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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
墓守と五英雄の光の書

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84/90

ハカモリ英雄譚

 これは1つの閑話である。

 本編の本筋とはあまり関係ない、ただの男と女の話。《界龍種》と呼ばれた兄妹の、どこにでもあるような英雄譚である。

 この物語に対して、敢えて名前を付けるとするならば彼の通り名も交えてこう記そう。

 ――――《ハカモリ英雄譚》と。



 界龍種は群れる事が少なく、天涯孤独の一生を過ごす事がほとんどだと言われているが、この《ハカモリ英雄譚》にて語るガウガウとストレーガは兄妹で長い旅を行ったという記録が残っている、非常に希少な例である。

 ガウガウの能力が精霊を操る事、ストレーガの能力が精霊を自らに取り込む事と――――親と子でも能力が違う事が多い界龍の固有技が2人とも良く似ていたのが、大きな要因であるとも思われるが。

 ガウガウが精霊を操ってその恩恵を操り、暴走して操りきれなくなった精霊を自らの中に取り込むストレーガの相性は非常に良く、2人はいつも一緒に旅をした。


 ガウガウとストレーガが旅をしていたその頃、世界には1人の化け物が君臨していた。

 化け物の名はニーズサルム・ノーニーズ、『多種系統の魔法の融合』と『あらゆる物を育む力』という2つの力を持つ世界支配を企む魔王だった。


 強力な魔法を2つ、3つを組み合わせて新たな強い魔法を作り出す、魔法の絶対者としての力。

 赤子であろうとも、生まれたてであろうとも、成長させて即戦力の魔物へと変える成長の力。


 全ての魔物を平等に、そして対等に、支配下へとおいていったニーズサルム。

 魔物種の支配から始まり、人間種へと手を伸ばし、そしてその手は精霊種――――ガウガウとストレーガの2人の能力の要と言う存在に手を伸ばしたのだ。

 自らの心の友たる精霊種に手を伸ばしたニーズサルムは2人の逆鱗、まさしく龍たる彼らの触れてはいけない部分に触れたのだ。


 こうして知らず知らずのうちに2人の逆鱗に手を伸ばしたニーズサルムは、こうして世界三強の一角に喧嘩を売ったのだった。



 旅の途中にガウガウとストレーガは様々な紆余曲折と物語を得たのだが、その物語については割愛しよう。この物語は閑話、つまりは本編とは関係ない与太話のようなものだから。

 旅の途中にて最強の傭兵たる【大狼種】の剣士インヴィシビィ、人心掌握に長けた【赤蛇種】の聖女メービ、この世界ではない【死の国】の女王ヘル。

 そんな者達と時に競い、時に騙し合い、時に寄り添い――――仲間にしたガウガウとストレーガの2人は遂に魔王ニーズサルムとの決戦に挑んだ。


 ニーズサルムの身体にインヴィシビィの強烈な一撃、そしてガウガウの使役する大精霊の強力な一撃。それを何度も、ニーズサルムに与えるも《あらゆる物を育み、成長させる力》の前では無力だった。自身の身体を育み、傷を癒すのだから。

 ガウガウとストレーガの一行も聖女メービの高位の回復術によって回復するも、明らかに状況はニーズサルムの方が優勢だった。


 しかし、それぞれの自身の命を賭けた一撃を、ニーズサルムにぶつけた。


 まず女王ヘルが自らと共にニーズサルムの成長の力の根源たる右手を同時に道ずれにする。ヘルはもう二度とこの世界に来れなくなると、皆に会えなくなると語るも、最後の瞬間は笑って死んで元の世界へと戻っていった。その姿を後の歴史学者は、死の国という国の女王たる堂々たる姿だったと語る。

 次にニーズサルムが生み出した強力な魔法の一撃を生み出し、彼らに放つもインヴィシビィが捨て身でその魔法を受け止めた。いくら肉体的に優れていると言っても、魔王を体現するその者の強力な一撃にはさすがの最強も無傷では済まなかったらしく、がっくりと膝をついて倒れた。彼の人生を語る者は多くの傷を受けていた彼が、人生で唯一受けた背中の傷であり、初めて誰かを守った時についた傷だったという。

 強力な魔法を撃った反動によって動けなくなった魔王に、メービは己の全魔力を用いて魔王を回復……細胞が壊れるほどの過剰な回復を起こし、もう片方の腕も削った。魔力を使い果たしたメービは一気に老婆のように老け込むも、美に異様にこだわった彼女が生きて戻った際に自分の醜い姿を見て語ったのは「悪くない」という一言だった。

 満身創痍の、それでもまだ死なずに足掻こうとするニーズサルムに、ガウガウとストレーガの2人は協力して精霊の能力を全開にした。ガウガウは精霊の王として精霊達に自らを精霊化させ、精霊化したガウガウをストレーガが自身の能力で喰らう。最強の精霊王たる力をその身に宿したストレーガは、精霊王の一撃を全力で与える。


 5人の英雄の攻撃により、世界支配を目前と控えた魔王ニーズヘルムは遂に打ち滅ぼされる。

 老婆という醜い姿になったが、唯一この一行の中でこの功績を民へと報告したメービの言葉によって、民衆は歓喜に沸いた。


 この5人の活躍は後の時代へと語り継がれる。


 魔王の攻撃から仲間を守った《勇気の英雄》インヴィシビィ。

 どんな苦境でも仲間に愛を与えた《献身の英雄》メービ。

 この世界ではない別の世界から来た《死の国の英雄》ヘル。

 自らを妹に喰わせて魔王への切り札とした《自己犠牲の英雄》ガウガウ。


 そして――――魔王との戦いの後、魔王の手の者によって殺されてしまった者達を慰めるために各地に墓を作った《墓守の英雄》ストレーガ。


 我々は忘れてはならない。

 魔王を倒すために自らが出来る全てをぶつけた5人の英雄の存在を。


 我々は称えなければならない。

 魔王と戦い、勝利した5人の英雄の存在を。


 そのためにここにこうして1つの書籍を残そう。

 この5人がいかにして出逢い、そして戦って来たのか。


 これは私が彼らの話を聞いて書きだした、1つの記録である。


――――著者;聖メシア教会神体代行 メービ・クリストファン――――

【ヘル】

……いや、【死の国の英雄】という紹介は酷くないですか? これ、その国出身の英雄という意味ですよね? あれだけ活躍しといて、紹介がこれは雑すぎません?


よろしければご意見、ご感想をくれると嬉しいです。

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