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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
氷姫と悪夢と紫の書

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73/90

氷の城を守るのは誰か

なんとか今日中に投稿完了。

……次話はもっと早めに取りかかろう。

 左の豪華な装飾がされた扉を開けると、そこは大勢が躍るためのエントランスであった。天井からぶら下がっているシャンデリアも、真ん中の豪勢なテーブルも全て氷で出来ているが、その豪勢さとしっかりとした作りこみは伝わってくる。


「ここは……武闘会場って所でしょうか?」


「まぁ、そうだろうな。ここまで露骨なら逆に分かりやすい」


 と、俺はエントランスに飾られている装飾品の一つをこんこんと叩く。

 あまり力を入れたつもりはないがそれは、凍らされた人間(・・・・・・・)はそのまま床にゆっくりと倒れる。


 大量に飾られた氷漬けの人間達。

 これを《氷姫》は恐らく、この武闘会場を彩るための装飾品として置いているのだろうが、それにしたって趣味が悪いと言わざるを得ないだろう。だって本物の人間を、わざわざ部屋のインテリアにするためにこうして氷漬けで飾っているのだから。


「……酷いとしか言いようがありません。この城主の姫様には、人間の心と言うものがないのでしょうか?」


「分からないな、この部屋の悪趣味さを見ているとまともでない事は確かだが、今まで通って来た場所では着飾っているセンスは高い。この部屋の悪趣味さ加減は相当、だが」


 と言うよりも、このまま進んで良いのかと女死神に聞くと、間違いないと太鼓判を押される。


「方向はこちらであっています。と言うよりも、彼女の殺気はこの階段の上から感じられるのですが――――」


「……階段は、ここしかないみたいだしな」


 この部屋に入った瞬間、あの姫様と戦えるとは流石に思っていない。少しずつではあるが近付いているのが確かならば、それだけで良い。


「それに敵将さんに近付いているのは確かなようだ、敵さんを守る忠実な騎士(ナイト)のおでましだ」


 ゆっくりと、まるで湖の上から現れる女神のように氷の中から騎士が現れる。

 俺が鉄錆の黒い騎士だとすれば、相手は白銀の騎士。全身が真っ白な氷で作られた白い武装で身を包んだ騎士。兜や鎧、それに手に持っている槍すらも真っ白の武装で身を固めたその騎士は、騎士の面から見える黄色い眼だけがじっと睨んでいた。そんな氷の騎士は先程見た城の兵士と同じように、足を持たずに床を滑るようにしてこちらに向かっていた。


【お前が姫様が言っていた、面白い『人形の騎士様』か。確かに面白そうだ(・・・・・)


 【ククク……】と騎士らしくない、卑猥な笑みを浮かべていた。


「お前がこの氷の城を守る騎士、っていうところか」


【あぁ、そうだ。我の名前は【七の戦車(シュータンク)】。この城の城主たる姫様を守る盾にして、剣なり。もし敵が攻めて来ようものならば、我が槍で相手の心臓を一突きにさせていただこう。お前も騎士ならば、我が心中も良く分かるんじゃないか?

 敵のために、主に害為す者に対して剣を振るって倒すのが我々の役目だからだ】


「……そう、だな。その気持ちは良く分かる」


 自らが仕える主のために障害を全て排除し、主の意向に沿う形を取る。それが騎士の生き方そのものである。

 目の前の白銀の騎士も、自らが仕える姫のために俺達を通せんぼしている。


「……ここを無傷で押し通るというのは、話し合いだけでは無理なのですか?」


「――――それは、ないだろうな」


 女死神の甘い考えに対し、俺が即座に否定する。そして白銀の騎士、シュータンクもまた大きく笑う。


【そうだな、そこの人形さんの方がよほど話が通じる。男と女を分ける差別主義者ではないが、戦いの場においてはそのような甘い考えでは良くないぞ。

 お前らはこの場においては招かざる客人、いや毒とでもいうべきか。毒はやがて全てを(むしば)み、主への脅威へと変わる。そんなものを、このシュータンクという騎士様が見逃すはずなかろう】


 ――――それが騎士というものだ。


 そう彼は言い切った。


「互いに道を阻む騎士が居るのならば――――」


【――――お互いの信念を持って戦う。それが騎士の流儀。

 なんだ、良く分かってんじゃないか】


 ゆっくりと氷の床を滑るようにしてこちらに来るシュータンクは、クルクルと手に持っている戦槍(せんそう)を回転させていた。


【主より作られしこの命、主のために仕えるならばそてこそ本望。この大戦槍(だいせんそう)の錆にしてくれる。そのためにも、この場で始末させて貰おう】


「上等だ、始末すると言われて始末されるほど安っぽい命ではないんだよ。

 ……女死神、下がって貰えるか。この戦いは俺に向けられたものみたいだ。騎士同士だけで、戦い合いたい」


【……よかろう、それならばこちらも遠慮なくやらせて貰おう。

 そこの女死神が手を出さない限りは、こちらも余計な手出しをしないと、騎士の誇りをかけて誓おう】


 そう言って胸の前で手を組み、シュータンクは目を閉じる。騎士の宣誓のポーズ、に良く似た誇り高い恰好であった。


【――――ただし、その分戦闘に置いては徹底的にやらせて貰おう。

 お前がどれだけ強いと聞いては居るものの、所詮は居の中の蛙。蛙ならばこの雪山ならぬ氷の城で、永遠に冬眠していくがよい!】


 彼が高らかに名乗りを上げると、彼の背後から強烈な雪と共に大風が吹雪く。そして彼が持っていた槍は吹雪の雪がさらに強まると共に、槍は彼の氷の腕と一体化していく。


【"人馬一体"、馬に乗っているという感覚を越えて馬と一体化するほど鍛え上げた戦士の方が強い。それは至極当然。だけれども、今からお見せするのはそれ以上。人と槍の融合……"人槍一体(じんそういったい)"をお見せしよう!】


 不敵な笑みを浮かべながら、シュータンクはこちらに大槍を振るうのだった。

よろしければご意見、ご感想をくれると嬉しいです。

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