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9:面倒臭い二人(武志視点)

 遅くなりました!! いつものことながらすみません!!

 自慢じゃないが、俺、武下武志には多くの友人がいる。そのなかに一人、ただの友人じゃない男が存在する。完結にどんなやつかを表せば悪友、だ。


 悪友こと渡瀬巧。そいつは幼馴染みの女の子のことが大好きな独占欲爆発野郎だ。学校では格好いいだなんだと言われているが男子の間では爽やか毒舌キャラとして通っている。


 そしてその巧が好きな女の子は今、俺の目の前にいる。


 茅野瑠璃菜。とんでもない美人というわけでもなく、とんでもなく可愛いというわけでもない。至って普通な、平凡などこにでもいるような女の子だ。


 いや、少しだけ違うか。からかいがいがあるという点ではこの子の右に並ぶ人はいないだろう。そう思えるほどにこの子は反応が良い。さっきの廊下でのことだって実は結構楽しかったのだ。


 少し耳元で囁いただけなのにびくりと震えて、背中を下からなぞってやれば小さな声で喘ぐ。小動物みたいな反応しやがって。


 まあ、そう思えるってことは俺もかなりこの子に毒されてるな。


「で、ストーカーだなんて面倒なことしてなんか分かったの?」


「まあ、少しだけ」


 近くによるのも嫌だと言っていた瑠璃菜からは考えられない行動だ。進歩したと思う。思わず撫でたくなったけど我慢する。まだ俺は死にたくない。さっきあんなことしたのにな。


 ……俺、殺されないよな?


 それにしてもこの一週間で巧の何がわかったというのか。


「何か分かったの?」


「あの人が、先生や周りの人からの信頼があっててきぱきと仕事をこなすことができるような、応用力や適応能力が高いらしいところ」


 すごいな、知らなかったのか。俺の悪友は、影で王子とか呼ばれてたりするがそれは何も顔だけのことでは無い。その能力の高さや誰かに対する気遣いとかそういったものをすべて含めたからこそだ。

 そこまで興味が無かったとは思わなかった。始めが最底辺な分評価は上がりやすいんじゃないのか?


「あいつの評価は上がった?」


「……別に上がってないし」


「ツンデレが。とっとと話し合え」


「んなっ! 違うから! ツンデレなんかじゃないから!!」


 どう見てもツンデレじゃんか。本当にからかいがいがある。飽きないなこれは。どうやら少しは見直したみたいで安心したよ。


 このまま嫌われ続けるなんていくらあいつでも不憫だからな。少しくらいは手助けしてやらんこともない。


「あああ! もう!! 話せば良いんでしょ!」


 そう言って俺の前から瑠璃菜は姿を消した。行動速いっつの。


 俺もゆっくりと教室を出て、瑠璃菜が逃げていった方向とは逆方向に向かう。何処かに行くわけではなく、宛もなくさ迷っているだけ。


 そして俺は悪友に会った。


「よーっす。なにしてんだ?」


「ああ、武志か。ちょうど良い聞きたいことがあったんだ」


 おいおい、ちょっと待て。なんか目が座ってるぞ?


「えーと、巧くーん? どうしたのかなー? って引っ張るな!」


 腕がちぎれる!! ちょ、止まれー!!


 そして再び空き教室へと。つかなんで俺は地面に正座なんですかね? 巧さんお怒りモード? 残念ながら俺にはそういう趣味はないんだけど。


「おい、ほんとにこれで良いのかよ。全然効果が見られないんだけど!」


 うわ、めっちゃ我慢できないやつだな、分かってたけど。


「まあ落ち着け。ちゃんと効果は出てるから」


 俺が何かしたわけじゃないけど。それでも瑠璃菜が動いてることは事実だからな。告白、とまではいかなくても何かしらの行動を起こすだろ。


「もう少し我慢してろ。ほら、明日が夏休み前最後だろ。だから明日告白するんじゃないのか?」


「そうか、そうだな。早く明日になれば良いのに。待ち遠しい」


 なんかこれで明日なかったら俺ヤバイよな。殺されないよな? 頼む瑠璃菜、明日行動起こしてくれ。どうか俺を助けてください。


「よし、明日についての計画を考えるぞ」


「は?」


 ……。巧の頭の中は大丈夫だろうか。一度検査を受けることを勧める。


「これ以上何をする気だ?」


「瑠璃奈の告白に対する答えとか」


 自分で考えやがれ馬鹿。頭良いのにこういうところは本気で馬鹿だからなこいつは。


「俺もう帰るから」

「は!?」


 後ろから追いかけてくる「待て」という言葉を無視して昇降口へと向かう。すぐ近くだから便利だ。


「おい!」


 さびの生えた古い小さな扉を開けて中から靴を取り出す。扉を閉めると金属特有の音が響いた。


「なんだ、これ……?」

「どうした?」


 巧が自分の靴を取り出そうとしている。なぜ取り出さないのか。その理由はすぐに分かった。


「手紙……」

「手紙なんて腐るほど貰ってるだろ」

「違う。瑠瑠から」


「は?」


 瑠瑠。つまり瑠璃奈から。


「今すぐ屋上に来いって」

「行け、今すぐ」


 鞄を引ったくりながら答えてやった。それにしても本当に行動が早いな! どうしたらこんなすぐに動こうとか思うのか。


「おい武志!」

「さっさと行け! ……女を待たせるんじゃねぇ」


 このモテ男が! 二人揃って面倒臭すぎるんだよ!


 とうとう瑠璃奈が行動を起こしました!! あと一話で完結です!! 舞台は屋上へと切り替わります!!

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