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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
研究者と妖精の緑の書

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古代文献研究施設とはどういった場所だったのか

 入り口を守っていた2人のフェフ隊を気絶させた後、俺は2人を縄で縛り上げていた。

 弓矢一発と石一発程度では気絶させたとしてもすぐに起き上るだろうから縄で縛っているのである。


「それで大丈夫なの?」


「あぁ、縄で縛るのは騎士団として必要な技能の1つでもあるからな」


 敵を殺せば良いと言う訳ではない。時と場合によっては相手を気絶させて捕虜とする必要も出てくる。

 そう言った時に相手を縛り上げる技術も当然必要になって来るのである。

 俺は専門ではないから動いても解けないようにするくらいの縄で縛りあげる技術であるが、こう言うのが得意な騎士団員ならば相手を気持ちよくさせて尋問させやすいように出来るのだがな。


「騎士人形は、騎士の技術に精通しているなの。まるで本当に騎士みたいなの」


「(本当に騎士、なんだが……)」


「でも騎士って剣や魔法など、戦いだけだと思ってましたなの。まぁ、縄で相手を捕らえるのも戦いに必要な技能と思えば可笑しくないなのが……」


 ぶつくさと言いながら好き勝手に物を言うラース。

 ……彼女は何を言っているのだろうか?


 とりあえず俺はラースの言葉を無視して2人を縛り上げると、そのまま服の入っていたロッカーの中に入れて隠した。


「よし、これでとりあえず大丈夫か。では、行くとするか」


「確かに行きましょうなの」


 そしてラースは弓を片付けるとそのまま、古代文献研究所の入り口へと入って行った。

 ラースが入ったのを見て、俺はその場にしゃがみこんでいたアケディアに声をかけていた。


「――――とりあえずここに居ても襲われるから、一緒に行かないか?」


「う、うぅ……そ、そそ、そっちが安全だと言うのでしたらつ、つつ、着いて行きます……」


 そうやっていつものように全身をがくがくぶるぶると震わせながら、立ち上がって俺の身体を掴んでいた。俺がどうにかして身体から離れさそうとしているのだけれども、彼女はぎゅっと掴んだまま身体から離れようとしない。


「まぁ、良いんだけれどもな……とりあえず中に入るぞ」


「う、うん……」


 俺が歩き出すと共に、俺の服を掴んでいるアケディアも一緒になって入る。


 古代文献研究施設の中に入って見ると、化石や魔法の資料や王族の建国資料などそこにはいくつもの重要な古代の資料などが丁寧に保管されていて、ただの文献研究施設ではなく古代に関係するものを集めているみたいである。

 どうやらラースは先に向かったようで、ここには居ないな。


「……これは王国の奥で管理しているはずの、王国創設期の資料だな。本来は閲覧に制限が付けられており、なおかつ持ち出し厳禁のはずの資料があるのか。

 これだけの歴史に関する資料を集められているとは、よほどこの施設は王国に信頼されていると見える」


 本来であれば持ち出せない資料があると言う事は、持ち出しても良いとそれだけ施設には信頼されている事である。

 この施設の施設長であるユーリ・フェンリーは、それだけ凄い人物だと言う事なのだろうか?


「あっ……!」


「……どうかしたのか?」


「い、いま、あの化石の魔物が動いたような気が……」


 と、アケディアが言うので俺は化石を見るのだがどう見ても動いた様子がない。

 そもそも化石とは大昔に居た生物達が地面に長い間経過する事によって肉が無くなり、骨だけとなって、石のような物となった地面の中から発見されたものである。

 魔力など動く要素が無くなった化石が動くはずないのだが……。


「うーん……」


 とりあえず化石を見ているがなんの変哲もなく、これが動いたなんて信じられない。


「……本当に動いたのか、この化石が?」


「う、うん。こ、ここの私のび、びび、ビビりオーラの名に懸けて動いたと証明して見せますです!」


 ビビりオーラに掛けて証明すると言われても……な。

 けれども、確かにアケディアのこの怯えようは本当にそうなのかもしれない。ただの気のせいと言う可能性もあるが。


「……と、とりあえずこの化石、壊しておきませんか? ねぇ、そうですよ。絶対、そうするべきだと思いますですよ!」


「化石を壊すって……物騒な事を言うな。今の所はただの勘違いかもしれないと言う可能性もあるのだからな」


 もし勘違いだった場合、一方的に責められるのはこちらの方なのだから。

 こっちは奇形児に人形の魔物という人間に嫌われる存在であり、なおかつこう言った化石とかは希少性故に歴史的な価値も高いため破壊するとなるとそれだけの理由があると言える。


「うぅ、でも……」


「とりあえず今は、ラースを探そう。見失ってばかりだといけないからな」


 そう思って俺とアケディアの2人は古代歴史研究施設の中を歩いて行く。

 独特な雰囲気を漂わせる中には青い光が差し込んでおり、どこか厳かな雰囲気が施設の中を照らしており、そして異様な雰囲気を漂わせていた。


「なんか寒くあ、あり、ありませんか?」


「それも気のせい……ではないようだな」


 俺はそう言って、辺りを見回すと周囲がどことなく寒くなっているように感じていた。

 実際に極寒の寒さを感じている訳ではないのだが、周囲が本当に凍っているのを見ると本当に寒いのだなと感じている。

 それも雪崩に巻き込まれても、特に寒いといっていなかったアケディアが寒いと言っている所を見ると、相当である。


「そんなに寒い、のか?」


「う、うん。なんだか本当の寒さって言うよりも、身体の奥底と言うか心の奥底にまで伝わるような寒さと言うか、現実味じゃない寒さと言いますか……何と言いますか……」


 どこか要領の得ない、説明に困ったようにアケディアは言っていた。

 俺は錆人形(ラスティードール)という身体になってから温度を感じないために、アケディアが言っている事を感じる事は出来ない。

 だけれども、錆人形になる前の人間の知識を総動員して、俺は今この空間がどう言う空間なのかを理解していた。


 ――――ここが、予想以上に極寒の地である事を俺は理解した。


「しかしここが極寒の地というのはどう言う事だ?」


 ここには重要な物が置いてある場所ではあり、物の状態を良くするために外気よりも低めに設定するところは多く、宝剣などが置いてある部屋は外気よりも低めになるように冷却魔法を行っているらしい。

 けれどもやりすぎというのも貴重品の保管には向いておらず、極寒すぎるのもいけないと思うのだが。


「どうして……そこまで寒いんだろう? なにか理由があると思うのだが」


 がくがくぶるぶると止まる事なく震えているアケディアを連れて、俺はさらに奥へと進んで行く。

 奥へと進んで行くと共にさらに寒さは増しているみたいで、目で見えるくらい置いてある真っ白に凍えついているものが凍りついていた。

 これが異常な極寒であるのを証明するように置いてある資料の一部が凍りついてしまっており、それどころか穴がないはずなのに雪が降り積もっていた。


 明らかにこの雪には、他者の意思が感じられていた。


「なんなんだ、これは……魔法にしても異常なくらい寒すぎる」


 なにか怪しげな物を感じつつ、俺達はさらに奥へと進んで行く。


 そして進んだ先で俺は異様な光景を目にする。

 全てが真っ白に染まりきり、冷え切ったその場所に、1個の巨大な氷像が立っていた。その氷像の中にはダークエルフの、ラースが氷漬けでその場に置かれていた。

 そしてそれをしたであろう人物は、青いドレスを着てその場に立っていた。


「……どうやら次の来客者が来たようですね。けれどもこれ以上は、進ませる事は許しませんよ?」


 彼女は気高く優雅に、それでいて奇妙に生命力を感じさせる表情でうっすらと笑みをこぼしていた。

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