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6:もしも、こうだったら(侑哉視点・櫂人視点)

 かなーり遅れてしまいました~。謝っても謝りきれない。リアルの事情が忙しすぎて……。

 俺の好きな人の名前は茅野瑠璃菜。凄く可愛くて俺にとっては高嶺の花だ。授業では率先して手を挙げるわけでは無いけど周りと上手くペースを合わせたりとか、人が嫌がることを自分からやったりとかの裏方仕事を得意としてる。

 そんな茅野さんには(名前を呼ぶなんて恥ずかしくて出来ない)ストーカーがいる。一つ年上の渡瀬巧先輩だ。俺はついさっき初めてこの人に会った。学内の噂では格好いい人とか優しい人とか言われてるけど、実際は同じクラスの空人とかに聞いていた通りとても横暴な人だった。

 何でそんなことが分かるのかって? そんなの嫌がってる茅野さんを無理矢理連れていこうとしてるんだから誰でもそう思うでしょ?

 なんとか止めさせようとしたけど結局茅野さんは渡瀬先輩と行ってしまった。そして今、駅に向かっている途中なのだけど。


「「…………」」


 隣にいる二人の沈黙が半端なく怖い。恐ろしい。それだけ渡瀬先輩に苦渋を飲まされて来たんだろうな。

 あんなに茅野さんに執着するなんて、嫌な予感しかしないんだけど。

 執着するといえば、空人も櫂人もそうだ。二人は確か茅野さんと幼馴染みだったっけ。

 いいな、羨ましい。幼馴染みだったら始めから俺のことを知っていてもらえるからな。


 ……。


 あの人も、そうなのかな?


 もし、もしものことだけど、茅野さんがあの人のことを好きになったらどうしよう。


 ……嫌、だなぁ。やっぱり俺のそばにいてほしいし、あの人信用できないし。でも、茅野さんが幸せになるのが一番かな。自分の気持ちを押さえてでも茅野さんには幸せになって欲しい。


「ごめん、俺ここで右行くから」

「そうか、じゃあまた明日な」

「また明日ー」


 危ない。このまま通りすぎるところだった。いや、二人についていけば茅野さんの家が分かるか?


 ……ついていけば良かったきがする。


 取り敢えず、茅野さんが明日も元気であることを祈ろうか。


 ◇◇◇◇◇◇


 俺の名前は皆川櫂人。品行方正とは言いがたいが成績優秀で運動神経抜群という仮面を被ってるただの馬鹿だ。いつから仮面を被ってるのかと言われれば幼稚園のころからだったはず。


「櫂人、貴方は皆川の一人として常に正しく在りなさい」


 それが母親の口癖だった。確かにうちは裕福な家庭で父親はIT企業の社長だから、俺は所謂お坊ちゃんと言われる人間であることは理解している。でも通ったのは普通の子が通うような幼稚園だ。


 もちろん俺は浮いた。


 この容姿のせいで男からはいじめられるし女にはすぐそばで騒がれた。でも母親の言うことを真に受けていた当時の俺は正しくなければならなかった。

 それでまあ、居心地が悪かったから鬱病になりかけていたようだ。当時分かったというわけではなくて後々調べたから正しいかは分からないけどここでは鬱病としておく。


 鬱病になりかけていたある日、俺のもとに二人の子供がやって来た。同じ幼稚園の子供らしい。らしいっていうのは顔を見た覚えは無かったけど同じ服を着ていたから。

 近くの公園に逃げ出しててブランコに座っていたとき、真後ろにある茂みから出てきたんだ。とんでもなく驚いたよ。


「つまらなそうな顔してるのね。ほら、遊びましょ?」


 あの頃からお転婆だった瑠璃菜は俺からしたら凄く輝いて見えて、憧れだった。その気持ちが恋に変わるのにはそこまで時間は要らなかった。

 もう一人の、今となりにいる男はその時から瑠璃菜のことを好きだったけど俺がそばにいるのを快く許してくれた。今も昔も良い奴だ。

 三人で遊ぶようになってからは徐々に素の自分が表に出てくるようになって人と接する態度も変わり始めた。


 そんなときだ、あの男に会ったのは。


 空人の兄だと名乗ったそいつは、俺のなかでは今までに会った奴のなかで一番嫌いな奴だった。ところ構わず瑠璃菜に対する所有権を振りかざして、瑠璃菜の気持ちを考えない。そうやって押さえつけても瑠璃菜の心は手に入らないのに。


「上がらないのか?」

 いつの間にか巧の家まで来ていた。もちろん上がらせてもらう。


 空人の部屋でしばらくぼーっとしていた。

 いつの間にか眠っていたようだ。気づいた頃にはあの男が帰ってきていた。「ただいま」なんていう声で目が覚めるとか、屈辱だ。


 そのまま階段を上がる足音がしてこの部屋の扉が開かれた。


「空人、櫂人。俺、瑠瑠に告白したから」


「「は?」」


 まさかそんな言葉が聞こえるとは思わなかった。


 でも瑠璃菜は、了承してないよな? 質問する前に巧が答えた。


「答えは、取り敢えず保留になった」


 保留って……! 瑠璃菜には、断って欲しかった。でも、どうすれば良いのか。


 それだけ言って巧は帰っていった。部屋にはまた、沈黙が訪れた。


 何で瑠璃菜は断らなかったのか。凄く疑問だけど、俺はそれよりも巧が、っていうところが気になる。やり方は壊滅的に下手だけど瑠璃菜を思ってるのは、どうしても伝わって来てしまうから。


 もしかしたら瑠璃菜がいなければ、この人と仲良くなれたんじゃ――。


 いや、瑠璃菜がいなければ俺は巧と会わなかったし、今の俺はここにいなかった。


 だから、これで良いんだ。


 はい、多分そろそろ終わります。あと三話四話辺りかなーと個人的には思ってます。番外編は皆さんが欲しいなって言ってくれたらそのうち更新しますよ~

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