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少年は恩人の巨乳お姉さんに会うためミニロボバトルに絶対負けられないのである?  作者: くるま


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第伍話 ②

「まさか狙ってやってきたワケじゃあ、ないよねえ?割と純真ぽい雰囲気してたもんねえ?」


 倉木戸玻璃に指定されたホテルにやってきた紅矢。

 バスルームから上半身を出して語りかけてきた彼女は、当然のように全裸である。

 紅矢は状況判断できる状態でなく、完全に固まってしまったらしい。

 玻璃も出るまで少しだけ気合が必要だった……。

 が、やってしまえばもう、なるようになれと思いきれる。


「じゃ、そこ座っててねん」


 言葉も出ず、紅矢は言われるがまま。


「さぁて、じゃあお話ししようっか」


 バスタオルを巻いただけ。


 完全にこれはすなわち、アレ的なシチュエーションだ。

 ちらりちらりと紅矢も彼女に目を向けるものの、それなりに意識しないわけにはいかない。

 小学生といえ高学年なら異性に対してそれなりに感情が備わるのも致し方なしである。


「さて…」

「……はい…」

「腹を割って話そう、来てもらったわけだし」


 玻璃が紅矢の真横に座り、いいにおいを漂わせながら話を加速させた。

 主導権は確実にとっている。

 その確信がそうさせているのだろう。


「実はね、私、事務所解雇されたんだ」


 あれ。

 重い。

 身の上話がいきなり始まって、しかも異様に重い。

 思ったのとは、ちょっと違った。


「やってた時のマネが心配性で、今はまだ伝手の仕事を何件かもらってるけど、そんなのすぐ尽きるに決まってるから…」

「はあ」


 相槌しか返せないが、割って入ると逆に取り返しのつかない何かが起きそうでもある。

 紅矢は特に、意味の二割も理解していないのだし、それでいいのだ。


「でも、私ね……」


 まっすぐ、紅矢を見る視線を感じた。

 高い目標と大人の決意、そういったものが含まれるようなその…。


「生活のレベル下げられないの!うちの親は金優先でトンズラしたり散々だし、一人で今のホテル住まい続けるのは形振り構えないんだよもう!」


 …ようなものではなかった。

 どうやら、一人暮らしを芸能生活の間ずっと高級ホテルが自室の仕事本位状態で過ごしており。

 それを、これからも続けたいと。


 それはどうなの?

 ヒト的に。


「それとね、知ってる?覇天椥くん」

「…なんでしょう…」

「それなりに有名なのよ、あなた」

「よ、よくない意味っぽい流れでは…」

「いやいや、いい意味よ……あなたのページの隠しで日常の隠し撮りみたいなシチュのが公開してるじゃない?」


 しらないよ?


「私もそこの閲覧経由なんだけど、着替えとかギリ見えないのめっちゃセンスいいと思う、それでさらに盗撮っぽさすごいもの」


 たぶんガチ盗撮ですね。


 ホーさんが校内侵入していますよ、それ。

 主人の命令でかなり堂々と。


「あれに、とても少年的にロボで遊ぶ動画、そこにきて有名なロボ格闘のプレイヤーが動画使って解説動画出したりもしてきて、複数経路から知名度うなぎのぼりよ」

「知りませんでした…」


 どれもこれも。

 特に盗撮、ちょっとあとで問い合わせないといけない。



 一応種明かしをしておくと、これは実は、環腕凜乃の発案である。

 と、いうか、交換条件である。

 動画投稿と運用をしているのは儚樹想であるが、彼女はまともな動画だけで集客は無理と判断。

 凜乃にある種の映像の提供を要請していた。

 凜乃にとって怒り狂うに足りる要請だったが、紅矢のプライベートを個人的に提供することによりそれを回避。

 さらに、例の小学生女子水着プライベート動画を得るに至った。


 そして条件とした紅矢のプライベートは、小学生でもわかる隠しページに投稿。

 凜乃だけが楽しむ至福のページである予定だったのだが……。


 小学生でも見つけられるページ、その他の人間が発見できないはずもなく。

 全国のショタ属性コミュニティにいつの間にか広まるまでに成長を遂げてしまったわけである…。

 誰が一番ひどいのか、これもうわからねぇなという状況。


 それがより人目を惹く要因になろうとは。

 それ以上に、この状況を引き起こしてどうしたものなのか。


「いまのまま変な方向にいかないだけで、きっとあなたは伸びる、超伸びる!私の嗅覚に一番来たんだもの」


 応援をしてくれているのだろうか、そのための呼び出しを?


「だから、そこに私は入りたいの!親密な存在として!!!需要の確定したコンテンツを私のものにして、今のすべてが安定するくらいに!!!!」


 もうこいつダメだろ!

 そう思った存在が部屋にいたのを確認したのが、その時だ。


『聞いていると、何やら矛盾が多いと思えますね』


 紅蓮多が物陰から、少し不快げに口を挟もうと声を上げる。

 今のままなら伸びる、しかしそれを明らかに変える人材を入れたい。

 さらにそれは自分で、引っ掻き回したいと。

 紅蓮多が訴えたいのは、その矛盾に関してである。


 ただし。


『主人同士の会話は、尊重すべきで邪魔は…いけませんわねぇ、マルドゥークさん』

『!…お前は!』


 それなりに切羽詰まった考えの産物、当然玻璃も悩むだけの時間はあり。

 それに協力すると心に誓ったパートナーがいる。


『このアザゼル、決して契約者の邪魔になるものは許しません』

『本気でやろう、そういう宣言と受け取っていいのだな』

『その口、ここでは二度と開かせません』

『会話の雰囲気から、ずいぶんと変わるものだなお前は』

『愛する契約者に全てを捧げる、その気持ちはわからないはずはないでしょうお互いに』

『そうだな』


 目の前の敵が交戦可能信号を出しているのを確認した。

 そちらに向かわせないという、確固たる意志の表れ。

 戦いは無視しない、だが主人も無視することは許されない。

 紅蓮多はもう一つ頭をひねる。

 一人ではどうともならないだろうという確信をもって……。


 と、ベッドから少し離れたところで、また別のことが始まりつつ。


「え、なに紅蓮……」


 気がそれそうになったその時を、まさに玻璃は逃さなかった。


「一緒に楽しく盛り上がれるなら、私はだいたいの交換条件は飲んじゃうわよ……むしろ望んでくれるんならずっと離れられないくらい『イロイロ』してあげられる……!」

「えっ…えっ」


 紅矢の肩をつかみ、かっちりとなだれ込むように押し倒し。

「私から、じゃないけど、芸能の裏としてこういうのはつきものだから覚悟する時はくるって、言われたこともあるし、私はそういうの、迷ったりしないのよ…ねぇ」

「まったくわからないのでここはちょっと…別の……」

「お姉さんをずっと、好きにしたくない?紅矢くん」


 今にも取れそうなバスタオルのみの女性が、襲い掛かってきた。

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