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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
氷姫と悪夢と紫の書

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才能の紙はどういった反応を見せるのか

「さて、ではレッスンを始めましょうか?」


 と、フィーラはそう言って1枚の紙を取り出すと、それを私に見せつける。そこには小さな赤い文字で、【レッスン1】、【レッスン2】、【レッスン3】という3つの言葉が書かれていました。なお、その下に補足説明とかは一切なく、ただその3つの言葉のみが書かれています。


「あの……レッスン内容が書かれていないんですけれども?」


「えっ? レッスン内容って書くものなの? これはただの達成確認でしょ? 自分がその技を使うためにどこまで達成できたのか、レッスンでもなんでも大抵の事柄は3つの観点でその達成度が判断できるようになっているでしょ? これはただ、あなたがどこまで出来たかを見やすくするために書きだしただけです。

 【レッスン1】、その技を行う素養があるかどうかという事柄実行が可能かの確認。まぁ、これはこちらで確認済みなので構いませんね」


 と、彼はそう言ってすーっと黒いペンでラインを引いて【レッスン1】の文字を塗りつぶす。


「【レッスン2】、その内容や技を行うのに必須な技能の習得。まぁ、その条件と置き換えても良いかも知れませんが、その条件や技能が必要なのが多ければ多いほど、この【レッスン2】は増えていきますね。【レッスン2-1】、【レッスン2-2】……とね。

 そして【レッスン3】、その内容と技を実際に行う。

 これが新技を覚えるメソッドです。【レッスン】という形の」


「へ、へぇ……あ、あのでもどうして、それを私に教えてくれるんですか? い、いちおう敵……ですよね」


 勿論、私にこの人と戦うような気持ちはない。いや、反抗とか、そう言う事を全く考えていない、という意味であって。

 ともかく私はこの人と敵対する気持ちは一切ないんだけれども、それがどうして私に対して教育をしてくれるのか、それが不思議でならない。


 ……いや、もしかしてなにかの罠?

 う、うん。そっちの方が自然、ですね。


 そう私が聞くと、フィーラはキョトンとした顔でこちらを見る。


「敵? えっ、あなたはわたくしを倒すつもりなの?」


「そっ……そんな事は、決してなく! はい、決してないです!」


「それなら、別に敵じゃないよね? そもそも、わたくしは誰の敵でも(・・・・・)ないんですよ(・・・・・・)。誰とも敵対している訳でもなく、ただ存在しているだけ……それが《氷姫》から与えられているわたくしの役割なのです」


 ……彼の役割?


「まぁ、わたくしの役割とはこの際どうでも良いですね。

 では【ミッション1】はこれにて完了致しましたので、これより【ミッション2】を実行いたしましょうかね」


 彼はそう言い、その言葉と共に1枚の紙を取り出していた。そこには小さな文字、【純白】の2文字が刻まれていた。


「あなたの祖先はいくつもの技を用い、最強の一族の一角を担っていました。

 言葉を実体化させる技、相手の能力と自分の能力の限界を変える技、次元と空間を操って思い通りに空間を弄れる技などなど……まさぁ、そのうちの1つでも使えれば恐らく1人でもこの世界から生き残る事が出来る、そのくらい凄い技なのですが、あなたがこれから覚えて貰うのは、そのどれでもない技。そもそもがアケディアさん、あなたに出来る技はこの世には存在しません(・・・・・・)


「えっ、えぇぇぇぇ!?」


 それって……私は何も出来ないって事?


 ……で、ですよね~。

 こんなとりえもない、ただ生きているだけの私が出来る事だなんて、そんなのあるはずがないですよね~!

 ちょっとだけ、ほ――――――――んのちょっとだけ希望を持って聞いちゃったけれども、そもそもの前提が間違っていたのだ。


 "アケディアは無能である"。


 そんな事はあの人から、私を仕込んだ奴隷商人さんからよく聞かされていたはずなのに……。


「まぁ、また気分が落ち込んでいる? そんな事はないから。話は最後まで聞きなさいって」


「でっ、でもでも! 私が出来る技は、ないって……」


この世には(・・・・・)まだない(・・・・)。私はそう言ったのだよ。

 あなたの祖先は、いや一族はかなり特殊な一族で、他の種族や流派が持っている《指南書》というものが存在しない。何故なら同じ技を持っている者が居ないというかなり特殊な一族で、その人が出来る事はその人の素質、存在そのものが大きく関わって来る。そもそもあなたが使う技のこれらは一子相伝、いえ一人の人間のみが使えるという個人仕様のオーダーメイドの技。言うなれば、その人にしか出来ない技……その名も【固有技(こゆうぎ)】」


「私にしか……出来ない技……」


 それが出来たら私はきっと……変われるのかもしれない。

 もしかしたら、新たな自分へと……きっとなれるに違いない。


「と言うわけで、早速君の能力がどんな物になるのかという資質を見るために問いに答えて欲しい。今、この紙には【純白】の二文字が書かれているとおもいますが、それは見えるね?」


「はっ、はい……」


 「よろしい」と彼はそう言うと、奴隷時代の勉学の先生(奴隷は多少教養がある方が高値で売れるので、勉学を教える教師が居るのです)に教えて貰った時のように、丁寧に悟らせるような口調にてそう言ったのでした。


「これは技の性質によって書かれる文字が変わる特殊な紙。例えば炎の魔法を使う魔法使いならば【火炎】、剣技に長けた者ならば【剣】など、その才能によって書かれる文字が変わって来る。勿論、その者が秘めた才能も分かる便利機能付き。

 これを使って、あなたの才能を、その質をはかります」


 そう言って、フィーラさんは技の資質を見るための紙を私へと渡してくださいました。

 これで……私の能力が……隠された才能が……。


「あぁ、魔力とかを通すとかそういうのは関係ないのですから。

 才能を見るための紙が、魔力がない者の才能を見る事が出来ないとかそう言う欠点はありません。例え魔力も無い最下級クラスのスライムだとしても、体当たりの……それもどういった体当たりに対して適性があるのかという事まで、事細やかにどんな才能かが分かります。なので、その紙を見れば一目瞭然の……」


「一目……瞭然……」


 え、えっと……フィーラさん?


 質問と言うか、相談と言うか、そういう事なんですけれども……。


 【火炎】で火炎の魔法。

 【剣】で剣術。

 最下級のスライムであろうともその才能が分かる、そんな才能を見るための紙。


 そんな紙が触れた瞬間、消えたら(・・・・)どうしたらよいでしょう?

固有技(こゆうぎ)

 界龍種の者が使う技。個々人の名前や存在などによって1人1人技の内容が違って来ており、それ故にその者しか使えない技……《個人技》と呼ばれる場合もある。一説によると《書いた文字を具現化する技》や《相手の攻撃力の10倍になる技》、《相手の能力をコピーする技》など様々だが、界龍種が用いるこの技のほとんどは使うだけで世界に大きな影響を与えると言われている。


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