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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
姫と異界の紫の書

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88/90

女死神と人形はどこへ行くのか

 シュータンクを倒し、(裏でオッテフォルティチュードを倒した)女死神と合流した俺――――ジェラルド・カレッジは、女死神の先導を受けて氷の城の中を進んでいた。


「しかし……どこを見ても、白一色だな」


 白……と言うよりかは、透き通った水色に近いのかも知れないが、どちらにせよ氷や雪といった寒さを強く感じる配色である事は変わらない。

 1つ1つがまるで美術品かのように丁寧に細部までこだわって設計されており、氷の床の下にある花々も氷というケースに入れられて色の濃さがさらに際立っている。

 この氷の城は敵の居城であるが、この綺麗さはまるで美術館かなにかと思わせんばかりである。

 ――――まぁ、生活感がないという点においては《敵の居城》も、それから《美術館》も左程大きくは変わらない気もするけれども。


「この城の一番上の部屋が、《氷姫》がいらっしゃるみたいですね。まぁ、一番上の部屋に居るのが一番効率的ですけれども」


「効率的?」


「魔法でこういった大きい魔法陣や建物などを長期間運用する場合、魔法の核となる部分は中心部が多いです。その上で破壊されにくい部分、こういった大きな建物だと一番の上層階が多いみたいです。なおかつ、その部屋を自分の主の部屋となっているのが多いので。

 一番効率が良いんですよ、上層部の建物を主の部屋となるのが」


 魔法に詳しくはない俺はなにを聞いてもさっぱりだが、魔法を使っている女死神は頷きながらそのまま階段を……上へ、上へと、静かに昇って行く。


「と言うより、これはどうして知ったんだ? 魔法使いと言うのは、こういう敵さんの城の構造を知っているのか?」


 俺は兵士として自身の城、他国の城といくつも城を知っては来て、城の構造がどういった傾向があるのかは分かってはいるつもりだ。

 たとえば風の強い地方に建てられる城は風が入り辛い、また飛んで来た物が当たっても壊れにくくするため、高くない物が多い。また水が多い地方の城は湿気に強くなるための魔法陣的紋様が施されたり……などなど、とどういった地方にはどういった城になるかはある程度分かる。

 けれども、それは"ある程度"である。


 同じような地域の城だとしても将軍が住まう場所、罠がある場所、兵士が駐屯する場所……それは城によって違ってくる。

 だから、俺は完全には信じられない、信じ切れないのだ。

 こんなに容易に、この城の構造を把握していると言い切っている女死神の言葉が少し信じられないのである。


「……教えていただいたのです」


 ……教えて、貰った?


「それは……この氷の城の敵、って事か? あのシュータンクのような?」


「まぁ、そうです。良く分からない名前ではありましたが、その実力は本物でした。まぁ、その際に奥の手……いえ、この場合は予想外の手、とでもいうべきでしょうか。その予想外の手によって敵から情報を得る事に成功し、この城の内部構造が判明したのです」


「予想外の手?」


 詳しく聞かせてほしいと言うが、女死神は関係無い事であるとそう言って続きを話してくれなかった。


「とにかく……分かった事はこの城に居るのは氷姫を除けば3人。シュータンク、そして私が戦った相手とこの城の相談役の人で終わりみたいです。相談役の人はまた別になって来るとは思いますが、シュータンクと私が戦った相手は既に倒しました。後はこの氷の砂漠を終わらせるために、氷姫に止めを刺すしか――――。

 私の予想外の手の話は、今はどうでも良いじゃないですか」


 女死神はもう話は終わりとばかりに、そのまま再び黙って階段を上って行く。俺も黙って、その後を追って行く。


「――――そろそろ着きますよ」


 一番上へと辿り着くと同時に女死神はそう言う。

 階段の一番上の踊り場、そこには大きな扉があった。


 氷の大きな扉には、今までの扉などの氷の城で見掛けてきた物とは違い、扉の真ん中には紫色が使われていた。とりあえずこの氷の扉、そして扉の向こうになにかあるのは確かなのだろう。

 他と違うというのは、特別ということだ。これがなんなのかは分からないけれども、少なくとも今まで以上に警戒すべきことだろう。


「開けますよ、良いですか?」


「あぁ、勿論だ。準備は出来ている」

 

 俺がそう言って、扉を開ける。



「どうやって入って来てたかは分かりませんが、入って来た以上はお客様ですよね?

 ようこそ、私のプライベートルームへ」


 中に入ると彼女、氷姫は椅子に座ったまま丁寧なあいさつをして僕達に話しかけて来た。

 彼女の背後からの猛烈な吹雪を受けながら俺は剣を強く握りしめて、彼女と向き合っていた。


「――――この吹雪を終わらせるために、俺達は来た」

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