣きしたと言っておったしな」

「それは……そうですが」

 フレデリックは、何か痛いような顔をしている。私は少し戸惑っていた。


「だけど、ピクトリアン王国からセシリアは戻って来た。俺の傍にいても良いと思ったからではないのか?」

 まっすぐ私を見て、フレデリックは訊いてくる。

 ピクトリアンの国王とどういう話をしたのだろう? 私はソーマ・ピクトリアン国王に訊いても答えが得られなかったことを訊いてみる。自分で考えろと言われたのだけど。


「その質問に答える前に、ソーマ・ピクトリアン国王とは、どういうお話をされたのですか?」

「そのままだ。そなたが、ほんの少しでもこの国が嫌だと感じていたら、そのままピクトリアン王国に留めてくれと頼んだ。ピクトリアン王国なら、我が国とて手出しは出来ぬ」

「あの……どうして?」

 辛そうに言っているフレデリックに、私は本当に戸惑っていた。


「言わなかったか? そなたの事を愛しく思っていると。たとえ信じてくれなくとも、そなたがまだ同じ想いを持てなくとも、それでも俺は」

 何で? せっかく涙が止まっていたのに……。

「泣くほど嫌なら……もう触れないから。婚礼の儀は執り行わねばならないが、それ以降はこの王宮で自由に」

「違う」

 私は泣きながらフレデリックにしがみ付いた。

「違うの。夢だと思っていたの。フレデリックの優しさも、幸せな婚姻も……。全部、フレデリックが見せてくれる夢だと思ってた。だって、そうでしょう? 国同士が敵対したら、わたくしを敵国の人間として処刑しないといけなくなるでしょう? わたくしの事を好きでいてくれていても、そう言う立場でしょう?」


「ああ。なんだ、そんな心配をしていたのか」

 よしよしと背中を撫でてくれる。

「まぁ、国王だからな。確かにそういう立場ではあるのだが。そうならぬ様に、最初から表の政治舞台に出しているではないか」

 最初から? 表の政治舞台に? 始めは書類運びをしていただけだ……けど。

 フレデリックのお膝にいた事は、無かったことにして欲しい。


「オービニエ外務大臣からも、少しずつ外交ルートを奪えているし。なかなかに優秀だぞ。セシリアも」

「まだまだ先は長い気がしますが」

「まぁ、それはそうだろう。だがな、外交ルートを握っている王妃を、たとえ国家間で何かあっても処刑は出来んぞ。臣下たちもそんな進言はしてくるまい。国の信用問題になるからな」

 私が夢だと思っている内に、そんな現実的に話が進んでいるなんて。


「そなたはまだ夢の中だと思ってくれていても良いが……、いささか悲観的過ぎるな」

 フレデリックは、私の背中を撫でていた手を止めた。

 そして少し真剣な顔で訊いてくる。

「それで、セシリア。俺はセシリアを諦めなくて良いのだろうか?」

 お顔が近い。そんな顔で聞かれたら焦ってしまって……。

「わ……わたくしは、愛しいとか、まだよく分かりませんが……その、フレデリックと一緒にいると、なんだか気持ち良いというか……落ち着くというか」

 な……何を言っているのだろう? 私は。自分の顔が熱い。

 よく分からないよ。自分の気持ちなんて。

 なんだか、背中にまわされた手がピクッと動いた気がした。


「それ……は、反則なんじゃないのか? セシリア」

 フレデリックが低く掠れたような声で言ってきた。

 は……反則って? 

 反則って何? と思っているうちに、なかばしがみついている私の顔を上に向けさせて、触れるだけのキスを何度もしてきた。

 なんだか気持ち良くてボーっとして、されるがままになっていたら、深く口づけられ舌を絡められて何も分からなくなってしまう。

 気が付いたら、フレデリックが力の入らなくなってしまった私を抱き込みながら言ってくる。

「……もどかしいな。事件が終わるまでは、何もできない」

 

 私が立てなくなっているのを察したのか、ベッドまでは連れて行ってくれたのだけれど、いつものように添い寝せず、部屋を出て行ってしまった。

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