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8☆誰かアデルバート殿下はロリコンじゃないと言ってください!

栞を挟んで下さっている方々、ありがとうございます。

書く気力が沸いてきます。

 

 授業開始2日目、つつがなく授業は進み、私は昼食の時間を迎えていた。

 前を歩くのは第一王子のアデルバート殿下。何故かフェリクスも一緒に連行されて、二人でその後ろをついていく。


 アデルバート殿下の足のコンパスが長いせいか、短い脚の私はちょこまかとついて行くしかない。

 そんな私をフェリクスは気遣わしく見てくる。


 ……アデルバート殿下よ、幼女の歩幅ぐらい考えてくれ。小学校高学年ぐらいのフェリクスの方が気遣いが出来てるぞ。それとも、王子様業は他人への気配りゼロのものなのか!?


 少し不満には思ったが、顔には出さずテクテクと歩く。


 一限目の古典の授業は何度見ても、やはりドイツ語であった。前世、大学の一般教養でドイツ語選択をしていたから初回授業は問題なかったが、なにせ4年(前世3年+今世1年)ぶりのドイツ語だったため、忘れていることが多すぎた。


 授業を担当していたおじいちゃん先生は分かりやすい説明をしてくれるから、授業にはもんだいなくついていけそうだったが、先生が度々咳き込んでいることは気になった。


 ……高校とか、大学には一人はいそうな棺桶に足をほぼつっこんでます系の雰囲気がするんだよね。


 私が在学中は生きてる事を切に願っておこう。


 二時間目はマナー教室があったが、もちろん前世一般庶民の私にはさっぱりだった。


 中世ヨーロッパの淑女の行うカーテシーと同じなのだが、知識としては知っていても実践できるかは別の話で、加えて幼女の身体では中々ポーズを保っていることが辛くて産まれたての子鹿のように震えていた。

 生れながら貴族のご令嬢の集まる中やるのは、正直堪えた。


 みんな、プロだもんね。仕方ない、お手本が沢山いると思おう、と自分を慰めるしかなかった。



 と、まぁ、授業の回想はその辺にして、私がアデルバート殿下について行って到着した場所は昨日のお昼ご飯を食べた部屋。



「マリア、フェリクス、座れ」

「はい」


 私とフェリクスは言われた通りに、目の前のソファーに座らせてもらった。



「まず、二人とも。昨日話した特待生の特権はきちんと受け取ったか?」


「はい」

「私も寮母さんから受け取りました」


「ならいい」



 事務的な確認のために、フェリクスは呼ばれたようだ。

 対して私は絶対にそれ以外のこと———転移魔法関係の事情聴取があるのだ。


 うん、ほんとに何がまずかったのかね。



「マリア、其方が朝登校途中に会った奴には自分からついて行ったのか?」


「いえ、違います。不可抗力です。遅刻しそうになってたところに突如現れたかと思ったら、首根っこ掴まれて、気づいた時に転移してました。一応、抵抗もしました……意味はありませんでしたが」



 私の言葉を聞き、アデルバート殿下は首を垂れて深い溜息をついた。そして再び私に向き直ると「わかった。情報提供、感謝する」と言った。


 どうやら、転移魔法がまずかったのではなく、転移魔法を使う人がブリザードの原因の様だった。


 詳しいことも聞いてみたいけど、下手にクビを突っ込むといらないフラグを呼び出しそうだから、深入りはしないことにした。


 それよりも、転移魔法自体は問題がないなら、話題に出してもいいよね?



「アデルバート殿下は転移魔法を使われるのですか」


「いや、転移魔法は学園に入学する年齢に達しないと教えてもらえないものだから、まだ使えないぞ」


「魔法に年齢が関係あるのですか?」


「ああ、子どものうちは感情の制御が上手く出来ず、ふとした弾みで魔法を使うことがある。その時、転移魔法を使って見知らぬ場所に転移したらこまるであろう。他にもいろいろあるがな」



 私は初めて魔法を使うにあたって年齢の制限があることを知った。


 言われて見れば、学園という機関が存在し、わざわざ16-18歳の貴族の少年少女を集めたことには意味があったのだ。

 貴族なら家庭教師を雇って勉強を教えてもらうことが出来るだろうが、あえて学園に通わせるのなら、魔法に関して学園に行かないと得られない何かがあるのだろう。


 ……あれ、今、「子どものうちは感情の制御が上手く出来ず」とか言わなかったか?


 現在の私、マリア7歳———幼女。



「まさか、転移魔法を教えてもらえない?」



 となると、遅刻寸前に転移魔法でセーフなんてことは無理なのか!


 私は寝坊ライフ計画が崩れたことに、ひどく絶望した。


 まさか、入学するのを9年早めたことの弊害がここに現れるとは!


 私が項垂れていると、アデルバート殿下は「安心しろ」と声をかけてきた。



「特待生は年齢に関わらず、習得することが出来る。特待生は学力は勿論、その魔力の多さを理由に特待生となる。その魔力の制御は義務であり、最大限の力を使えるようになる事が使命だ」



 どうやら私の心の声はダダ漏れであったらしい。

 だが、転移魔法を使えるようになると聞き、私は一安心した。寝坊対策はもちろん、交通網の碌に発達していないこの世界で転移魔法が使えたらものすごく便利に違いない。



「説明して頂きありがとうございます、アデルバート殿下」



 私がお礼を言うと、アデルバート殿下は何故か顔を顰めた。



「アディだ」



 一瞬何を言ってるのかわからなかった。首をかしげてみると、アデルバート殿下は軽くため息をつくと「仕方がない」、とでもいうようにもう一度復唱した。



「名前の呼び方だ———昨日、アディと呼べといったのを忘れたのか」



 私はそのセリフと共に、昨日確かにアディと呼ぶようにと言われたことを思い出したが、もう一つ別の事も思い出した。



『名前の呼び方———アディと呼びなさい』



 ゆっこちゃんに借りてやった【聖女が世界を救う】(セイセカ)のアデルバート殿下ルート、それの一番最初のスチル(ストーリー中に出てくる美しい一枚絵のことだ!)の場面とそっくりだ!

 厳密に言えばセリフも少し違うし、二次元じゃなくて三次元だし、年齢だって9歳若いけど、大きな共通点がある。それは———



 ———色気だ。



 アデルバート殿下ルートのプレイヤーの中での裏名は『(あで)ルート』

 担当キャラはクーデレで、普段はクールに振舞って取っつきづらいキャラなのだが、デレた瞬間の破壊力がヤバい———とゆっこちゃんが悶えていた。

 かく言う私もアデルバート殿下の声を担当した声優さんが好きだったから、スチルのついてる場面は何回かリピートした。おかげでセリフから原作知識を思い出せたのだが……その前に、アデルバート殿下よ———その色気を引っ込めてくれ!


 先ほどまで眉間に寄っていた皺は消え、なんか愛おしそうにこちらに視線を送ってきてる!!!

 しかも先ほどの声は何ですか、あのどエロい声は。しかも、少し声もかすれていて、余計にセクシーな感じだ。



 これ、アデルバート殿下ルートに入っちゃったのかな!?

 というか、幼女のマリア(わたし)相手に何故そんな視線を送ってくるのですか!

 ただ単に、小さい子が可愛いなぐらいのほのぼのしたものですよね!?

 誰かアデルバート殿下はロリコンじゃないと言ってください!


 視線による攻撃にいたたまれなくなり、つい顔を横にそらすと、隣に座っていたフェリクスも顔を真っ赤にしていた。

 アデルバート殿下、あんたは罪な人だよ。早速、幼気ない少年を色気でノックダウンさせてます。


 フェリクスは色気にあてられただけか、それとも恋しちゃった系か……果たしてどちらなのだろうか。

 後者だったら、私は全力で応援するよ。頑張ってBL本の普及をして偏見とかあっても払拭してみせるし。それが無理でも秘密の恋人応援隊を結成してみせる。


 私が拳をぎゅっと握りしめると、アデルバート殿下は不思議そうに私を見つめていた。

 さすがの私も顔を真っ赤にさせて俯くフェリクスが可哀そうになってきて、アデルバート殿下に声をかけた。



「では、アディとお呼びします。早速ですが、アディ一つお願いがあります」


 私は深呼吸をする。


「何だ」


 至って真剣な面持ちで、アデルバート殿下の目を見つめて言った。



「そのダダ漏れの色気をしまってください」


 アデルバート殿下は一瞬硬直すると、右手を顎にあてて言った。



「マリアよ、ダダ漏れの色気とはなんだ?」



 ええっ———!

 まさかの天然でしたか!


 さすがの私もこれに対してどう反応していいかわからず、ぽかんと口を大きく開けて静止してしまった。


 色気ダダ漏れの第一王子に、顔を真っ赤にさせた天才少年、そして口を大きく開けたままのヒロインの私。

 明らかにカオスな空間としか呼べないところに、突然笑い声が響いた。

 音の発信源を確認すると、ガチャリと音を立てて開いた扉の奥にローレンツ様ともう一人、こげ茶の髪の少女が立っていた。



「面白すぎる……三人とも」



 入室と共に、腹を抱えて笑い出すローレンツ様を隣に立つ少女が窘める。



「ロー、笑いすぎですわよ」


「君だって笑っていたじゃないか、ベス」



 彼らは私とフェリクスが座る横に鎮座する二人掛けのソファーに着席した。



「アディは一回今日の執務の内容を頭の中で確認しなおすといいよ」


 ローレンツ様にそういわれると、アデルバート殿下はいつもの硬い表情に戻って真剣に何かを考え始めていた。

 どうやら、ローレンツ様は執務の事を思い出させてアデルバート殿下の色気を収めてくれたらしい。


 フェリクスも安堵の息を吐いているところを見ると、アデルバート殿下の色気から脱したようだ。


 執務のことを考えるアデルバート殿下をよそに、ローレンツ様は私たちに笑顔で爆弾発言をした。




「いやぁ、ごめんね。まさか、アディが暴走するとは思わなくて。実を言うとアディは高位の魅了魔法が使える人間なんだ———たまに、暴発して垂れ流し状態になるけど」



 み、魅了魔法!?

 乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢モノのテンプレ転生ヒロイン様の十八番(おはこ)じゃないですか!




 ちょっと、待って———同じヒロインポジションなら、それ私が発動させるべきものじゃないのかな!?

 

 ……まぁ、そんなめんどくさいフラグは回避するに限るけどね。



でも、何かに負けたような気がするこの気持ちは気のせいだろうか。




更新が滞りました。書く書く詐欺をして、申し訳ございません。


読者様からの提案もあり、更新ペースを落としてみようと思います。


最低週一回更新。一応設定は金曜日に投稿。余力がある時は、週二回更新してみます。



ちなみに今週の投稿が遅れた理由は……電車の中で寝てしまい執筆が出来なかったり、今週からゲームの新イベントが始まってそっちに時間割いたり、お絵かきをしていたからです。

これからもこんな感じで小説更新が遅れる可能性が否定できないですが、お付き合いいただけると嬉しいです。


次回「9☆幼女相手に宣戦布告とか止めてください!」


お楽しみに。

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