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9.魔王の隣の、ドラゴン討伐に向かう

 やあ、俺の名前はジェイル!

 土魔法を極めた結果ゴーレムになってしまった男さ。

 ゴーレムとしての生活っていうのは意外と悪くないものだ。

 まずその辺の岩で食事が済む。

 場合によっては食わなくても生きていられる。

 ただの岩だからね。

 そんな俺が今何をしているかというと――


「えいっ」


 掛け声と共にリンナが剣を振るう。

 レベル1のスライム相手に大健闘を繰り広げている様を俺が近くで録画しているのだ。

 見守る許可は取っているとも。

 しかし、物凄く言いにくい事だが、リンナには冒険者としての才能はない。

 可愛さだけは俺の中で土ストライク――もう土と書いてドなのだ。

 一つ一つの仕草が可愛くて清楚な感じがにじみ出している。

 その上初々しいと来た。もう完璧だよ。

 だが、冒険者としての実力は皆無だ。

 俺も元魔導師であり人間だ。

 その俺から見て、リンナは冒険者としては大成できない。

 だが、それを俺はリンナに伝える気はない。

 なぜならリンナが悲しんでしまうからだ。

 ふっ、俺を装備すれば全て万事解決する事だがな!


「ふう、そろそろ休憩にしますね」

「おう」


 リンナがそう言うと、近くの木陰に腰をかけた。

 相変わらずレベルは3だ。

 人間、やたら滅多にレベルは上がったりしないようだが、リンナは極端に遅い気がする。

 結構な数のスライムと戦っていたと思うが……まあそれも才能なのだろう。

 ちなみに俺のレベルももう何十年も上がっていない。

 レベル300程度の勇者を倒したくらいじゃもう上がらないんだよ、本当。


「ジェイルさんはここに来る前は何をしていたんですか?」

「んー? まあ置物みたいな事かな」

「置物……」


 リンナの想像はきっとガチの置物だろう。

 嘘は言っていない。

 俺は魔王の隣で魔王を回復させたり、やってくる敵を攻撃したりする役目を担っていたのだから。

 破壊されても時間で回復する男、それが俺だ。

 さて、俺の話はどうでもいい事だが、俺はもう一つ気になっている事がある。


「リンナはどうして冒険者を?」

「どうしてって言うと……憧れみたいなものでしょうか」

「憧れとな?」

「はい。わたし、昔は病弱であまり外に出られなかったので……冒険者の話はその頃によく聞いていました」

「ほほう」

「これくらいしか理由はないんですけど……」

「いやいや、十分な理由だと思うよ」


 俺なんてもはや可愛い子の装備になりたいくらいしか理由がないからね。

 とんでもなく不純な理由だが、行動するのに理由などいらない。

 思い立ったら動けばいいのさ。


「よし、それじゃあもう少しだけ続けますっ」

「おう、がんばれ」


 そう言ってリンナは立ち上がる。

 さて、頑張るリンナを録画する続きでもするか。

 そのとき、カーンッと町の方で鐘の音が鳴った。


「……え、また?」

「また?」

「この鐘は危険を知らせる合図なんです。ドラゴンの時も鳴っていました……」

「ほほう」


 町の方で再び、何か危険を発見したという事だろう。


   ***


 町中では再びドラゴンに対する警戒が行われていた。

 俺が轢いた四匹からさらに追加でドラゴンが確認されたという事だ。

 明らかに異常な数のドラゴンがやってきている――この感じは統率されているな。

 ドラゴンの数が不明な以上、ここが狙いかどうかもわからないが、何度もやってくるのならば仕方ない。

 お掃除タイムを開始しなければならないだろう。


「――というわけで、どっちがいく?」


 俺は俺に尋ねた。

 そう、鳥の石像と馬の石像の俺は会話ができる。

 結論から言えば、俺同士の独り言なのだが、まあそれなりに有意義だったりもする。


「どちらが行くかと言えば……俺だろうな」

「だよな」


 馬の俺が答える。

 まあ順当な結論だ。

 馬と鳥ではそれぞれ地味に役割が違う。

 攻撃魔法に特化しているのが馬で、防御や回復に特化しているのが鳥だ。

 何かあったときのために残しておくなら鳥の方が正解である。


「俺同士でジャンケンしても仕方がない。俺が行ってくる」

「おう、頼んだぞ、俺」


 そうして俺は俺が飛び立つのを見送り、俺はドラゴンの討伐へと向かった。

 ここまで俺が大体何でもやっているわけだが、それは仕方ない。

 そもそもこんなところにドラゴンがやってくる方がおかしいのだから。

 俺は空を飛びながら状況を確認する。

 しばらく飛行をしていると、やはりドラゴンの存在は確認できた。


「アナライズは鳥の方しか使えないからな……」


 相手のレベルは分からない。

 分からないが、まあ俺が負ける事はないだろう。

 ……というか、ドラゴンが目指している方向はこっちじゃないな。


「そういえば、ぶつかった時も俺の向かう方向とは逆だったな……」


 大体ぶつかったドラゴンの胸元にヒットしていたので、覚えている。

 ドラゴン達が向かっていたのは、シュナイザーが支配していた地域だ。


「支配地域でも広げようってか?」


 ドラゴンを偵察に飛ばしているのだとしたらそうだろう。

 だが、俺としてはいちいちドラゴンが見かけられるたびにああやって鐘を鳴らされても困る。


「やはり始末しておくか」


 俺の結論はこれだった。

 俺はそのままドラゴン達がやってきた方角の方へと飛んでいく。


「トカゲがいっぱいいるじゃないの……」


 その先の方にあったのは、ドラゴンの大軍が住まう大地だった。

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