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サビ付き英雄譚【打ち切り】  作者: アッキ@瓶の蓋。
人形と怠惰の白き書
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なぜ騎士団長は志半ばにて死んだのか

新連載第1話です。とりあえず楽しんで貰えれば嬉しいので、ひどい感想とかは心の中にしまって、こちらがためになったり、楽しめる感想があると嬉しい限りです。

とりあえず今日は12時にもう1話投稿しておきます。

 昔々、この世界には2種類の者がおりました。

 光の神の加護を受ける光の者、ライトリアン。闇の神の加護を受ける闇の者、ダークリアン。

 光は闇を照らすように、闇は光を隠すように、それぞれの種族はお互いを失くそうとして何百年も争い続けていました。


 そんなダークリアンの中で一際濃い漆黒の闇が生まれ、その者はダークリアンの中でも強大な力を持ち、なおかつライトリアンを滅ぼしたいという想いも誰にも負けませんでした。かの者は自身の事を魔王と呼び、そしてどんどんとライトリアンの者達を滅ぼしていったのです。


 魔王がどんどんと勢力を伸ばす中で、魔王に対抗するようにして3人の強力な力を持つライトリアンが、彼らの希望として誕生しました。

 かの者達はそれぞれ燃えたぎるような火、吹きすさぶような風、流れるような水の強大な力を持ち、その者達はライトリアン達を深く愛していました。

 3人の強力な力を持つライトリアンは自らを賢者と名乗り、お互いに力を合わせて魔王を封じるための聖剣を作り、そしてその聖剣を使って魔王を封じたのでした。


 魔王を失ったダークリアンの勢力は徐々に失っていき、遂に闇の神そのものを封印出来るほどにまで推し進めましたが、3人の賢者は闇の神を封印しようとはせず、ただ闇の神の力を弱めるための神域と自らが崇める光の神を崇めるための神域を作るのを最後に、賢者達はそれ以降表立ってダークリアンを倒そうとはしなくなりました。


 闇の神の加護を十分に得られなくなったダークリアン勢は持っているその力が弱まっていき、そして彼らは以前と同じようには、ライトリアンと戦えないほど弱弱しくなっていきました。


 光の神の加護を受けていたライトリアン勢は3人の賢者を国王と崇めて火の国、風の国、水の国と3つの大国を作り、ダークリアン勢が来ないようにしました。

 3人の賢者達は自分達の力を魔力として石の中に込めて、魔石としてそれぞれの国において後世の人々のために残して、自らの死の後も人々のために役立つ道を取ったのでありました。


 いつしかライトリアン達は自らの事を人間、ダークリアン達の事を魔物や魔人と語り継がれるようになった中、そうやって長い時間が経過する中でライトリアンやダークリアンの名前が伝承の中へと消えていった中でも、人間達は魔物や魔人を憎む気持ちは忘れなかったのでした。

 そしてそれは勿論、魔物や魔人が人間達を恨む気持ちもまた同様でした。


 これはそんな聖剣が錆びてしまうほどの長い時間が経過した、風の国ヴォルテックシアの騎士団隊長の物語であります。



(ど、どうなってるんだ?)


 俺、ヴォルテックシアの騎士団隊長のジェラルド・カレッジは目の前で行われている光景が信じられずにいた。


 その日、俺は敬愛する我らが姫、マルティナ姫様のおこころを少しでも軽くするために、俺は騎士団の皆と共に森に現れた魔物の一隊を掃討に向かっていた。

 その魔物は錆人形(ラスティードール)と呼ばれる、動きが鈍い鉄の人形であり、風の国で民と王族を守るために日夜訓練して来た精鋭たる我々にとってはすぐに倒せるような魔物であり、何十体集まろうとも我らが敵ではなかった。

 順調に戦い続けて、そして最後の1体を俺の剣術でぶち殺して、無事に倒せたと言う事に俺はささやかな達成感と安堵と共に周りの皆の様子を確認しようとしたら、


 全てが燃える、まさしく地獄という言葉が相応しい現場が目に入って来た。


(なんだよ、これ! どうなってるんだよぉ!?)


 草木は青き炎と共にメラメラと燃えており、一緒に来た隊員達は焼け焦げて元が誰なのかが分からないくらいにまで身体のあちこちが折れ曲がって、さらになおかつ黒く焦げてしまっている。そして俺達が倒したラスティードール達も身体中に我々が付けたであろう大きな斬り跡とは別に、抉られるようにして作られただろう大穴がどのラスティードールにも開けられていた。

 そしてそんな地獄絵図の中、1人の男が青い炎をその身に纏って立っていた。


(……だれだ、あいつ?)


 全身を青い炎で纏っているせいか、そいつの顔も分からないが、それでも腰に差している剣が我々騎士団の隊員全員が持っている剣であったため、そいつは我が隊の誰かだと言う事は分かる。

 しかし、俺は少なくとも我が隊にこんな蒼炎を扱う奴が居るとは思ってないし、なにより俺が率いる隊の連中がそんな事をするとは思わないからだ。


 "お前は誰だ"


その言葉が俺の口から発せられたのか、それとも心の中で呟いた言葉なのか分からない。


 なにせ、俺はその時――――――その蒼炎を纏った男に胸を剣で貫かれていたからだ。


(かはっ……!)


【大丈夫だよ、隊長。後は全て俺に任せて、隊長は草葉の陰で俺の活躍でも眺めていていてくださいよ。

 嬉しいでしょ、楽しいでしょ?】


 俺はその言葉を全力で否定したかった。


 俺はこんな所で死にたくはない!

 俺は姫様を、あの純情可憐で、俺の事をまるで兄のように慕ってくれるマルティナ姫様のためにもこんなところで! こんな所で死ぬわけにはいかないんだ!


【……おっ?】


 俺は最後の力を振り絞り、俺の胸に刺さっているその剣先の刃を強く握りしめていた。

 そのまま力強く剣を握りしめ、そして……


【なんとぉ!?】


 俺は最後の力を振り絞って、刺さった刃を手の握力だけで握りつぶしていた。

 そしてそのまま、俺は蒼炎をまとった男に自らが持つ剣を胸へと刺す。


【しまった! 隊長が剣の鬼だって事、忘れてたなぁ~。あぁ、俺の計画がぁ……】


 そう、蒼炎の男が言うように俺は剣の鬼だ。

 騎士団の隊員はみんな大きな権力を持つ貴族とか、特別な力を持つ魔法使いとかが大勢居る中で、俺は貴族でもなく、魔法使いでもなく、ただ剣の腕だけで今の地位まで上り詰めていた。

 勿論、その中には皆の多大なる協力がある訳だが、それでも俺の誇る腕は剣術のみだ。


 他人を守るために障害を斬り伏せる。

 全ては守るべき民と、愛すべき王族とマルティナ姫様のために!


(死ぬなら、お前も道連れだ! バケモノ!)


【あらら~、か、かかっ、身体が上手く動かないやぁ。ちょっと血を流し過ぎちゃったかなぁ? 今回が良いタイミングだと思ったんだけども、ちょっとこれは……楽しくない……かな?】


 そうして蒼炎をまとった男は倒れ、俺はその倒れた男の姿を見て


(へっ、ざまぁみやがれ……この蒼炎のバケモノめ)


 姫様にこんなバケモノを向かわせる事が出来ない分、ホッとして意識を手放した。





(あれ……?)


 俺の目の前で、なんで俺がいる(・・・・)?


 見覚えのある傷、いつも触ってる鍛えられた身体つき、そして肩までにて雑に切られた黒髪。

 そんな見覚えのある、俺の身体。


 なんで俺が普通に歩いてる?


「いけない……もうこんな時間だ。姫様に今回の件についてご報告をせねば」


 俺の身体が、俺の口が独りでに喋り出して、俺が勝手に喋ってる?


「こんなにたくさんの犠牲者が出て残念だが、せめて俺だけは生き延びなくてはならない。それが生き残った俺のすべき事だ」


 おい、待てよ。なんで勝手に歩き出してんだ?


 俺はここだぞ。それなのになんで、身体が歩いて行く?


(戻って来い! 俺の身体!)


「ちげぇよ」


 と、言葉になってないはずの俺の声に、俺の身体は振り返って答えていた。


「これはもう、"俺"の身体だ」


 俺の身体はそう言って振り返り、そしてその手からは青い炎が出ていた。


(……!?)


「じゃあなぁ、《俺》よ。これはもう俺のものだ」


 そいつは、青い炎をまとった怪物は俺の身体を持っていく。


 か、返せ! そ、それは……俺の身体だ!


 俺の言葉は《俺》には届かず、そのままどこかに消えていってしまった。





「災難、でしたね」


 俺にそう話しかけてくるやつが現れたのは、それから三日後のことであった。

#9月3日。

容姿についての描写不足を指示されましたので、少し主人公の身体についての描写を追加しておきました。

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