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少年は恩人の巨乳お姉さんに会うためミニロボバトルに絶対負けられないのである?  作者: くるま


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第肆話 ②

「ちゃんと、役目を果たしてくれてうれしいわ、後でまた踏んであげる」


 みんなの視線を一気に集める何者か。


「こんにちわ、おいしそうで健全なスポーツ少年の皆さん?」


 おいしそうとは?

 疑問も残る中、そこには一人の女性がいた。

 中学生程度と思われる身長、そして見られることになぜか、とても満足げなその表情。


「FJ3776の現在謹慎中アイドル!倉木戸玻璃くらきとはりと言えばおなじみの!」


「あぁ、特に知らないっすね」

「知らないっす」

「全く…」

「ちょっとちょっと!?割とニュースになったんだけど!?」


 奥で紅蓮多と一緒に座っている明日雄は知っていた。

 雰囲気が良くなるとは限らない話題なので黙ったままだが。


「説明してあげます!このきれいで強いお姉さんが!」


 誰も求めてないのだが。

 そして語られる、アイドルマニアなら必要かもしれないFJ3776という、無駄に数が多い団体のうんちく。

 設立や現メンバーなどの詳細は省かせていただくが、とにかく無駄で、それは長かった…。


「で、生のヒラメ御殿て番組でスポンサーこき下ろしみたいなこと、私は言った覚えないんだけど言ったってクレームがあって、一時的に干されたわけ。あくまで一時的だから私はまだお給料も出てるし芸能関連の契約あるなのは確かなの。まあまあアイドルよね。復帰の時間や合わせたCMの撮影日程はマネに言われてるけど、今それで暇なわけね、それで目立つことする自体不許可じゃないから別の魅力があるってことをアピールしながら華々しく復帰飾りたいわけ」

「うん、言ってる事かけらも耳に入ってこねえ、長い」


 蓮、いつもながらのばっさり。


「ま、いいわよ、来年にはどんだけモノ知らずだったか吠え面かいて泣くから、サインあげないから」


 あ、思ったよりはメンタル弱い?

 少しだけ涙目で反論する玻璃氏。


「で、今は内緒でVtuberの中の人だったり地方の観光電車ナビ音声だの受けたりもしながら、もうちょっとパワフルなことしたくてネタ漁ってたんだけど…」

(ほんと長いんだよ…本題どこなのよ)

「見つけたのよ、最新玩具ロボバトル王者、実はアイドルで復帰会見場で挑戦者募集宣言!」

「こないだも変なの集まったけど、また変の壁の最大値クリアーしたバカが出やがったよこれ」

「バカとか言うな、バカっていうほうがバカなのよ!!」


 レベルさがってんぞアイドル崩れ。

 みんなが声を合わせて言いたかったが、スポーツマンシップがそれを留まらせた。


「つまり、戦うために来たって話だけでいいんですか?」


 理解できず放心しているのかと思っていたが、紅矢がすべてをまとめてストレートな回答を出した。

 よくちゃんと聞いていたものだ。


「ふふ、そうよ」

「マジでこの時間ずっと使ってそれだけか要件」

「出てきなさい、私の無敵の、グラマラスパール・アザゼル!!」

『よろしくてよ!』


 声がする。

 そして腰の収納ケースから、よっこいしょと部品に気を使いながらのそのそした感じで出て、降りてくるガジェット。

 きらびやかな感じのものを期待した割に、仕草がなんか少し爺くさい。

 しかも、その姿は見事にと表現すべきか、悪魔そのもの。

 自称アイドル、せめてかわいいの選んで!


「シグナル全部オンからの消しあい、それ以外はルール好きにしていいわよ」

「じゃあ、システムオールオンで」


『『設定』』


 アザゼルと紅蓮多が会話を受け取り、バトルの形式をインプット。

 上級生、勇我と戦ったものと同じルールで行われることに。


「ま、待つんだ、罠だ…それは…」


 当の本人、特に飛び込みはせず倒れこんでの進言。

 だが。


「いやわざとやってんだろ、遅いよ…」

「だが言わないと…」

「意味ないタイミング選んで?」

「そう」


 そうって言っちゃった。

 実は負けてほしいのか、紅矢に。


「じゃ、試合!開始!!」


 誰も音頭をとる人間がいないため、明日雄が号令係となりあっさりスタート。

 騒がしくない対戦も多かったが、なぜか久々と感じる。


(アザゼル、いいこと?)

『ばっちり』


 卑怯と言われた戦術の準備は、今回も万端らしい。


『まず一撃!』


 紅蓮多が切り込む。

 ばさり。

 胸元から肩に薙ぐ大きく強い一撃がクリーンヒットした。

 瞬間。


「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「へっ??」


 自称アイドル、玻璃の服がちぎれた。

 ゴス衣装の攻撃を受けた場所、胸元と肩紐がぱさりと広がり落ちる。


「ふ…ふふふふ………ふっふっふっふふふ、手を出してしまったわね覇天椥紅矢くん」

「なにが、どうしたの」

「私の服には、センサー対応の仮止めホックが全身についているのよ…この意味が分かるかしら?」

「い、いえ」

「なんかしてるなら前振りしろよ」


 突っ込む気分もわかる。


「私のアザゼルのダメージ個所にリンクして、私の服が外れるの、ホックがそこの個所同様に外れることによって、ね!」

「それがいったい!?」

「なんて、なんて卑怯な…」


 上級生、あなたには有効だったんだ…これ。


「わ、わかんないかなあ、攻撃すれば私を力任せでひん剥く行為になるってことなのよ!動画になれば皆にそんなことしたことが公開されるのよ!恥よ!エロいことしてたレッテルついて平気なわけ覇天椥君!!」

「…お姉さんは、大丈夫なんです?着るの大変ではないです?」

「恥じらいはないといけない演出なの、それがないと男って割とそっぽむくのよ軽薄なの多いからさ」


 言った時点で身もふたもないことを。

 放送とやらでも、この勢いだったというのが伺える。


「ふふ、お姉さんにいやらしいことしたと全国区になって平気な人などいないわ、ここからどうするのかしらあなたは!」

「………」


 卑劣、といえば確かに卑劣。


「これは、どうするのがいいんだ…」


 蓮が、思ったより深刻に唇をかむ。


「でもな、今日カメラ担当のあのロボ居ないんだけど」

「………え」


 審判してた人がいないので、そういえば静かだと思っていたが。

 みんないなかったのか。

 明日雄の指摘に、何かが崩れた気がする。


「サッカー部のみなさん、この人不審者なので、ご内密か変なことあったときには変質者が勝手にやった証人に」

「「「わかった」」」

「あっれえぇ?」


 あっさり。

 蓮の提案出すスピードも尋常ではなかったが、なんという満場一致の解決か。


「そういうことで、やりますね」

「ちょっとお!!!!!?」


 ブーストが可能になったマルドゥーク。

 戦いに方針がないアザゼル。

 勝負は言葉で表す意味すらなく、圧倒的だった。


「いいいいぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 反撃の意思がなかったのかと思うような鮮やかさで。

 紅蓮多は最短時間の圧倒的勝利を勝ち取った。


 一方。


「あっこれ。まずいこの手動かしたらまずいまずい、これ、どうしようこれ、これ、あっ」


 全身の服の留め金が取れたひどい醜態の女性が一人。

 さすがにちょっと、可哀想に思うものもある。


「お、覚えてなさいよこんな躊躇もなく手あたり次第にあっ!?…これで勝ったと思うなよぉ!!」

「尻隠せ」


 走り去るツインテール風な髪形をした着替え中なのか脱衣中

なのかわからない何か。

 無事に家にたどり着けることを祈るばかりである。


「…今日くらいは真面目に例の害虫駆除の書類の話するか、デブ」

「デブじゃねえから」


 夕暮れに消えていく人影を見ながら、割ときれいに終われそうなそんな空気。

 だが。


「戦いの気配があればいつでも即参上!!!今日の対戦カードは果たして?果たして?どこ!!!?」

「おせえよ。今日はそれがあって丸く収まったけど」


 消えていく人影の反対から、やかましい声がしていた。

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