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こんにちは避難訓練

避難訓練大事。

先生の話大事。

大人になって気づくこと

たっくさんあった。

 火事が起きた時の【おかしも】って知ってる?


「押さない。

 駆けない。

 喋らない。

 戻らない。


 廊下に出た時から、このことはわすれないように。

 これは大事なことだから必ず守るようにしましょう」


 「「「「「はーい」」」」」

 

 私たちは元気に声を上げた。

 学校で定期的にある避難訓練。

 今日は火事が起きた時を想定して、避難訓練をやる日だそうだ。


 「四時間目の途中で、サイレンが鳴るので、みんな頭に入れておいてね」


 先生は、私たちにそう告げる。


 「帰ってきたらそのまま給食にしましょうね」


 チャイムちょうどに終わらせたい先生はそう告げる。


 四時間目の授業は【学活】。

 来月の小学校最後の修学旅行の班決めらしい。


 班決めだけだから、そのあとに避難訓練まで席替えもするってことを友達から聞いた。


 窓際の席な私は、いつも帰るときに一人なのが目立つ。

 だから今度こそは、廊下側の席を狙いたい。



 きーんこーんかーんこーん

 きーんこーんかーんこーん


 

 鐘のような音が校内に響き渡る。

 三時間目の授業が終わったようだ。

 それと同時に、教室も騒がしくなる。


 「班決まってる?」

 「一緒の班になろー」

 「生きてるっていいなあ」

 「あいつとだけは一緒になりたくないわ」

 「オナホばれた」

 「避難訓練めんどくさいねー」


 いろんな話が教室を埋める。

 窓際中央。

 よく遊ぶ友達も近くの席でなく、サッカーしか能無しのうるさい男子、やたら自己紹介用紙書かせたがる女子が多かったせいで、私はきっちりと孤立していた。

 本を読むような気もしないし、かといって話に入るのも相当難しい状況だった。


 「次はいい席を絶対狙ってやる」


 うぇんうぇん

 うぇんうぇん

 火事です。火事です。火災が発生しました。

 急ぎ避難してください。


 意気込んだその途端に、警報が鳴り始めた。

 先生もいない。

 教室にいた私たちは、机の下に隠れたりアタフタしたりしている。


 「とりあえず、廊下に並ぼう」


 クラスの委員長が指示を出す。


 「先生待たなくていいの?」

 「訓練だしまだいてよくね?」

 「ほかのクラスまだ動いてないからでなくていいよ」


 委員長以外のんきな私たちは、ほかのクラスが移動し始めたら動くことにした。


 サッカー脳の男が黒板に四角形をたくさん書きだす。


「席替えの準備でもして待ってよ」


 うぇんうぇん

 うぇんうぇん

 火事です。火事です。火災が発生しました。

 急ぎ避難してください。


 鳴り響くうるさいサイレンとは裏腹に、ほかのクラスは至って静かだった。 怖いくらいに。


 少し不安になった私は窓の外を見る。

 校庭にはだれもおらず、集まるのを待つ先生すら見当たらない。


 「先生来なくない?」

 「生きてるっていいなあ」

 「確かに遅い気がしてきた」

 「もう並んでいったほうがよくない?」


 あまりに遅い先生を待ちきれなく、ほかのクラスももうどこか行ったんじゃ。 という不安に追い込まれた私たちは、先生が来なくても集合すべき場所に行くことにした。


 「火事の場所何処だっけ」

 「言ってた? そんなの」

 「こんな時にどこ通ってもちょっと怒られるくらいでしょ」

 「早くいこ」


 クラスが慌て始めていた。

 私自身、慌てていて大きな声もだんだん聴くのもいやになってきていた。


 「体育館通って校庭に出よ。 避難場所だいたいそこだった気がするし」


 私たちは、急いで廊下に出る。

 ドアを思いっきり開け、廊下に他のクラスがいない確認しながらそとに出る。


 「ほかのクラスいないんだけど」


 「ちょっと先に職員室いって集合場所聞いてくるわ」

 

 サッカー脳の男子二人が廊下を走ろうと二三歩踏み出した途端。

 ふたりは突然転んだ。

 足を抑えている。

 

 「そういうのいらないんだけど」

 教室の奥から怖そうな女子が言う。


 けれどとても演技には見えないような……。 迫真の演技なんだろうか。


 おもむろに足を抑えた後、

 「熱いぃぃぃぃぃぃい」


 そう叫んだ途端。

 彼らの喉は段々と黒くなってった。


 そうした後、彼らは静かになった。

 そして少したりとも動かなくなっていた。


この物語はフィクションです。

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