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7☆原作知識から導く傾向と対策……なんて大層なものは立てられない!

21時更新に間に合いませんでした……(´・ω・`)

 

 世界規模のフラグを折ることを決意したのはいいが、一体何から始めるべきか。


 一概に言えることではないが、世界崩壊へと導かれる確率は50%


 二分の一の確率を回避するためにも、どんな些細な情報も書き出していこう。


 攻略対象ごとのルートについて書き出してみる事にした……けど、私はリプレイしただけ。大学受験が終わった後に一気にリプレイさせてもらったから、記憶が曖昧だったり、こんがらがったりしてる……ルートごととか最初から無茶だったんだ。



 だから、王立学園に入学してから出会った攻略対象の魔法学教師(フェリクス)第一王子(アデルバート)について書き出そうと思ったけど……眠い。


 現在時刻21時

 幼女の身体は睡眠を欲してるようだ。


 頑張ってペンを動かそうとしても、眠気に負けて首がガクッ、っと落ちる。身体も何だかポカポカして、眠気を加速される。


 ノートにでかでかと『世界崩壊回避!』と書いたものを、ぐるっと丸で囲んでノートを閉じた。



 仕方ない……そろそろ寝るか。


 電気スタンドならぬ魔導ランプを消して私はベッドに潜り込んだ。





 翌朝8時。


「やばっ、遅刻〜‼︎」


 私は制服を超特急で身につけ、鞄を引っ提げ部屋を飛び出す。勿論、教科書の準備は昨日の内に済ませてるから、問題ない。一応、原作シナリオ知識ノートも鞄に突っ込んできた。不在の内に誰かが侵入してきたら嫌だからね。


 ガチャガチャと鍵穴に鍵を突っ込んでま回し、寮の廊下を全力疾走した。


 朝食はパスするしかない!


 寮の出口まで一直線で向かっていると、寮母さんに声をかけられた。



「マリアちゃん、ちょっとお待ち」



 いや、今遅刻しそうなんです。止めないで下さい。

 私はその場足踏みの状態で停止した。



「ほら、お昼ご飯を買えるタグだよ」


 寮母さんは私の首に革紐で通したタグをかけてくれた。


 寮母さん、心の中で邪険に扱ってすいません。お昼ご飯に関して、すっかり忘れてました。



「ありがとうございます」

「お金は帰ってきたら渡すからね。あと、サンドイッチ包んであるから授業の合間に食べなさい」



 寮母さぁ———ん!マジ感謝ですっ!

 私が寝坊する事は予想済みだったのですね。出来たら起こして欲しかったですが……朝ごはんを用意してもらっただけ有難いと思わないと。



「本当にありがとうございます。行ってきます」


 腕時計が示す現在時刻は8時10分。

 始業の時間は8時30分。


 昨日歩いて片道30分だった距離を走って20分でどうにかなるか⁉︎


 教科書の入った幼女には重たい鞄とサンドイッチの入った包みで両手を塞ぎながら、私は学園への道のりを駆け出した。





 現在時刻8時30分。

 遠くで王宮の城壁の上に設置された鐘が遠くで鳴り響く。私はぜーはー、ぜーはーと息を乱して机の上に突っ伏している。



「ま、間に合った」


 何とか教室に滑り込んだ私は、深呼吸をして息を整える。

 実をいうと、本当ならば間に合わなかったはずだったのだ。私が寮を出て暫くしてから腕時計を見た時のことだった。

 学園への道のりの丁度中間地点のあたりで寮を出て十五分経過していることに気が付いた。


 これ、確実に間に合わないよ。あと5分で到着とか無理!

 初日から最年少入学者として注目を集め、二日目にして魔力測定器を爆発させて異端の目を向けられ、三日目は遅刻をして悪目立ちするとでもいうのか。

 もういっそのこと食パンの代わりにサンドイッチを(くわ)えて教室に突入すべきかな!?


 半ば諦めの境地に達しながらも、短い脚を精いっぱい動かし続ける。鞄を持つ手もそろそろ痺れ始め、その疲労のせいか足取りも徐々に重くなっていく。


 遅刻しそうになる恐怖から目に涙が浮かぶのを感じた。

 これもきっと幼女の身体になったせいで、体に感情が引っ張られているにち違いない。


「遅刻確定だよ〜」


 どうにもならない事実に私は嘆いた、その時。


「小さなお嬢ちゃん、遅刻とは感心しませんね」


 突然、音も無く背後から声をかけられた。

 私は肩をビクッと震わせ、ブリキの人形がギッギッと音でも鳴らすかのように背後に振り向く。


 そこには黒いローブを羽織った人が一人立っていた。



「良ければ学園の入り口の近くまで送りましょう」



 フードで顔が隠れて殆ど見えない。辛うじて口元だけが見える。



「えっと、貴方は?」

「通りすがりの魔法使いです」



 その唇から発せられる声は、男性にしては高く、女性にしては低いと感じる中性的なもの。


 これ、ついていっちゃいけないやつじゃないの。絶対に不審者にしかみえない。


 ほら、日本の小学生なら「知らない人にはついていっちゃいけません」って、入学した時にならうじゃん。


 他にも、「お母さん(又はお父さん)が交通事故にあって病院にいるから、おじさんが病院に連れて行くように頼まれたんだ」とか言われてもついていかないとか。


 マリアの外見は乙女ゲームのヒロインだけあって、かなりの美幼女(または美少女)だし、誘拐とかされてもおかしくない。


 ……いらないフラグはきちんと折っていこう。



「見ず知らずの方のお手を煩わせる訳には参りません。では!」


 私はそれからその場から逃走、そのままフェードアウトしようと思ったが———」



「聞き分けのないお嬢ちゃんですね」


 背後からひょい、っとつまみ上げられ、ローブの人に抱え上げられた。



「ちょ、ちょっ!」

「はいはい、転移するから暴れないでね」


 暴れようとジタバタもがく私は、がっちりと腕をホールドされて身動きが取れなくなる。


 そして、次の瞬間私の視界は白の光に覆われた。



 白い光の中に自分はどれだけの間いたのかわからない。一瞬だったかも知れないし、一時間だったのかもしれない。ただ、気がついた時には目の前の景色が王立学園の建物の正面であった。


 私が腑抜けた顔をしていたせいか、ローブの人は私を地面にゆっくり下ろすと「大丈夫かな、お嬢ちゃん?転移酔いした?」と首を傾げて聞いてきた。


「大丈夫です。お世話になりました」

「それなら良かった。ほら、お嬢ちゃんは急がないとせっかく転移したのに遅刻してしまうよ」

「わっ、本当ですね。では、失礼します」



 私はペコリと頭を下げて礼を述べると、そのまま教室に向かって全力で駆け出したのだった。

 だから、私は知らない。去りゆく私の背中を眺めてローブの人が「口止め忘れてた」と呟いたことを。




 一通り、回想が終わった所で私は身体を起こし、背筋を伸ばして着席した。


 遅刻寸前のギリギリで教室に突入した私であったが、担当の先生は私より大遅刻なようで、まだ教室に到着していない。


 クラス内も良家の御子息、御息女の集まりのためか、大きな声を出している人はいないものの、自分の席の近くの人と歓談している。


 かく言う私の隣フェリクスも私に話しかけてきた。



「マリア、大丈夫か?」

「何とか生きてます」

「生きてる……って。遅刻寸前だったけど、朝起きられなかったのか?」

「ええ、そうなのです。22時頃には就寝したのですが」

「マリア、お前はまだ小さいから20時ぐらいには寝た方がいいぞ」


 確かに、そうかもしれない。

 今日起きれなかったから、もうちょっと睡眠時間を長くしよう。


「そうしてみます」

「でも、急いで来たという割にはあまり服が乱れていないようだな」

「あっ、それは途中で親切な方が学園の前まで送ってくださったのですわ」

「どうやって?」


 フェリクスよ、聞いて驚け。



「転移魔法で、ですわ」



 私が少々ドヤ顔で言ってみると、フェリクスはポカンとした顔で私を見ていた。やっぱり、転移魔法とかって夢があるし、憧れだよね。

 今日の放課後にでも、ヘンリー先輩に教わろうかな。そしたら、遅刻なんてしなくて済むし。


 私の発言に驚いて目を丸くしていたフェリクスであったが、何故だか更に目を見開く。

 私が何をそんなに驚いているのか尋ねようとすると、背後に気配を感じた。



「マリアよ、それは本当か?」


 私の背後に、第一王子のアデルバート殿下は今日も大層美しいお姿でブリザードを振りまいて立っておられます。

 あれっ、私なんかやらかしたのかな?



「あの、どのことでしょうか?」

「転移魔法のことだ」

「ええ、本当です」

「そうか、昼休みにじっくりと話そうじゃないか」


 そう言うと、アデルバート殿下ははご自身の席に着席なされた。


 ええっ———!!!

 どこに怒らせる要素があったの!?

 まさか転移魔法って、禁術指定とかなのか。



 私は頭の中でいろいろな可能性を想像してみるが、答えなどでない。お昼になれば全てが分かると、考えることを保留した。

 教室前方の扉が開き、よぼよぼのお爺さんが小さめの台車を引いてやってきた。

 ゆっくりとした動きで教卓に上ると、ゴホッゴホッと咳き込んでから話始めた。



「そんじゃぁ、授業をはじめるかのぉ。わしゃ、ダニエル・バルナという。教科は古典じゃ。これからよろしくのぉ~、ゴホッゴホッ」


 大丈夫か、この爺さん。

 今にもあの世に行ってしまいそうな感じだぞ。



「ああ、そこなちびっこ二人。この用紙の配布を手伝ってくれんかのぉ。これが、半年分のこの授業の教材じゃ」



 そういや、古典の教科書は配布されてなかったけど、教材はプリントだったのね。

 私とフェリクス(平民)を指名したあたり、貴族階級には頼みづらいからなのだろう。


「分かりましたわ」

「分かりました」


 私とフェリクスは椅子から降りると、バルナ先生の持ってきた台車の上の方へ行く。


「こりゃ、紐で一束になっとるので一人分じゃ。列の先頭の人間に渡して後ろに回してもらいんさい」

「「はい」」


 私は5人分ほど抱えてみたが、腕がぷるぷるしてきた。

 幼女には難しいか、でも持ってしまったから、とりあえずこの分だけでも運んじゃおう。

 手を突っ張り、よちよちと歩を進める。

 何とか机に到達すると、私の後ろの席の貴族のご令嬢が私の傍に寄ってきてプリントを受け取ってくれた。



「あ、ありがとうございます」


 貴族のご令嬢でも親切な方はいるようだ。こげ茶の髪のその人は、「重かったわね。手伝ってあげる」と言ってくれた。

 これは美幼女の魅力にほだされてくれたのだろうか。


 私は親切な行為が嬉しくて、頬を緩ませて次の分を取りに行く。

 次は無理ない分を運ぼうとプリントの山に目をやったが……表紙に表記された古典語を見て、驚愕した。



「えっ、なんでドイツ語?」


 驚きのあまり、口からそう漏れ出てしまったのは仕方ないと思う。

 私の周りで他にも教材配布を手伝ってくれている人が動く中、私は立ち止まるのであった。





マリア、不審なローブの人に遭遇。

ローブの人の転移魔法で登校ルートをショートカット。

アデルバート殿下に転移魔法の件でお呼び出し。

異世界の古典語はドイツ語だった!


フラグをどんどん立てていくマリア……折るのはいつになる!?



〈今後の更新予定〉

月・水・金の21時に更新しようかと思ってます。

これで無理が出てきたら、更新ペースを落とすかもしれません。


……通学時間に執筆するのだと、このペースが限界なのです。

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