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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
王都と《蒼炎》の銀の書

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43/90

王都にどうやって乗り込めばいいのか

 ツバイト村の研究所にてユーリ・フェンリーを倒した俺達は、さらに王都に近いドライ村へと辿り着いていた。この次が風の国ヴォルテックシア……この国の中心たる王都なのだが……。

 俺達は王都の前のこの村で足止めを食らい、酒場で情報収集を行っていた。


「どうも……それだけじゃないみたいなの」


「えぇ、調べてみた所。それだけじゃないのは確かだわ」


 弓使いのラース、そして彼女の友人のインヴィディアがそう俺に言ってくれる。俺はそれに対して「……やはりか」と声を出す。


「王都で俺と入れ替わった《蒼炎》。それがこんなに簡単に、そしてなにもしていないとは思っていた……」


 俺達は全員が奇形児……人々が恐れる錆人形(ラスティードール)という魔物の俺、龍の奇形児であるアケディア、ダークエルフのラースに妖精のインヴィディア。

 人間と言うのは人間以外の存在に対して非常に否定的で攻撃的であるため、大っぴらに調べる事は出来ない。だから森の狩りなどで王都についての情報収集を行って貰ったのだが……結果は最悪だった。


「【王都の防壁強化のために人員酷使】、【奴隷兵・外国兵の強化強行】、【訓練所の設立】、そして【武器などの装備の充実を画策】か……。それが今の"俺"がやってる事か」


「別に……犯罪に繋がりそうではないし……放っておいて良いんじゃ……いや、わたしなんかが意見してすいませんすいませんすいません……」


 アケディアが謝るが、確かにこれ1つ1つはそれほど問題がないように見える。

 風の国ヴォルテックシアの王都をさらに良い物とするためには、今の方策が国の軍事力強化にはなるものである事は確かなのである。


「しかし、これらの方策は全て人々の不信感……いわゆる、反逆心を煽る結果になる方策だ。1つ1つは戦力を高めるための方策にはなるとは思うが、これを全てやるとなると………愚策としか言いようがないな」


 訓練所の設立は良いとしても、他の3つの策は戦力や軍事力強化の天から見ると愚策としか言いようがない。


 防壁強化のために人員を酷使すれば兵士達の精神が摩耗してしまって逆に侵入者を多く中に入れてしまう事になり、奴隷や外国人を兵士として雇用すればスパイを招き入れる結果になってしまう。

 そして武器などの装備強化に関しては……。


「これは恐らく、《蒼炎》が使う強力な武器を集めるためなのだろうな……」


 この全てが《蒼炎》が国家滅亡のためのシナリオであると考えれば、やばいな……。

 奴が、《蒼炎》がマルティナ姫様を含めた王族の方々、それに王都に居る騎士団と民をも巻き込んで大きな事を起こそうとしている。これはなんとしても止めねばなるまい。


「で、ではどうしてここで足止めを……ひぃっ、すいません! こわいこわいこわいこわいです……」


 確かにアケディアの言う通り、王都に直接向かうべきなのだろう。しかし、そう簡単に王都へと向かう事が出来ない理由がある。


「そう簡単に中には入れないのだ……マルティナ姫様のせいでな」


「マルティナ姫……それって確か、王都に居る王族の姫様の名前、でしたかなの?」


 風の国ヴォルテックシアの王族の姫様、その名前がマルティナ姫。

 綺麗な金色の髪と白魚のような指、そして全ての人に愛される才覚を持っている可憐な華に例えられる麗しい姫、そんな彼女には特別な力がある。


「マルティナ姫……いや、王族には特別な力が継承されているのだ。

 どう言う力かは分からないが、マルティナ姫は魔物を払いのける力がある」


 風の国ヴォルテックシア、火の国フランメシア、水の国シュトルーデルカの三大国はそれぞれの王族が治めているのだが、それぞれの王族には"王"として称されるだけの特別な力がある。

 どのような力かまでは教えてはもらえなかったが、どうやら魔物を払いのける力があるらしい(・・・)


「魔物からの脅威を払いのけているその力は、魔物であるこの身体では行く事自体が難しい。魔物の侵入を防ぐための防壁に人員を割いている事から見ても、そう簡単に使える力ではないの……かも知れない」


 とは言っても、これが本当かどうかはマルティナ姫や王族の皆様に確認していない以上、分からないのだけれども……。


「――――なるほど、マルティナ姫は魔物を払いのける力があるみたいで、騎士(気取り)人形はそのせいで王都に入るのを戸惑っているなのか。確かにそれならば、入るのは難しそうなの」


「あらあら、それは大変ねぇ~」


「あうあう……こわいですこわいですこわいですこわいです……私も払いのけられてしまう? で、でももしかして殺され……!? こわいですこわいですこわいですこわいです……」


 3人にもこれは関係ない話ではないかもしれない。我が王都には1人たりとも奇形児を見た事がなかった。

 これは人間が人間でないものを嫌う風習か、姫様達が奇形児を知らないのかと言う事はあるかも知れないが、もしかしたら姫様の能力が魔物だけではなくて奇形児すらも対象になっているのからかも知れない。

 ……とは言え、《蒼炎》は俺の命令という形で奴隷……奇形児を集めているし、それに国を滅ぼすために魔物を集める草を使った事もあるから魔物も入れるだろう。


(……マルティナ姫様を助けに行く、だがそれでマルティナ姫様の力で倒されては元も子もないしな)


 だから一番の理想的なところとしては、マルティナ姫が気付かない内に《蒼炎》を倒すと言う事が理想だ。


 だけれども俺は騎士団長の立場であるため、俺の身体は騎士団の精鋭が守っているだろう。

 俺1人では《蒼炎》の元に辿り着く事は出来ずに倒され、だけれどもこの奇形児達を上手く使えば《蒼炎》の元に辿り着けるだろう。


(問題はこいつらをどう使うかだ……)


 物凄く硬い身体と反比例するかのように脆いガラスのような精神の、アケディア。

 思い込んだら一直線の弓矢の名手、ダークエルフのラース。

 そして未だどう言う役割にしたらいいか分からない、妖精のインヴィディア。


 ……チームとしては戦闘意欲無し、話を聞かない、実力不明という最悪なバランス。

 しかし、この3人が今の俺の仲間。この国を、王様達を守るための部隊。


 さて、どうするべきか?


(まずはこの3人の中で一番最初に片付けられ、なおかつ藪蛇になってしまうかもしれない危険物(ブラックボックス)であるインヴィディア。

 彼女がどう言った存在であるかを知る事から始めよう)


 "実力は40%くらいを相手に見せるのが丁度いい。何故なら、相手に全ての情報を与えるのは危険だから"


 騎士団ではそう言った事を言う奴が居たが、少なくとも実力0%ではどう言った役割にするかも見当がつかない。

 だからまずは、とりあえずあの騎士が言っていた"実力の40%"がどの程度の物なのかを知らねばなるまい。


(とは言え……)


「あぁ、インヴィディア。こんな事に巻き込んですまないなの。ダークエルフは義理堅いと思わせるためとは言え、こんな恐ろしい事態にあなたまで巻き込んでしまうなんて……」


「大丈夫だよ、ラース。私は……大 丈 夫♪」


「うん、インヴィディアは本当に良い親友なの! 本当に助けられて良かったなの!」


 そう言ってインヴィディアの豊満な身体(どこがとは言わない)に抱きつくラース。


 ……うん、あのスリム(どこがとはry)のダークエルフが邪魔である。

 情報を整理するためにはあいつが居ない所で2人っきりで話をしないといけないのだが、あのべったりと張り付いた彼女をどうやってとれば良いのか。それが今の俺の課題である。

よろしければご意見、ご感想をくれると嬉しいです。

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