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第弐話 ①

現状の登場人物一覧を、あとがきに付けました。混乱した際にお役に立てばと思います。

「……ずいぶん楽しんでたみたいだね、見てたよ、少年」

「え」


 つい最近見たベンチ。

 近くの公園の、見慣れたベンチ。


「楽しんだお礼は?ほらほら」

「あ、ありがとうございます、お姉さん」


 あの日と同じ『あの』お姉さんが、いた。

 白くてゆったりとしたワンピースが目に痛い。

 そして、肩出しがちょっと、まぶしい。


「すなおすなお、けっこう結構、ほらちょっとこっち来てみ?」

「は、はい」


 すると。


 ばふっ。



 視界が急にゼロになる。

 紅矢にはなにも理解できないまま。

 ただ。

 やわらかい。


「お姉さん、そういう元気な子好きだよう?」


 頭を絞められるような感触、それに加えて同じように、柔らかい。

 どうしていいかわからないまま、紅矢はなすがままにされている。

 むしろ動けないのは、なぜなのかという考えも回らない。


「少年さあ」


 聞こえた上を反射的に見る。


「!!!」


 そこには。

 息も感じるほど近い位置にお姉さんの顔がある。

 じっと見るその目をこちらもまた見返してしまう紅矢。


「手で触って、みたくないかな……これ」


 状況を理解する。

 お姉さんがしっかりと、自分を抱きしめていたこと。

 そして、柔らかかったのはつまり…。

 触ってみたくないと聞かれたのはつまり…。



 …つまり…!




 がばっ!!!!


『おはよう紅矢。昨日は無理をしてしまった』

「……ゆめ……」


 顔面が異様に熱くなっている。

 紅矢は、けっこうな時間そのままうずくまり、言葉を発することもできない時間を過ごした。

 理由はまだ、自分自身にはわかっていない。




 学校では普通に過ごせている。

 みんないつものままだし、ちょっと知らないクラスの子にも声をかけられることは増えたが、大分優しい。

 蓮と明日雄も、あといつものように睨みつけてくる環腕さんも変わらない。

 ただ自分だけ、何をしていても、一つのことが気になり続ける。

 それは、つまるところ、同じように見た何度かの夢の話に帰結していた。


 思い切ってそれを紅矢は、友人二人に話してみた。

 柔らかいものの話だけを除き。


「なるほど、怨念みたいな何かだな」

「あれそんな方向でいくの?」


 明日雄が何か思ってたのと違う、という顔で話の流れに少し疑問符をつける。


「お礼を言わないと進化条件のフラグが立たない、そういう感じのアレだ」

「そうなのかな…」

「だから会って会話する必須条件が頭にたびたび出てくるんだと思う、タゲモンでデータロードで毎度しつこく出るのと同じだ」

「なるほど…」


 二人ともわかって言っているのか、漫才に近い何かが行われているのか、明日雄は掴みかねていた。

 割って入るスキがない。

 だが蓮の畳みかける超理論に、紅矢がすっかり飲まれているのだけは事実。


 結論。


「とにかく、あの謎のお姉さん、探そう、やっぱり」

「そこがズレないのはまあ、仕方ないか」

「じゃあとりあえず、放課後公園いってみっかあ」

「「うむ!」」

 

 そうしてこうして、すぐに放課後。


 今日のバトルはないのか云々注目されたりしたが、そうそう毎日はやれない。

 こうしてみると本当に、雑誌では見るが持っている人の少ないものなのだと実感する。

 重ねて、何の目的でタダでくれる人がいたのかも、謎は深まるというものだ。


「あー、今日は武装の購入分がまだ届いていないから戦いませんわ、でも到着したら今度は見てなさい!」


 蓮相手だと、実になあなあの対応の環腕さん。

 そもそもヘルメスも今日は持参していない模様である。


「それより今日はまだやることがありますの、あなたたちにはわからないことですわね」


 言って、自分の手を何かにやにやしながら触っている環腕凜乃やりすぎた本能。

 地味にちょっと気持ち悪い。

 あえて何も伝えないでおこう、紅矢には。

 蓮の判断は即決であった。


 さて、そしてたどり着いた件の公園であるが。


「ここで待ってるのか?」


 とりあえずそのベンチに座る。

 3人で腰かけ。


「待つのは得策じゃないなわな」


 濡れた。

 梅雨時は屋外のものが濡れていないかチェック必須である。

 周りを見ても、何かありそうな気配はない。


「いくつくらいの人だったのか、てーのはわかったりするのか?紅矢」

「おとなだなあ、くらいしか、わからないな…」


 なぜかちょっと赤くなる。

 傍から見れば重症の何かにみえるが、まあ小学生的にスルー。


「学生証みたいなのが落ちてたら楽だけどな」

「そこまでやられるとむしろ罠な気が」


 などなど無駄にちらちら周囲をうかがうが、特に何も。


「んん?」


 あった。

 ガサガサと派手に草に何かがぶつかった音。

 吠え声も聞こえた。


「野良猫か?」


 だがその声は遠くに逃げていくように聞こえる。

 ならば、近くに聞こえた音は?


 3人は数歩さらに踏み出す。

 そこに見たものは。


「…血?」


 見たものそのものは違った。

 小型のロボ。

 紅蓮多と同じような通信付きコミュニティガジェットのたぐいだ。

 ただし。


「これを使って?そんなん絶対…」


 手にした武器には、確かに血液のようなものがついていた。

 つまり、これで野良の生き物を傷つける遊びを仕掛けている誰かが、いる?

 とても見逃せる事態ではなかった。

 疑問を持つ余地もない悪事。


「見逃せないな、機械相手でも」


 蓮が心底憎らしいと感情をのぞかせた一言を呟く。


「うん」


 紅矢も気持ちを完全に同じにしているのは言葉でなくわかる。

 手には、光る眼で相手を確かにとらえた紅蓮多がいた。

 

ここまでの登場人物


覇天椥 紅矢   はてなき こうや  メインストーリーの主役。小学高学年。素直すぎて心配される系オーラの持ち主

賽南司 蓮    さいなむし れん  紅矢の友人1。クールというより必要以上に曲がったものの見方をする。

多々禮 明日雄  たたれし あすお  紅矢の友人2。 電気とプログラム関連も触れるらしい上位機種人類。ただしデブ。


環腕 凜乃   わかいな りの  紅矢の友人3?欲しいと思ってすぐ高いメカを買ったり、大人を私的に使役できる程度に金持ちらしい。令嬢マニアにはヒットする人材になれるのだろうか。

有留都 蘭   うると らん  ネットとガジェット大好きな高校生。タイトルに付けられる巨乳は小学生比較なので言うほど怪物ではないと思いたい。割と本能で生きており、周りを意図せずかき乱す運命のひと。


紅蓮多 ぐれんた    紅矢の持つ通信機能付きロボ。製品名はクラッシュレッド・マルドゥーク

アッシュ  あっしゅ  蘭の持つ通信機能付きロボ。製品名はアッシュゴールド・マルコシアス

ヘルメス  へるめす  環腕凜乃の持つ通信機能付きロボ。製品名はプリズムカット・ヘルメス


審判役をしていた人   環腕関連の大人。社会人。勢いに乗ると止まらないダメな大人にしか見えない。

警察の人        さいきょうのそんざい

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