兵士はなぜ反逆したのか
気付いたら2週間くらい更新してなかった……。
急いで投稿いたします!
「なっ、なっんなの?」
《氷姫》は自分の起こっている状況に、配下の氷で出来た兵士の剣によって貫かれていた現状に驚いていた。
「何故、あんたは私に逆らえないはずでしょうが!」
この城に居る兵士は《氷姫》の魔力によって現界した、魔力の奴隷である。
魔力によって作り出した氷を、魔力で兵士の身体へと再構築して、その上で魔力によって下級精霊――――自我意識もなく、自らではなにも動かす事が出来ないようなくらいの最下級妖精を兵士の身体の中へと入れて従属させるのだ。
身体を構築する氷も、再構築に使われた構築費用も。厳密には下級精霊は《氷姫》の魔力ではないが、今の精霊を構築している魔力――――人間の血液部分に当たる部分が《氷姫》の魔力へと変わっているので、それこそ全て。
この兵士は全て《氷姫》に、魔力と言う対価を貰って存在している、労働者なのだ。
もしこれが不当な契約、精霊に対してあまりにもすく案すぎる魔力の場合であれば別だが、砂漠地帯……大陸にまたがる大国全土を氷土と化すほどの力を持つ《氷姫》と、自らが本来保持する魔力では存在する事すら危ぶまれるくらいの魔力しか持たない下級精霊とは月とすっぽん、いやアリとドラゴンほどの差がある。
人間とは違い、精霊はその身に宿る魔力に対して従順だ。悪魔が契約と言う命令を絶対遵守するように、精霊もまたこれだけの条件下の中で主に刃向うと言う判断は絶対にありえない。
――――だからこれは本来ありえないのだ。
契約に遵守すべき精霊が、契約している相手である主人に対してここまで明確な敵対行動を取るというのが。
「くっ……!」
慌てて《氷姫》は全てを解除した。
身体を構築する氷も、再構築と今も同じ状態を維持する魔法も、精霊の身体全体に溶け込んでいる血液も、その全ての魔力を主人の権利を用いて正式に排除した。
一瞬にして氷の兵士の身体は消え失せ、そこには今にも消えそうなくらいちっぽけな、だけれども全てを焼き滅ぼさんとばかりに燃え動く蒼い炎がそこにはあった。
《くくっ……怖いねぇ怖いねぇ》
「《蒼炎》!?」
その蒼い、会話をする炎に過剰反応したのは、自分の身体を奪われた過去を持つジェラルド――――つまりは俺だった。
「何故、《蒼炎》が! あいつは俺が倒したはずだろ!」
《クフフゥ、《蒼炎》とは見たまんますぎるねぇ、見知らぬ人よ》
俺の言葉に対して明らかに、明確に前に倒した奴とは違う反応を見せる《蒼炎》。
雰囲気。
声の調子。
勢い。
《蒼炎》が纏う雰囲気は、明らかに俺の知るあいつとは違っていた。
「……取り逃した奴ですか」
クッ、と顔を歪ませて女死神はイラついていた。
《そうだよ、お前が使って、捕り逃してしまった罪人の1人だよ。名前なんか、もう既に意味を失くしてしまたから、今ここで自身に仮の名を用意しよう。
我が新たな名は【反逆の精霊】、リベールジン。地獄へと墜ち死を経験せし者として、天国にも近いぬるま湯に浸かって暮らす生者へと反逆しよう!》
そう言って、その闇に堕ちた者と語る化け物は黒い影と一体化して、一つの人間へと形作られた。
「……黒い影、私が所有して保有している死者の1人ですが、あの影を完全に掌握するとはね……。厄介、だわ」
と、女死神は頭を悩ませていた。




