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ジジ・ラモローゾ  作者: 大橋むつお
14/37

014:『一人でパン屋さんに行く』


ジジ・ラモローゾ:014


『一人でパン屋さんに行く』  






 起きてすぐパソコンを立ち上げると入試のニュースが出ていた。




 六時前だから昨日のニュース。


 雪がチラホラ降るなかを、いろんな制服姿の中坊たちが校門をくぐっていくとこ。


 高校やら中学やら塾の先生たちが白い息を吐きながら、バインダーとかタブレットとか持って、受験生に注意したり元気づけたり。受験生も、コクコク頷くやつや、サムズアップする子やら、白い歯を見せて余裕の子やら。むろん。大方の子は俯き加減に受験会場へ向かう。


 明るくアグレッシブな子は目立つ。てか、どこかで目障りに思ってる自分がいる。


 去年の自分は俯き加減の方だった。


 でもさ、俯いていても、ちゃんと受験はしたよ。


 いま思うと、すごいエネルギーだよ。朝早いし、電車は満員だし、駅に着いたら自分と同じ受験生が一杯で、みんな賢そうだし。そういうのに負けないで受験するってさ、やっぱりすごいエネルギー。


 そういうのを思い出して、ちょっと辛い。


 そもそも、起きてすぐパソコンというのはね、夕べ床に就いて考えたことなんだ。


 天気予報をチェックしてね、晴れていたらパン屋さんに行こうと思ったわけですよ。


 ここへ来て、パン屋さんには二回行ったけど、二回ともお祖母ちゃんと一緒。お祖母ちゃんがパン屋さんやご近所さんと話してるうちに、気に入ったパンをトレーにのっけて、レジへ持ってく。


「いらっしゃいませー、お会計させていただきます……○○円のお買い上げでございます」


 そんで、お金払ってお終い。


 お祖母ちゃんは話が長いんで、ゆっくりパンを選べるんだけど、わたしは会話とかは無理。


 でも、それでいいと思ってるわけじゃない。一度自分で行って、お祖母ちゃんほどじゃないけど、少しお話とかできたらいいと思ったわけ。


 だからね、お天気次第って条件付けながらも、前向きにしてるわけ。それで、入試のニュース見て凹んでちゃ世話ないんだけどね。




「お祖母ちゃん、パン屋さん行ってくる」




 もう起きだして花の世話をしてるお祖母ちゃんに声をかけて出かける。


 お隣りの小林さんが新聞を取りに出てきたところなので「お早うございます!」と挨拶しておく。


「おはよう、ジジちゃん」


 小林さんは、親し気に「ジジちゃん」を付けて挨拶してくれる。感じのいいおばさんだ。


 


「いらっしゃいませ、お早うございます!」




 自動ドアが開くと。パン屋さんが爽やかに声をかけてくれる。


 でも、小林さんの時のようには返せない。


 自分でも、したかしてないか分からないくらいに頷いてトレーとハエトリソウみたいなパンばさみを持って焼き立てパンの間を遊泳する。


 たくさんの種類のパン。


 アンパンに代表される日本式パン、クロワッサンが代表のフランス式、コックさんの帽子のシルエットしたイギリス式パン。他にも台湾ドーナツというのもある。


 中には、名前見ただけでは分からないのもあって、そういうのは「これ、どんなパンなんですか?」とか聞けばコミニケーションになるんだけど、やっぱり声には出せない。


 お店には五六人のお客さんがいて、マスターやら店員さんとかとお話してる人もいるんだけどね。わたしは、なかなかね……。


 けっきょくレジに並んでお勘定してもらって「ありがとうございましたあ」と言ってもらって、何も返せずに帰ってきた。


 ま、いいよね。小林さんとは挨拶交わせたしね。


 



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