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少年は恩人の巨乳お姉さんに会うためミニロボバトルに絶対負けられないのである?  作者: くるま


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第参話 ②

 ここに一人の男がいる。


 東京にあこがれ、何某マニア系リサイクルショップ等での転々としたバイト。

 そののち夢破れて実家を継いだ32の男。

 特に生やし続ける気のない無精髭が目印。


 おもちゃショップ徒の店長である。


 何気に玩具類への情熱は消えず、ある日勢いでロボ型ガジェットを購入。

 戦い続ける漫画の主役のような生活にあこがれながら数か月を過ごし、あっさりあきらめた男。


 おもちゃショップ徒の店長である。


 彼の趣味は店番しながらの動画鑑賞。

 あとは付近のバザーなどから購入した破損玩具のレストアと販売である。

 経験と趣味が合わさり、中古販売が主になっている、そんな現状の店。

 潰れないのはいいが先行きがあるとは言えない。


 ぼーっと検索しながら動画鑑賞を続けていたある日。

 彼はごくごく近所の動画がおすすめされていることに気付く。

 そしてはじめて、近所に対戦環境があることを知った。

 自分でやってみたい、しかし、彼には対戦経験もセンスへの自信もない。

 結果、彼が思い立ったのは、ならば動画を自分の持ち物でもっと楽しくすればいいということ。

 完璧な策だと、そのとき思った。

 即時、彼は格闘ゲーム大会の開催を日曜に開き、優勝者に貸し出してもいいと張り紙を出した。

 集まったのは、告知から大会まで2日程度だったのでお店に通うか通り道をたまに使う5人ほど。

 なんとも、小さい大会がその日開催され、そして…。


「俺は勝ち残り、こいつの友である最強のバトラーの座を得たのだ」

「……自信がつくような話じゃねえ…どうなってんだ…」

「でも、強いのは強いと思う」

「いやジャンルちげえよ、なんで格闘ゲーム5人勝ったらおもちゃの操作達人になるんだよ」

「きこえているぞ」


 ちょっと二人の内緒話は声が大きかったようで。

 少し恥ずかしそうに上級生が震えているのは気のせいだろうか。


「とにかく!戦ってもらう!そして負けてもらう!」

「それは構わないですが」

「構え!むしろ流して帰っておけ!」

「でも悪い人でもなさそうで…」


 まったく。

 流され放題なのも困ったもんだ。

 蓮が思ったが、考えが決まっているのなら、どんな形でも無理に止めるのも下世話。

 そこは引っ込むべきとしぜんと納得する。


「で、やらないのか」

「やります」


 紅矢が紅蓮多をサイドバックから出す。


「それとな」

「はい?」


 目つきが少し強くなった上級生が付け加えるように話し出す。


「女を叩くやつは嫌いだ」

「…今それなにか?」

「つ、つまり」


 こんどは向こうが歯に少し物が挟まったような詰まり方。


「……かわいい子に戦いをしかけて、泣かせるようなのは前から我慢できない!最強でなくても絶対に勝つ!」

「環腕のこといってる…?」


 紅矢は理解不足のため放心していたが、蓮はなんとなくそれっぽい候補を探る。


「かわいい子だ!」


 たしかに何度もヘルメスとだけ紅矢は戦っていた。

 想編集の公開動画は今のところ、100%ヘルメス紅蓮多戦なのである。

 公開許可を一応、環腕凜乃側に聞くと、それはもう快諾。

 その後なぜか私服が派手になったのは周囲も感じていた。

 たまに撮影担当のホーに何やら注文を付けたりしていたのも見てはいる。

 もしかして、そこで必要以上にポーズ撮らせたりアピールしてたのを見て…。


 …そういう、ことか?


「いやあれあっちが是非と望んでやってるだろ絶対」

「そんなことあるか!」

「いやだって注文通りにするのに、すごい時間こっちも食わされてるぞ」

「相手のせいにして、あんな子をひどい性格破綻者にでも仕立てるのか!」


 微妙な想定のずれが発生している気はしなくもない。

 なんとも最初から、相容れない人なのか。



「で、解説と撮影のホーさん、どうなってるんでしょうね今の状況は」


 ちょっと離れた場所。


『思春期が少し早く来た、みたいな甘い香りがしますワ。こうオトメゴコロのセンサーを搭載したような』

「なるほど、わからないものですね年頃の男子」


 ひそひそと謎の会話が独自に続いていた。


『それはいいとして、そろそろ出たほうがよろしいと思うのですワ』

「そうですね」


 がらり。


「さああぁぁぁ!!!!なんと今日は初マッチの試合合意!街に突如現れたトリコロール・ゲンブタートルの相手は連戦連勝のクラッシュレッド・マルドゥーク!」

「!?誰!!!」

「あっ連行されたおっさん」

「今日は許可取ってます!!!!むしろ話し通して公式審判の肩書まで提出してます!前科もつかないのでもう安心ですよみなさん!!」

「…自分語りはいいよ…」


 色々と一気にむしろ冷めていく蓮。


「今日は実況とリポートを私、細部の解説としてホーさんも参加してがっちりタッグの完全実況でお送りします!!」

『みんなのお耳にプラグインですワ』


 うおおおおおおお!

 同じく隠れていたのか、声で集まったのか、いつの間にか観客もいる。


「なお今日の提供は、環腕ホールディングカンパニーほかでお送りします!!!」

「提供あんのかよ!」


 急激に何か仕立てられたのかと思うほど変わる場の設定。

 最初に戦いが起こった、体育館センターサークルの前に二人。


 戦闘、開始。

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