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NO MORE HERO  作者: 西東上下
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change the world

ヒーロー

それは夢の職業、老若男女の憧れの的である。

知力体力全てにおいて秀でた者にしか手の届かない職業。

学歴や家柄に縛られず町の人々から尊敬の眼差しで見られもちろん給料もいい。

ヒーローとはいっても職業の一つだ、簡単に言えばヒーローを集めたプロダクションがあり、そこからの指令でヴィランを退治したり町の人々の手助けをしたりとなんでもやる。

ヒーローになった暁にプロダクションのタクド博士から特殊能力を一つ貰える。

まぁこのタクド博士ってやつはガリガリで長い髪を後ろで縛っていつも白衣を着てるやつなんだけど薄気味悪くて俺は苦手だ、しかも能力は完全にランダムらしくてしょうもない能力を貰った奴から逆恨みされてるって話だ。

あくまで噂だが「唾液が酒になる能力」だとか「肋骨が一本増える能力」とかあるらしい、そんな能力を引き当てたやつには同情を通り越してお悔やみ申し上げたくなる。

なんてこと言ってるうちに出勤の時間になった、玄関まで行くとアルコが見送りに来てくれた。

「ネクタイもばっちしね」

真っ赤なスーツに黒のシャツそして赤いネクタイ、アルコがヒーローっていえば赤でしょと俺にプレゼントしてくれたものだ、この派手な格好のおかげで町のみんなに覚えられやすいのはいいが動きにくいのがな。

「それじゃあいってくるよ」

俺は人差し指でアルコの前髪を流しキスをする、毎朝の儀式を終え出勤する。

町を歩いているといろんな人からお礼を言われる、警察官や消防士でもここまで言われることはないだろう。

「ヒーローのお兄さん、私大きくなったらヒーローになる」

道行く子供に挨拶がてら夢を語られる、くせっ毛女の子だったが将来仲間になることを楽しみにしておこう。


ようやく基地についた、基地と言ってもビルなので会社と言ったほうがわかりやすいかもしれないな、この町はあまり高い建物がないだけに17階建てのビルは威圧感が半端じゃない、しかし住民たちには高いところから見守ってくれている安心感があるらしい。

「遅刻だぞモリター」

エントランスに真っ白なスリーピーススーツに眼鏡をかけた男が立っていた。

「遅刻って、まだ10分前じゃないか」

「ヒーローたるもの15分前には集合するべきだといつも言っているだろう」

絵に描いたような委員長キャラのこいつはイラバ、頭もよければ強さも兼ね備えているが口うるさくプライドが高いのが難点だ。

年齢やキャリア関係なしに自分の意見を主張しその上結果を残す、おまけにイケメンだ、妬まれる要素は飽和状態である。

イラバと二人でエレベーターに乗り10階のボタンを押す。

「今日はどんな仕事があるんだろうな」

「僕たちの仕事があるというのは困っている人がいるということだ、できればなにも仕事がないほうがいいな」

いちいち堅いなこいつは、頭の中にあずきバーでも入ってるのか?と思う。

エレベーターを降りるとキャップが深刻な顔で出迎えてくれた。

「ちょうどいいとこにきたイラバ、モリター、今エリア22の一軒家で立てこもり犯がでた、至急現場に行ってくれ」

「一軒家で立てこもりですか、相手の要求はなんなんでしょう」

イラバが質問する、それにしてもキャップは60超えのおっさんとは思えないな、体は太く逞しいし雄々しく生えた髭がより威圧感を醸し出す、さすがは初代ヒーローなだけはあるな。

「犯人の要求はヒーローをだせ、とのことだ。もしかしたら相手はヴィランかもしれん、二人とも気をつけてくれ」

俺とイラバは急いで現場に向かう、相手がヴィランだとしたらそれは相手も特殊能力を持っているということだ、そしてヒーローを誘い出すとはよほど自信か策があるに違いない。


二階建ての一軒家、犯人は人質をとり立てこもっているらしい、イラバが警察官からメガホンを借り犯人に呼びかける。

「要求通りヒーローがきたぞ、人質を解放しろ」

「一人で二階までこい」

犯人は大きな声で返事をした。

「一人か、ならば僕が」

イラバが言い切る前に俺は家の中に駆け出していった、イラバが行くと犯人を逆上させるかもしれないからだ。

二階に上がると男が女性にナイフを突きつけていた。

「望み通りきたぞ、だからその人を解放してくれ」

「まぁ待て、質問に答えろ、お前はヒーローとして有能か」

なんだ、いきなりなに言ってんだこいつは。

しかし早く答えないと人質の女性が危ない。

「ああ、18でこんなに成果をあげてるヒーローは俺だけだ」

「ほう、同い年か、だったら尚更ちょうどいいな」

ちょうどいい、さっきからこいつは何言ってんだ、同い年だからヒーローの俺とジャージに裸足の見窄らしい格好をしたお前が同じと言いたいのか?

「人質は解放してやろう」

犯人はナイフの柄で女性の頭を殴り気絶させた。

「お前の体と引き替えにな、¦強制人生契約アカウントバーター

目映い光が襲ってくる、しまったこいつはヴィランだったのか。

目を開けると真っ赤なスーツを着た男がいる、間違えるはずがない俺がいる。

なぜだ、なぜ俺の前に俺がいる?

自分の体を見てみると真っ黒なジャージを着ている、そうかわかったぞ、こいつの能力は体を入れ替える能力なんだ。

俺の格好をした男は人質の女性を連れ階段を降りていく。

「人質を捕まえたぞ、やつはヴィランだ」

大きな声で男が叫ぶ、マズイマズイこいつは非常にマズい、玄関を蹴破る音が聞こえた、イラバや警察官が乗り込んできた証拠だ。

こんなところで捕まってたまるか、俺は二階の部屋の窓から逃げ出すことにした。

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