プロローグ
某年6月某日。
ネットで話題になっていた、新型多機能通話機能付き駆動フレンドリーライクガジェット(なげえよ)の当選通知があった。
海外製だが、モニターデータ強制送信を上乗せした既存機を少数破格の安さで売るとニュースがネットに駆け巡ったのが一月ほど前。
先着で行ったそれが2分と持たず終了したため苦情多数、のちに3日ほどの期間で抽選式に変更したところ、なかなかバズるニュースになった模様。
見つけた私も、祭りとばかりに意味もなく申し込んだわけだが。
いざ当たるとどうしたものか。
そういう時あるよね。
とはいえ。
必要ないとも興味がないとも言い切れないものなので購入。
複数購入割引チケットがくばられているのを発見して、ちょっとインチキかと思いつつふたつ。
むしろ単品よりチョー安くなった。
そうして、購入したものも無事届き。
近くの公園に来たわけである。
「うートイレトイレ」
小ネタを挟みつつ、春と夏の中間のつかの間の青空を眺め、開封とセッティングを試みるのだ。
だが、最初に漏れたのは、ちょっとしたため息。
「あー、はずれたわコレ」
思わず口にしてしまう。
開けた一つ目。
……ロボいらんのよ私。
「もいっこもあけちゃえ」
割と種類ランダムだったのは罠と気付くべきだった。
汎用パートナーガジェットと聞いてはいたが、願わくば外装がきらきら光る防水クマノミが欲しかった!
子供受けするロボはサービスなのかもしれないけど女にくれてやるもんじゃないんだよ。
わかろうぜ会社。
ふたつめは、羽つきで動物っぽい四足のなにか。
こんな生物実際いたっけ?
という、本当に、何か。
まあこれならいいか。楽しく眺めるにはまだ。
ということで、バッテリー接続して初期設定開始。
ちょっとしたエラーは付属品取り付けを確認して通過でき、ホバーユニットと近接戦ユニークポップというものを取りつけ。
いや、戦うゲーム用ユニットは私やらないからいらないんだけど。
でも起動後コンフィグでないと弄れないくさいのでつけるものはつける。
そして、同期まち。
……。
……。
……。
あれ?
思いのほか、これが長かった。
ということで。
「おーう少年」
暇に耐えかるた結果、通りがかりの子をここぞとばかりに呼び止める。
「余ったからこれあげるよ、小さい子好きだろそういうの」
「…えっ……その、はい……」
ありがとうとか、もっとヒャッホーと子供って騒ぐと思っていたが、盛り上がらないものである。
想定外、というか失敗したか。
「これ説明書と付属武器ね、まあ使って楽しんで」
なんか間が悪いというか、空気が乗らないので逃げるように立ち去る羽目に。
なんだこれ。
私は悪いことしたのか?
なんともいえない。
家に帰り着くころ、起動準備もやっと終わりガジェットが活動開始。
『名称入力、着信通知を最初に行いますか?』
「ほいほい、ガジェット引継ぎで全部データ移送するよーっと」
今使っている通話ガジェットの出てきた同期ボタンをポチポチ。
これで大体終わったはずである。
新しい玩具堪能生活、これから始まるのかな?
『完了しました、有留都 蘭さま、これよりサポートさせいただくアッシュドゴールド・マルコシアスと申します。名称変更をされますか?』
「アッシュでいいよね」
『よろしいと思います』
こうして、アッシュはほんの何気なく、といった空気のあれで家族となった。
機種変更程度で何の思い入れもない。
そういった関係である。
あった。
もしくは、あるべきだった。のだ………。
そして、
これが思いのほか人の運命を狂わせるらしいことを、その時はまだ気に留めてもいなかったのだ。