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ジジ・ラモローゾ  作者: 大橋むつお
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009:『ジージの高校時代』 


ジジ・ラモローゾ:009


『ジージの高校時代』  






 ジャノメエリカは窓辺に置いてある。



 窓辺と言っても外側。


 室内は暖かすぎて良くない。窓辺の外に脚立を立てて、その脚立の上に置いてある。


 外に置いていても姿が見えなきゃね。できたら花が咲く瞬間というのを見てみたいもん。


 直ぐに咲くわけじゃないのに、チラチラ見てばかり。買ってきたあくる日はチラ見ばっかしてしまって、ジージのファイルも開けなかった。




 今日は五分ほどチラ見して、ファイルを開く。五分も観ていたらチラ見とは言わないのかもしれないけど。




 ジージが高校生だった頃の話をしようか。


 ジージは家の近所、公立のA高校に行った。近くにあるというのが一番の理由なんんだけど、他にも動機がある。


 A高校は、通っていた小学校の向かいにあった。


 だから、A高校の様子は生き帰りだけじゃなく、教室の窓からもよく見えたものさ。穏やかで、行儀がよさそうで、生徒も先生も賢そうでね。放課後になると、いろんな部活の様子も見えるんだ。テニス部は、なんだか天皇陛下と美智子さまの軽井沢の恋って感じがして。吹奏楽やコーラス部は、もうそのままコンサートかというほど上手かった。


 そうそう、校舎は全て戦後に建てられた鉄筋コンクリートで、戦前からの木造校舎を使っていた小学校から見ると、とても近代的な感じだ。


 正門を入って右手にはガラス張り二階建ての食堂があってね、脱脂粉乳を飲んでアルマイトのお皿のコッペパンばかりだったジージたちは天国のレストランみたいに見えた。


 決定的だったのは、三年生の時の担任の湯浅先生だ。


 湯浅先生は大学を出たばかりの美人でね、A高校の出身だったんだ。小三だったけど、他のクラスのやつには羨ましがられて、湯浅先生はジージたちのアイドルだった。


 もう、A高校への憧れはマックスになったさ!




 そして、小三の憧れから六年後に晴れてA高校に入学した。


 先生もクラスメートも、みんな賢そうに見えた。


 入学式では、壇上の先生がこう言ったの覚えてる。


「先生たちには授業をする以外にもたくさんの仕事があります。だから職員室に居るとは限りません。教官室や準備室や分掌の部屋にいたりします。他にも教科ごとの学会があったりして……」


 びっくりしたよ、学会だって言うんだもの。


 学会というのは大学の先生が行くものだと思っていた。小学校のころ読んでいた『鉄腕アトム』に天馬博士とかが学会いくとか言う話が載っていたからね。


 そうか、高校の先生と言うのは鉄腕アトムが作れるほど偉いんだと思った。


 ジージは見かけだけは賢そうに見えるもんだから、すぐに学級委員長を仰せつかった。


 担任がこう言うんだ。


「始業のベルが鳴って五分経っても先生が来ない時は、委員長、おまえが呼びに行くんだ」


 大変な仕事を受け持ったと思った。


 さっきも言ったけど、先生たちは小学校、中学校よりもはるかに広い校内のあちこちに散らばっているんだからな。


 最初の国語の授業で、国語のS先生は言った。


「オレ、一時間目は来ないからな、内緒だけど。その時は自習していてくれ、おまえらも自習の方がいいだろ? な、だから委員長、オレが来なくても呼びに来るんじゃないぞ」


 半分冗談かと思ったが、つぎの一時間目の授業、S先生は、ほんとうに来なかった。


 なんとなく噂は聞いていたんだろう、担任が見に来てな。


「委員長、ちょっと」


 廊下に呼び出されて「先生が来ない時は呼びに行かなきゃだめだろう!」っておこられた。


 だから、正直に答えたよ、S先生に言われたことを。


 すると、次の時間、今度はS先生に呼び出されておこられた。


「屯倉、おまえ、ナイショだっていっただろうがあ!」


 まあ、A高校というのは、そういう学校だった。




 そいうって、どうとったらいいんだろ?


 自由? チャランポラン? ジージも呆れているような、面白がっているような……。


 ま、とりあえずファジーだったんだと理解しておく。


 洗濯物の取り込みを手伝って、お昼ご飯と晩ご飯の手伝いをした。明日から月末までお天気は下り坂らしい。無理して外に出ることは無いよね。




 




 


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