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少年は恩人の巨乳お姉さんに会うためミニロボバトルに絶対負けられないのである?  作者: くるま


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第参話 ③

 ここに一人の男がいる。


 東京にあこがれ、何某マニア系リサイクルショップ等での転々としたバイト。

 そののち夢破れて実家を継いだ32の男。

 特に生やし続ける気のない無精髭が目印。


 おもちゃショップ徒の店長である。


 何気に玩具類への情熱は消えず、ある日勢いでロボ型ガジェットを購入。

 戦い続ける漫画の主役のような生活にあこがれながら数か月を過ごし、あっさりあきらめた男。


 おもちゃショップ徒の店長である。


 彼の趣味は店番しながらの動画鑑賞。

 あとは付近のバザーなどから購入した破損玩具のレストアと販売である。

 ぼーっと検索しながら動画鑑賞を続けていたある日。

 彼はごくごく近所の動画がおすすめされていることに気付く。

 そしてはじめて、近所に対戦環境があることを知った。

 自分でやってみたい、しかし、彼には対戦経験もセンスへの自信もない。

 結果、彼が思い立ったのは、ならば動画を自分の持ち物でもっと楽しくすればいいということ。

 完璧な策だと、そのとき思った。


 即時、彼は格闘ゲーム大会の開催を日曜に開き、優勝者に貸し出してもいいと張り紙を出した。

 集まったのは、告知から大会まで2日程度だったのでお店に通うか通り道をたまに使う5人ほど。

 なんとも、小さい大会がその日開催され、そして…。


「俺は勝ち残り、こいつの友である最強のバトラーの座を得たのだ」

「……自信がつくような話じゃねえ…どうなってんだ…」

「でも、強いのは強いと思う」

「いやジャンルちげえよ、なんで格闘ゲーム5人勝ったらおもちゃの操作達人になるんだよ」

「きこえているぞ」


 ちょっと二人の内緒話は声が大きかったようで。

 少し恥ずかしそうに上級生が震えているのは気のせいだろうか。


「とにかく!戦ってもらう!そして負けてもらう!」

「それは構わないですが」

「構え!むしろ流して帰っておけ!」

「でも悪い人でもなさそうで…」


 まったく。

 流され放題なのも困ったもんだ。

 蓮が思ったが、考えが決まっているのなら、どんな形でも無理に止めるのも下世話。

 そこは引っ込むべきとしぜんと納得する。


「で、やらないのか」

「やります」


 紅矢が紅蓮多をサイドバックから出す。


「それとな」

「はい?」


 目つきが少し強くなった上級生が付け加えるように話し出す。


「女を叩くやつは嫌いだ」

「…今それなにか?」

「つ、つまり」


 こんどは向こうが歯に少し物が挟まったような詰まり方。


「……かわいい子に戦いをしかけて、泣かせるようなのは前から我慢できない!最強でなくても絶対に勝つ!」

「環腕のこといってる…?」


 紅矢は理解不足のため放心していたが、蓮はなんとなくそれっぽい候補を探る。


「かわいい子だ!」


 たしかに何度もヘルメスとだけ紅矢は戦っていた。

 想編集の公開動画は今のところ、100%ヘルメス紅蓮多戦なのである。

 公開許可を一応、環腕凜乃側に聞くと、それはもう快諾。


 その後なぜか私服が派手になったのは周囲も感じていた。


 たまに撮影担当のホーに何やら注文を付けたりしていたのも見てはいる。

 もしかして、そこで必要以上にポーズ撮らせたりアピールしてたのを見て…。


 …そういう、ことか?


「いやあれあっちが是非と望んでやってるだろ絶対」

「そんなことあるか!」

「いやだって注文通りにするのに、すごい時間こっちも食わされてるぞ」

「相手のせいにしてあんな子をひどい性格破綻者にでも仕立てるのか!」


 微妙な想定のずれが発生している気はしなくもない。

 なんとも最初から、相容れない人なのか。




「で、解説と撮影のホーさん、どうなってるんでしょうね今の状況は」

『思春期が少し早く来た、みたいな甘い香りがしますワ。こうオトメゴコロのセンサーを搭載したような』

「なるほど、わからないものですね年頃の男子」

『それはいいとして、そろそろ出たほうがよろしいと思うのですワ』

「そうですね」


 がらり。


「さああぁぁぁ!!!!なんと今日は初マッチの試合合意!街に突如現れたトリコロール・ゲンブタートルの相手は連戦連勝のクラッシュレッド・マルドゥーク!」

「!?誰!!!」

「あっ連行されたおっさん」

「今日は許可取ってます!!!!むしろ話し通して公式審判の肩書まで提出してます!前科もつかないのでもう安心ですよみなさん!!」

「…自分がたりはいいよ…」

「今日は実況とリポートを私、細部の解説としてホーさんも参加してがっちりタッグの完全実況でお送りします!!」

『みんなのお耳にプラグインですワ』


 うおおおおおおお!

 同じく隠れていたのか、声で集まったのか、いつの間にか観客もいる。


「なお今日の提供は、環腕ホールディングカンパニーほかでお送りします!!!」

「提供あんのかよ!」




「さて今日も盛況の中橋が丘小学校体育館からお送りします今日の試合、見どころはいかがなものですかねホーさん」

『まあワタクシとしてましては公平な立場では正直素のままで判定しにくいですが』

「ほうほう、負けてほしい側がいるとか、そういった視点ですか?」

『言ってしまえばマルドゥークの武装のせは少し卑劣ですワ!見飽きるくらい見たのと個人的な都合で!』

「そんな事情がありつつも、戦力データなどは実に公平なものが出てくるのがホーさんのいいところでありまして」

『あたりまえですワ!データに改変など必要がありませんですワ』


 やかましい審判のお兄さん?が肩口にロボの絵の描いたプレートを貼り付けて喋っている。

 実際はカメラ担当メタトロンが戦闘エリアをぐるぐる回って撮影しているので当然の処置なのだ。

 スピーカーではきちんと解説と実況のペアとなっている。

 そしてどこから持ち込んだのか、壇上プロジェクターで撮影している映像が上映までされている。


 いたれりつくせり。


 提供というのはこういうことか。


『とはいっても、戦力の手の内が見てわかるマルドゥークと初見のゲンブは贔屓を抜いてもルール次第でゲンブ8くらいですワね』

「おおっと、ゲンブタートルのデータをお持ちですかホーさん」

『引き出すなら今ネット接続してもすぐ出せますワ、外野の助力は致しませんが』

「なるほど、有利化するルールがあると」

「ですワ」


 解説側はいくらでもしゃべっていそうな、そんな空気。

 一方。


「ゲンブ?そんな名前は…こいつの名前じゃあ、ない」

『そう』

「甲龍殻!」

『おぉぉぉおおおう!』


 びしっと決めたポーズを合図に、床にゲンブが降り立ち、こちらも力を入れたポーズを決める。

 仲がいいな。

 ちょっと相手から見てもほっこりする。


「いこう紅蓮多」

『まかせておけ紅矢』


 こちらも力が入った合図。


「さあああ、いよいよ殺気を煮詰めた幕が開く!お互いのフィールド配置が完了したぞー!!!」

「ルールは5シグナルはいつもやってるけど…」

「オールオンフルシグナル、10minを提案する」


 初めて聞く。


「じゃあそれで」

「えっ紅矢!?」

「そぉぉぉおおおうれでは!」


 意義ありそうな声を瞬間にかき消す、特大の大人の声。


「フルシグナル!!時間制限式バトゥル!!!10ミィニッツッ!以降は双方合意と準備は完了とみなします!」


 それってさっき言った相手有利方式そのものなのでは!

 悪い予感しかしない空気を感じざるを得ない。


「クラッシュレッド・マルドゥーク!ブァーァァァァァサス!トリコロール・ゲンブターーートル!!!!ファイト!ゴー!!!!」

『行くぞ!!』


 吠えたのは紅蓮多。

 初の時間制限に、先手有利と見たかまず一手をとるべしと駆け込んだのだろうか。

 飛び込んでの一撃。

 当然ゲンブ、甲龍殻は大きな盾で受け、弾く。


『まだまだ!プラズマガン!』


 最初から取り付けてあった剣の武器、それを即座に逆手に持ち替え、角度をねじ込み近接射撃。

 相手の懐からの角度で足を狙い撃つ。


「いったあああああ!迷わず切り込んだマルドゥーク、先制の左足ヒイット!!!これは大きい!!」


 杞憂か。

 相手の絶対有利ルールの押し付けかと思ったが、そうではないようだ。

 蓮は気にしつつ、情報を集め始める。

 調べて伝えられるのは自分しかいないだろう。

 ゲンブの長所、短所のすべてを。


「さてホーさん、ここで一度両者距離をとりましたが、先ほどの有利なルールがこれなのでしょうか?」


 そう、それそれ。


『全く違いますワ、一番は北米主流だったワンショットハートでしたので』

「一か所だけを大当たりにしたものですね、それはまたどうして」

『防御主体、待ちが基本のゲンブは外装にショック吸収層があって近接ではさらに各パーツの飛び出しで胴が奥まる、つまりハートのセンサーがどれより当てにくいのですワ』

「なるほど、体形と姿勢で当てるのに苦労するパーツがあると」

『ですワ、逆に正面表面積的は大きく、特に遠距離にはシグナルを多く設定するだけ不利といわれる傾向があるのにゲンブのマスターは今回フルシグナルを選んだので…』

「実に不可解、謎のルール提案!これは何かあるぞ!!ゲンブタートル!!!」


 対戦の動機が逆上してるのかという意味不明さなので、よほど悪意があるかと思ったがそうではない。

 いや、そうとは言い切れない。

 蓮はやけに不安を覚えていた。


「だがあらゆるものに理由はある、甲龍殻が絶対に勝つ理由もだ」

 相手はダメージを受けたにも関わず余裕の表情。

「あとゲンブとずっと呼ぶのやめろ」

 恰好に一点張りしてるせいか上級生はそこもこだわっていた。 


⑤までいかずに済ませたい。パターン守りたいけど無理かもしれない。

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