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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
王都と《蒼炎》の銀の書

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52/90

ピエロの女はどのような攻撃を仕掛けて来るか

 ケルヴィンが襲い掛かれと指示すると共に、13にも及ぶ青い火炎の兵士はそれぞれ武器を構えていた。

 初めの前衛の8人が4人ずつのグループとなって片方の組は長い剣、もう片方の組は穂先の長さに反して異常に持ち手が短い槍、と言う2種類の武器を持って2人に迫って来ており、残りの5人が後衛として魔法の杖と弓矢によってこちらを狙っていた。


「あぁ、もう! 前衛ばかりで対処する方としては大変なの! こんな時に騎士人形が居れば良いのになの!」


「えぇ♪ あの人が居ると楽しい戦闘になったでしょうにね♪」


 嬉しそうに笑うインヴィディアに笑い事ではないと思いつつ、ラースは弓を閉まってナイフを取り出していた。

 森で暮らすダークエルフにとって弓矢だけの狩りと言うのはあまりなく、そのため普段は遠距離の弓矢を主流に扱うラースナイフなどの近距離の戦闘は出来る。勿論、弓矢に比べると心持たないのだが。


(あぁ、もう! 騎士人形が居れば簡単なのに!)


 騎士人形(ジェラルド・カレッジ)に文句を言いつつ、ラースはナイフを迫って来た長剣を持つ4人の兵士に対してナイフで斬りかかる。

 しかしナイフで斬りかかるも、身体全体が炎で出来ているためなのか、ラースのナイフが本体を捉えない。

 それに対して青い炎の兵士が持つ剣はこちらのナイフに当たるのは、少し理不尽と感じるラース。


「じゃあ、私はこっちのお相手をしておきましょうかしら?」


 インヴィディアは桃色の可愛らしいハンマーを作り出すと、そのハンマーでもう片方の持ち手が短い槍を持った4人を殴る。

 すると4人の兵士はフラフラと視点が定まらない眼をしながらケルヴィンの方へと戻っていく。


(インヴィディアの精神攻撃が有効と言う事は……インヴィディアに任せていいなの)


 インヴィディアの魔法、変換ハンマー。

 向かって来る物を放った相手へと返すと言う、ただそれだけの魔法を付与したハンマーであるとインヴィディアは謙遜しているけれども、今回のように攻撃が効かない相手に対しては有効な手段であると、ラースは思う。

 そんな凄い技を持っている親友は流石、今居ない騎士人形は最低……と付け加えるのも忘れずに。


「あぁん……♪ 戻って来なくても良いのよ~?

 さぁ、後衛さん? グズグズな、哀れな子羊にメッロメロな愛の祝福を!」


 司令官であるケルヴィンの号令と共に、後衛で杖と弓矢を持って待機していた兵士達が動き出して、杖を持った者が炎の魔法の球、弓矢を持った者が先端に炎を宿した弓矢、とそれぞれ炎を纏った攻撃をする。

 そしてそれが放たれたのを見て弓矢で迎撃しようと前衛の兵士から距離を取ったラースは、そこで後衛の可笑しな行動に気付く。


(あれ……? あの軌道だと、私達じゃなくて前衛の兵士に当たる軌道なの)


 普段から弓矢を使って相手を射抜いているラースからすれば、相手の弓矢から大体どの辺りに落ちるかと言うのは見ただけで分かる。同じく後衛の遠距離である魔法も、だ。

 今の軌道を計算すると、ラースの見立てだと当たる位置はラース達ではなく、インヴィディアの変換ハンマーによって操られた槍を持った兵士達の真上である。

 ラースの予想通り、後衛の炎の兵士が放った炎の弓矢はインヴィディアが操った兵士達にぶつかり、操られし兵士達は弓矢の攻撃を受けてそのまま灰となって消えていった。


 ――――その灰から4人の槍を持った兵士達が復活していた。


(操られたら仲間の攻撃で即殺して復活……なかなか厳しいなの)


 インヴィディアの洗脳を行うハンマーは確かに強力である。

 しかし、操った相手を殺して灰から復活させるのではあまり意味がないだろう、とラースは冷静に分析する。

 ラースはインヴィディアの元へと戻ると、ごにょごにょと作戦を取る。


「取るべき手段としてはこれが最優先なの!」


「そうよね♪ それが良いわぁ♡」


 インヴィディアに矢を1本渡すと、ラースは弓矢を4本取り出して上向きに狙いを付けずに自らの頭上に向かって山なりに放つ。

 そして当たる当たらないの確認をせずに、ラースはナイフを持ってインヴィディアに預けた矢を受け取ると、ケルヴィンの元へと向かって走る。


 慌てて後衛の兵士達がラース撃退のために弓矢を構えるが、先程放った山なりに放たれた弓矢が後衛の兵士達に向かって来ていた。

 後衛の兵士達は自らに迫る弓矢に我関せずと言う感じで微動だに、なにも居ない物として対処しており、ラースに向かって弓矢を構えていた。


「自分より主を優先するとは……自分の命を保証出来ない者は、自然界では生き残れない人達なの!」


 ラースが放った弓矢のうちの1本は後衛の兵士達のうちの1人に当たり、そのまま灰へと消える。

 灰へ適当に放った弓矢のうちの4本中1本が当たったのだから、ラースからすれば御の字である。

 ナイフを振るおうと思いきや、ラースはナイフを持つ方とは逆の手で道具を取り出す。


 ――――矢を即座に打つための簡易式弓矢発射機、またの名を(クロスボウ)


 弓があるのにクロスボウを持つ事を他のダークエルフは良しとしなかった。

 クロスボウは弓の弱点である片手で居る事を可能とした武器ではあるが、それでも次の射撃までのセッティングに時間がかかると言う欠点もあり、わざわざ弓を使えるのにクロスボウを使う事をあまり良しとはされなかった。

 しかし、ラースにとってはそれは違う。弓矢には弓の、そしてクロスボウにはクロスボウの利点があると思っており、それ故に両方使う事で新たな戦い方が出来ると信じて両方を使用しているのだ。


(あまり仲間内では褒められた事はなかったけど……このとっておきを食らえなの!)


 ラースはクロスボウの引き金を引いてケルヴィンの方へと放ち、そのままナイフでケルヴィンの方へと向かっていた。


「あらぁん♪ そのガチガチでぶっとくて、キツキツななっがい棒を防ぎなさ~い♡」


 ケルヴィンのちょっと変な口調の下、配下の後衛3人組は弓を射る事を止めて、そのままクロスボウから放たれた弓を防ぎにかかり、そのクロスボウを火炎にて燃やしにかかっていた。


「今よ、インヴィディアの矢よ! 周囲の人物を眠らせなさいなの!」


 私がそう言うと、クロスボウから放たれた矢――――インヴィディアの睡眠を誘発させる眠りの矢の効果を言葉にて発動させる。

 この眠りの弓矢はインヴィディアに作って貰った、周囲の人物に対して眠らせる効果を持つ矢。

 ラースの言葉に反応してこの弓はその効果を発揮し、周囲に居る人物をラースとインヴィディアを除いて全員強制的に眠らせる効果を持つ。

 効果範囲が短いためにケルヴィンには効果が及ばないし、先程眠らせてもすぐさま起きた事から見ても効かないとしても、クロスボウから放った矢の対処に向かわされた後衛の5人はその範囲内である。


 後衛の5人はそのまま眠りの能力によって強制的に眠りにつく。

 そのまま眠った後衛の5人をナイフで切って灰になるのを確認すると、復活する前にその灰を踏みつけてケルヴィンの懐へと跳び込む。


「アハッ♪ 次はどんなワクワクもんの攻撃を仕掛けてくれるのかしらぁ? ドキドキで、楽しみだわぁ♪」


 ワクワクと、どんな攻撃が来るのか楽しみに待っているケルヴィンに対して、ラースはナイフを捨てて弓矢を構える。

 本来は弓矢は遠距離にて効果を発揮する物であり、このように相手の懐に入り込んだ状態で弓矢を構えるのはあまり得策ではない。

 

 ――――しかし、ラースに限ってはそうではない。


「そんなに女の友情が見たいなら、見せてあげますよ。

 私とインヴィディアの2人で生み出した弓矢を使った近距離戦闘術、"近弓武芸(マーシャルアーク)"を」

【クロスボウ】

…利点;弓よりも習得が楽・片手で扱える・重い弓でも楽々と引っ張れる・カッコいい

欠点;壊れやすい・次の射撃までに時間がかかる・使わせるとエルフっぽくない


よろしければご意見、ご感想をくれると嬉しいです。

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