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僕/オレの日常/非日常  作者: 烏峰 鴉
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日常/非日常ー招待状ー

 これから先学業も忙しくなるので、次の投稿からかなり遅くなると思います。

 本当に申し訳ありません。

 それでは、どうぞ。

 楽しんで行ってください。

 僕の名前は雛川ひなかわ はじめ、少し変わった名前だとは思うけど慣れてくれるとありがたい。

 特筆して語ることはない普通の生活を送っている。

 別に通っている学校が傭兵とか救世主を育てているとかでもなければ、僕自身に何か変わったことがあるわけではない。

 いや...一つあるかな。


 「初♪」


 ドカッ、という音が聞こえそうなほどの勢いで僕の前に座った人物が声をかけてきた。


 「陽毬ひまり

 「おう、俺様ちゃんだぞ


 天薙あまなぎ 陽毬。

 日本を代表する四大財閥筆頭、『天薙』家の御令嬢様だ。

 『天薙財閥』はかなり広範囲に手を広げており、日常生活を行う上で、絶対に天薙財閥製のものを所有していると言っても過言ではないと言えば、どこまで凄いかが分かるだろう。

 そんな天薙財閥の御令嬢様とただの一般人が何故こんなに親しげかと問われれば、長い付き合いだからとしか言えない。

 長いくなるから割愛するけど、出会いも全くの偶然だよ。

 

 「ん〜なんか眠そうだな、初」

 「ん、ああ、ごめん」

 「俺様ちゃんと話しているときまで眠そうにしてるんだから、なんか理由があるんだろ〜、理由がなかったら俺様ちゃん怒るぞ〜」


 いつも通りの少し理不尽なものいいに苦笑を浮かべながら、寝不足の原因となったものを取り出し、陽毬に渡す。


 「ん?あ、これって俺様ちゃんの」

 「そうだよ、このマフラー、糸が解けてきてたからね」

 「わぁ、ありがとうな、初♪俺様ちゃん大感謝♪」


 あのマフラーは、今は5月だから...約6ヶ月前の11月初めに、僕が編んで陽毬にプレゼントしたものだ。

 職人が作ったような高価でも綺麗でもない僕が編んだマフラーを、何故か気に入ったらしく、プレゼントした日からずっと肌見放さずに身に着けていた。

 

 「どうだ、俺様ちゃん似合うか?」


 6ヶ月前に遡ろうとした思考を止め、陽毬の全身を視界に収める。

 燃えるような鮮烈な赤色の髪、それを際立たせるようにした薄い赤色のマフラー。

 そしてそれに包まれた陽毬の容姿。綺麗...それ以外の、それ以下の感想なんて持たせない端正で可燐な顔立ち。

 例え僕の作ったような物でも、見目麗しい人が着ればいい物に見えると再認識する。

 そして、目をキラキラと輝かせながらこちらを見る陽毬に率直な感想を告げる。

 

 「似合ってる、とても綺麗だよ」

 「本当か?お世辞じゃないよな」

 「お世辞じゃなくて僕の本心だよ」

 「お〜!俺様ちゃん初めのこと大好き!」


 こちらが恥ずかしくなるようなことを大声で言いながら感極まったように抱き着いてきた陽毬を抱き締め返す。

 

 「僕も大好きだよ」


 無意識に、不思議といい匂いのする髪に手を伸ばす。


 「おほんっ、陽毬様、初様」


 時が、止まった。

 実際に時が止まったわけでは決してないが、僕にはそう感じられた。

 胸部に陽毬が顔を押し付ける圧迫感を感じながら、長年油の挿されていないゼンマイのようなぎこちない動きで声のした方へ顔を動かす。

 

 「...かおりさん」 

 「はい」


 メイド服を着た女性がいた。

 ロングスカートタイプの露出が少ない正統派のメイド服を着た女性がいた。

 御崎みざき 香。

 古くから天薙家に使える歴史のある『御崎』家、現当主、御崎みざき 一刀いっとうの三人娘の長女。

 出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいるナイスバディの美人。余り感情を表に出さないクールな人だが、何故かいつも片眼鏡を身に着けているーー実はその片眼鏡は昔に陽毬本人から貰ったものらしいーー。

 

 「初様、お熱くなられるのは構いませんが、時と場合を考えられた方がよろしいかと」


 「いえ、あのっこれはーー」

 「香、俺様ちゃんに用事?」

 

 僕に抱き着いて、顔を押し付けていた陽毬が体重を僕に乗せ、抱き着いた姿勢のまま首だけを動かして香さんを見ていた。

 

 「はい、これを」


 香さんが、メイド服のポケットから1枚の封筒を取り出し陽毬に手渡す様を眺めながら話が逸れたことに胸を撫で下ろす。

 陽毬がお尻を膝の上に乗せながら、ぐるん、と半回転し、今度は背中を預けてきた。

 思わず苦笑しながら香さんを盗み見ると、香さんの口が少しひくついていた。

 後で小言を言われるんだろうなぁ、と思いながら封筒を読み進める陽毬の赤色の髪の毛を梳きながら尋ねる。


 「ねぇ陽毬、何て書いてあるの?」

 「ん〜、そうだなぁ...」


 言葉を選ぶかのように少し思案した後、上手い言葉を見付けたのか、体をもう一度半回転させ、正面から僕に抱き着き、無邪気な笑顔で告げた。

 

 「旅行!」

 「......旅行?」

 「そうだよ!」


 思わずオウム返しに聞き返した言葉に笑顔で頷くと、陽毬はもう一度僕の胸部に顔を押し付けて、「うへへへ、初めと旅行だ」、と本当に嬉しそうに喋る。

 明らかに言葉が少ないけどもう慣れたなぁ、と思いながら、独り言を漏らす、可愛い親友の頭を撫でた。

 

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