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10.あれ、降らす

 ドラゴンの群れ――一見すれば統率されていないようにも見えるが、あいつらは中央にいる何かを守っている。

 そう陣形を取っているのだ。

 実に分かりやすい。

 中央にいるのがドラゴンを束ねる王という事だ。

 俺の力をもってすれば、中央突破をしてその親玉のところまで行くのも簡単な話だ、が。


「面倒くさいな――《メテオレイン》」


 別にトカゲと話す事なんてないのよね。

 ドラゴンってもう存在が常識的じゃないし。

 俺が言うのもなんだけど。

 早い話、ここから始末してしまおうかと思う。

 《メテオ》は一発でクレーターを作り出す威力を持つが、メテオレインはそこまでの威力ではない。

 まあそれでも、一発一発がドラゴンを数十体倒すくらいには威力はあるし、直撃すれば大体討伐できる。


「ギャアアアアア――」


 断末魔がそこら中から聞こえてくる。

 すまない、ドラゴン達。

 恨むなら俺に見つかってしまった自分を恨んでくれ。

 降り注ぐ岩の数々は、飛翔するドラゴン達に直撃していく。

 仮に当たらなくても――地面に衝突した岩は地上で爆散し、その破片が上空にいるドラゴン達に直撃する。

 大型や小型など関係ない。

 全てのドラゴンが等しく俺の魔法によって倒されていく。


「これだけ倒したらレベル上がっちゃうかもしれないな」


 後で確認してみよう。

 そう思いながら、しばらくドラゴン達へ降り注ぐ岩を見ていた。

 時折、魔法を使用している俺の下へと辿り付くドラゴンもいたが、トップスピンで追い返す。

 身体を思い切り回転させると中々の威力の風が発生する。

 ちなみにこれは魔法ではない。

 ひとしきり振り終わらせたところで、俺は状況を確認する。

 すでにその場に、飛翔するドラゴンの姿はない。

 地上へと落下したドラゴン達にも動きはなく、全ての討伐が完了したと言ってもいい。


「おし、帰るか――」

「待てィ!」


 そのまま帰ろうとした俺を引きとめる声がして、俺は振り返る。

 ボロボロになりながらも、メテオレインの中を生き残った黒いドラゴンが一匹だけ存在していた。

 大きさとしては十メートルに満たないほどの大きさだが――なるほど、あれが親玉らしい。


「き、貴様……何者だ。この《竜王》の軍勢をいともたやすく……」

「俺? まあ気にせんといて」

「気にするわ!」


 名乗るの面倒だなぁ。


「名乗るの面倒だなぁ」


 いけない、心の声も出てしまった。


「まあ俺はジェイルっていう魔王の横にいたあれだ」

「ジェイル……? 魔王……? 何が何だかわからんぞ」

「理解できなくてもいいさ。どのみちお前は――」

「兄貴ッ!」


 俺の声を遮るように、少し振りにその男の声が聞こえた。

 俺は振り返ると、そこには焼きそばパンを片手に持ったシュナイザーがやってくるのが見えた。

 いや、まさか本当に買ってくるとは思わなかったよ。


「焼きそばパン買ってきやした!」

「うん、なんかちょっと見ない間に舎弟感増したな」


 しかもなぜここが分かった。

 あれか、俺の飛んでいる姿を見かけたからか。

 次からは見つからないように飛ばないと。


「あざっす! あれ、このトカゲは誰っすか?」

「こいつは今俺が――ん、待てお前……」


 馬の方の俺は正確なレベルを見る事はできない。

 しかし、今目の前にやってきたシュナイザーという元魔王は見れば分かる。

 以前よりも相当成長しているという事に。

 果たして、焼きそばパンを買ってくるまでの間に何があったのか……正直興味はないから聞きもしない。

 けど、ちょうどいい奴を見つけた。


「後はお前に任せた」

「えっ?」

「このドラゴンを倒して、お前がこの地の支配者になれ」

「なん、だと……?」


 シュナイザーなら俺に逆らうような事はしないだろうし、今のこいつなら弱ったこの竜王とかいう奴も倒せるだろう。

 俺はもうリンナのところに帰らなければならない。

 それに、俺がこいつを倒してから移動するとシュナイザーもついてきそうだから嫌だった。


「……わ、分かりました! オレがこのドラゴンをぶっ倒します!」

「おう」

「ふざけるなよ、貴様らッ!」


 元魔王と竜王が対峙する。

 対峙したところを見届けたところで、俺は空へと飛び立つ。

 そんな決戦に興味があるわけではない。

 シュナイザーが勝ったらもうドラゴンがやってくる事はないだろうし、竜王が勝ったらたぶん俺を探してやってくる。

 その時にまた倒せばいいのさ。

 もう大半のドラゴンは始末しているわけだし。


「……あれ、そう言えば何であいつは急にこっちにやってきたんだっけ」


 竜王の目的を聞くのを忘れた。

 ……ま、いっか!


   ***


 魔王が集まる集会――《魔王会》という集まりがある。

 魔王同士でも情報共有をする場として利用される。

 今回の議題になったのは、とある地方に突然現れた石像についてだった。


「その石像についてだが、鳥と馬の形をしていたそうだ」


 その場を仕切るのは眼鏡をかけた魔族の男。

 北の地を支配する魔王だった。

 その対面――多くの魔王達の視線が注がれるのは、ルナールだった。


「……ああ、そいつは私の装備だった奴だな」

「シュナイザーとかいう新参を倒した、その点についてはどうでもいい。私達も存在を知らないような奴だったからね。問題はそれからだ」

「……」

「竜王に続き、その石像は《魔森王》、《海魔王》、さらには復活したばかりの《魔神》まで葬り去ったという記録がある」

「あの馬鹿……」


 ルナールの下を去ってからまだ一月ほど。

 驚異的なペースで支配者クラスの者達を葬り去っていた。

 実際、ジェイルというゴーレムはそれを可能にする力を持っている。

 あらゆる魔王よりも強い力を持ちながらも、可愛い女の子に目がないというどうしようもない弱点を持ったゴーレムだった。


「この始末、どうつける?」

「……私が、ジェイルを止めればいいんだろう」


 ルナールが答える。

 ジェイルがいる場所についてはすでに特定されている。

 魔王達が誰も見向きをしないような低レベルの地――そこにジェイルは根付いていた。

 魔王ルナールが、かつての武器と相対する形を取ると宣言したところで、その場は解散となった。

スピード感という名の加速。

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