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ジジ・ラモローゾ  作者: 大橋むつお
18/37

018:『ペペロンチーノ』


ジジ・ラモローゾ:018


『ペペロンチーノ』  






 コビト19、世間では新型コロナウイルスらしい、テレビじゃそう言ってた。ネットじゃ武漢肺炎、これが一番分かりやすい。世間は何に遠慮してるんだろう。


 安倍総理大臣が「日本中の学校を休みにします」と真面目な顔で記者会見しているのには驚いた。


 だって、日本中だよ、日本中!


 安倍総理にも日本国民のみなさんにも申し訳ないんだけど、気が楽になった。


 だって、日本中の小中高校生がわたしといっしょに休むんだよ。「赤信号 みんなで渡れば怖くない」って、あの感じ。




「ジジ、ペペロンチーノ作ろう」    「ペペロンチーノ」の画像検索結果


 オリーブオイルのボトルを掲げてお祖母ちゃんが入ってきた。


「え、いいの!?」 


「オリーブオイルのいいのが手に入ったから」


「でも……」


「大丈夫よ、東京の家じゃないんだから」


 お母さんは、ご近所に臭うからと言って、ニンニクを使う料理はほとんど作ってくれない。


 お母さんに連れられて二度ほどイタリア料理のお店に連れて行ってもらって、ペペロンチーノが好きになった。お母さんも「美味しいね」って言ってたんだけど、家では作ってくれない「あれは、イタ飯のシェフでないと作れない」と言うんだ。厨房でシェフが作るのを見てると、わたしにも作れるような気がしたんだけど、「握りずしとかチャーハンとかも簡単そうに見えるけど、ジジ出来ないでしょ」とお母さんは言う。


 お母さんの言うことももっともだと思った。


 家で作るチャーハンはお店みたいには作れないし、握りずしに至っては作ろうなんて気も起らない。


「パセリを取りに行くわよ」


「どこに?」


「うちの庭よ」


「え、パセリが生えてんの!?」


 パセリと言うのはスーパーで買うパック入りか小瓶に入った乾燥したやつだと思ってた。


「ほら、これがパセリ」


「え?」


 お祖母ちゃんが指差したのは、葉っぱだけの菊みたい。大振りだし、いかに硬そう。


「これは育ちすぎ、こっち」


 横っちょに小振りで若い緑色のがある。でも、茂り方が猛々しくって『え、オレさまを食おうってのかい!?』と挑戦してるみたい。


 ザックリと刈り取るお祖母ちゃん。パセリが悲鳴を上げたような気がした。


 


「簡単だから、憶えとくといいわよ」




 湧かしたお湯に大匙で二杯も塩を入れた!


「お味噌汁より、ちょっと辛いくらいがいいのよ」


 湧いたお鍋にパスタをぶち込むとタイマーを五分にセット。次に皮を剥いたニンニク二つを意外にに分厚くスライス。もう二つをみじん切り。


「火が点いてないよ」


「すぐ焦げるから、ニンニクは火を点ける前にオリーブオイルをドバドバ入れて、ゆっくりキツネ色になるまで炒める? 茹でる? ソテーかな」 


 たっぷりのオリーブオイル(30CCほどらしい)に泳がせて、鷹の爪もぶち込んで、その時を待つ。


 きつね色になったところでみじん切りのニンニクも加え、パスタの煮汁を油の倍ほどの量を入れる。


 ジュバジュバジュバ!


「しばらくかき混ぜて」


「うん」


 おたまの小さいのでグルグルグルグル。


「煮汁を入れると、百度を超えないから、ニンニクも鷹の爪も焦げなくなるのよ。そう……そうやってグルグルしてると白濁してくるでしょ。これがペペロンチーネのソースになるのよ」


 ペペロンチーノって、パスタのニンニク焼きそばだと思ってたよ、なるほどねえ。


「さ、あとは弱火にして……パスタを投入して、ソースを絡める。お皿に煮汁を入れて温めて」


「う、うん」


「冷たいお皿に入れたら、パスタは直ぐに冷めちゃうからね。おっと、仕上げだ!」


 パセリのみじん切りをドバっと投入して、トングであえるようにしている。


 ホワ~~~~~


 パセリの新鮮な香りが満ちる。お店で食べた時よりも猛々しい香り、ちょっと野性的!




「さあ、ボリボリ食べるわよ~!」




 お祖母ちゃんとボリボリパスタを食べる。


「こんなシーンのアニメあったよね?」


「あ、これでしょ」


 瞬間手を停めてリモコンを操作すると『紅の豚』でピッコロ社のシーン、女ばかりの工場、みんなでパスタを食べるシーンが出てくる。


 美味しくいただいて、お祖母ちゃんと後片付け。


 すると、換気のために開けた窓から、新たなニンニクの香りがしてくるではないか!


「あ、小林さんも真似してる」


 ちょっと嬉しくなった三月最初の日曜日……って、あと二日でひな祭りだ!


 


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