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ジジ・ラモローゾ  作者: 大橋むつお
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001:ソバテイ


ジジ・ラモローゾ:001


『ソバテイ』    





 ソバテイって分かるかなあ?



 お蕎麦の定食じゃないよ。蕎麦亭って蕎麦屋さんでもないし、停留所の側をつづめた言葉でもない。


 側停と書く。


 漢字で書いても分からないかなあ。


 あたしも昨日までは知らない言葉だったから、分からなくても当然なんだけどね。


 校則で禁じられてることをしでかした生徒と一緒に居たために喰らっちゃう停学の事。



 悪い奴の側に居たための停学っちゅうわけよ。



 ほら、大人でもさ、飲酒運転と分かってて車に同乗すると罪になっちゃうじゃん、そゆこと。


 なんの側停か……それは、今は言いたくない。



 停学になるとね、停学課題とかが信じらんないくらい出る。むろんウットシイ。


 もっとウットシイのは、先生が家庭訪問に来ること。


 自分ちに先生が来るなんてイヤに決まってる。まして、自分の部屋に入ってこられて、あーだこーだと説教だとか訓話だとかされると思うとゲロが出る。


 でもって、部屋の中見られるんだよ。別にヤマシイものなんかないけどさ、ゲームとかラノベとかの本とか貼ってるポスターとか見られるのチョーイヤじゃん。ベッド見られるなんてもう我慢できないよ。


 うちの担任、血圧の関係で利尿剤とか飲んでるから、トイレなんか使われたら、もう、家のトイレは使えないよ。




 だから、避難しにきた。




 東京の隣接県だけど、二時間かかるお祖父ちゃんの家。


 先生って、仕事終わってから家庭訪問に来るじゃん。そうすっと、もう帰りのバスが無くなってしまうかもってくらいの田舎。


 あ、お祖父ちゃんちと言っても、お祖母ちゃんしか住んでない。


 お祖父ちゃんは三年前に亡くなったから。


 まあ、お祖母ちゃんも一人暮らしだし、お祖母ちゃん孝行でもある。


 田舎だから東京よりも空気いいし、落ち着いて停学に励める。励めるってのはおかしいけど、適してる? そんな感じ。




「ジージの部屋でいいの?」




 荷物を持ってくれながらお祖母ちゃんが聞く。


「うん、ゴチャゴチャしてんのがいいの」


「掃除はしてるけど、ジージが生きてた時のままだから、あちこち埃とか溜まってるわよ。エアコンの調子も悪いし」


「うん、ついでに掃除とかもしとく。エアコンは、あとで見とく」


「分かってたら電気屋さんに診てもらっとくんだったんだけど。まあ、寒いと思ったら言ってね、いつでも二階の部屋使えるから」


「うん、そのときはね」


「よっこらしょ……」


 ジージの部屋に行くには段差がある。僅かな段差でもお祖母ちゃんはヨッコラショ。


「二階使ったら、お祖母ちゃんも大変でしょ」


「ありがと、ジジが言ってくれると嬉しいわ」


 ちょっと申し訳ない、言い訳の為に口をついたオタメゴカシなんだけどね。



 ガタピシ



 開け方にコツがいる引き戸を開くと八畳のジージの部屋。


 ホーーーーーーーーーーー


 ため息一つついて、


 あたしの側停が始まった。






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