寺火
僕は別段腐っているとは思わないが
周りから言わせていただいたならば
それは腐っているのだろう
しかしこの世には腐っているいないどうこう関わらず
そんなことは関係ないのではないだろうか
僕は久しぶりにこの田舎の寺に帰ってきた
実に三年四ヶ月ぶりの帰還であり
帰省であった
別段学校が休みになったわけではない
言うなればそれは意志による退学であり
また自主退学と呼んでも言い代物に思う
僕はその長すぎる階段を上りながらそんなことを考えていた
その上には寺がある
そして別段それは人生に失意して逃げるように寺に入ろうなんてものではなく
ただ単に実家に帰省したまでしすぎない既成事実なのである
僕は妙に重い荷物を肩に掛けてながら何とか百段以上ある
実際には百二十一段だがどうしてそうなったかは不明でありたぶんいい加減なものであろうが
その階段の最上階百二十一段目に到着したときだった
僕はそこで葬式を目撃した
その地域では未だに死んだ人を本堂に運んで弔いをする
それは別段僕がいた時代から変わらないことなのでそれこそ驚きも
桃の木も何もないのだが
その死んだ人間の名前を見たときに驚いた
「・・・・誰だ」と
この村はそして少なくとも檀家連中の人間は少ない
そしてその名前はみよじからして僕の読める・・知っている範疇のみよじ
ではなかった
「團拿蛙」・・・・果たしてそれはみよじだろうか
それとも変わった戒名だろうか・・・最近は自分でつけることもあると言うからあるのかも知れないが
・・・・・意味が分からない
意味が分からないことを探求するのが仏教ともいえるが
そしてそれ全ても何かに当てはめるのではなく
それはそれだと考えるらしいが
分からない
だいたいそのみよじの後に名前が付いているのだから・・・違うのだろう
僕はとりあえず檀家が集まっているかも知れえない本堂を避けて
自宅の庫裡に向かった
「ただいまー」かなり小声で言う
自宅の中で一番はじめに向かったのはお勝手であって
そこで家の人間に始めて、出会ったのだが
そこでおばあちゃんが饅頭を蒸かしていた
「ただいま」
「ああお帰り」
それはいつもと変わらないがしかし少しずつではあるが年を取っているような気がする
「あの聞きたいんだけどあの表にある名前って誰」
「ああ、最近ここに療養だって引っ越してきた「トンデンガエル」さんだよ、何でも北海道の室別かどっからしくて・・・・とにかくあんたは部屋に引っ込んでなさい」
「なんでよ」
「手伝いしたいんかい」
「・・・・」
かくしてお饅頭の形の悪いのを限定された上で
2、3個持って僕は自分の部屋に引き上げた
僕の兄弟は上と下に二人いる
そして小学校高学年をすぎても実質自分だけの部屋と言うものがなかった僕が今、小学生の頃使っていた子供部屋にいることになる
部屋には机が三つあってそれをどかして何とか今の空間を使っているが
それでも何となくあんときのまんまの机なので何ともいえない
それは結局ほかの部屋に移動を願わず僕の部屋にあるままだと言うことだった
僕はとりあえず腰を落ち着けて途中で汲んできた緑茶を飲みながら雑誌を眺めた
下からはお経が流れて僕は、始まったのかと思った
・・・そう言えば療養でこっちに来たと言っていたが
果たしてそれは療養できたその人なのだろうか
それとも連れ添ってきた人なのだろうか
・・・しかしそれにるいすることがここ三年間ぐらいいなかった僕の頭からはすっぽりと抜けていて、しるすべがないのいである
しかしすぐさま僕は雑誌を読んでいたがそのうちお饅頭がなくなって
もう少し失敬と思いながら下に降りようとしたときだった
「きゃ」
それは始めこそ空耳かと疑うものであった
少なくとも部屋のドン詰まりのこの部屋の前に誰かが行るとは思えなかったし、だいたいネズミなんかが真っ昼間からうろちょろしているとも考えにくい
それなら矢っ張り下から聞こえてきたものが聞こえたか
それともただの聞き間違い・・空耳の類だろう
僕は扉を閉めて何か布が落ちているのも母親が忘れていったのだと割り切って下に行く事が出来なかった
そこには白い着物にジーパンを履いた女の人がいた
その組み合わせにも驚くが
その最重要項目の驚きは
「美人で可愛い」かったことであろう
どうして寺の庫裏のこんなところにいるかも
どうしてそんな服の組み合わせをしているのかも
(白いジーンズなんて始めてみた)
そしてどうしてそんなに可愛いのかは、赤ずきんちゃんのおばあちゃんみたいだが、しかしやはり可愛かった
「・・・・・・」
僕は固まっていた
彼女はその挙動不審に怯えていたのか
それともこんな所にいたことを怯えているのか
またまた極度の人見知りなのか
それとも食うこともできない程おなかを減らしてふるえているのか
はたまたいきなり熱帯からここに来た寒さに・・・・・
僕は現実逃避から逃避することなく言ってしまった
いや別段悪い言葉ではなかったはずだ
「あの、大丈夫ですか」
「・・・うう、もう駄目です」
きっとこれは女性特有ではなく・・しかし言うなれば万人が共通して困る
トイレというものではないか・・もしかしたらこんな田舎のぽっちゃんトイレではできないと言う、そう言うことで庫裡に最近できたという
地元でも数件しかない水洗式のトイレを探しにここまで来て迷っているのではないか、僕は急いで、「さっ、さっさ」と手で下を示した
トイレがあるのはこの二階の下に位置する
僕は彼女を誘導するがどうもうずくまって立ち上がろうとしないどころか首を振っている
(・・・・・・・・よほど不味いのか)
僕は焦ったが背中を相手に向けるとしゃがみ込んだ
「違うんです」
彼女は叫んだ
実に良く通る良い声だった
「大丈夫です急げば」
自分はこんな時しかないと彼女の腕をつかんだ
「本当に違うんです」
「・・・何がですか」
しかしそうは言っても僕は暢気にそんな話をしている時間はないだろう
きっと彼女は悟られまいとしてきたけに振る舞っているはずだ
それをこんな場所で時間を過ぎ去らせてしまってはいけない
僕はそう言えばお丸なるものが玄関の奥底にしまってあるのを思い出して
急いで下に降りようとしたときだった
中学校で短距離十三秒代
しかしその本命はマラソンという僕の腕を彼女が掴んだ
僕はその勢いを殺されて危うく好きでもないしかし、感謝はしている二階の床にディープキスをしそうになって危うく避けた
避けたが代わりに耳をこすることになる
「・・・・・」
僕は自分の過ちを認めて今度は彼女を困らせないようにしっかり聞くことを自分の中で宣言して、ほとんどやらない正座をした
彼女はと言うといわゆるお姉さん座りという、マーメードみたいな座り方をしていた
「・・・・・・・・・あの実は」
「・・・・・・・・・・・・・」僕は聞くことに専念する
こういうものは答えを導き出すことに意味があるのではなく
聞いてあげることが重要だと聞いたことがある
すなわち聞くことは、難しいらしいと言うことだが
それならロボットではどうだろうかとは僕は言わない
どうも言わないのはどう言うことか鮮明には分からないからである
すなわち話半分に聞いていた罰でその意味はよく分からないしそれはすなわちどうでも良いことなのだろうか
しかし彼女は僕が何かと考えているうちにもはなすことはなく僕の顔を見たり見たり見たり
ついに僕は声を発した
「・・・何があったんです」
もしかしたら彼女は美術大学なんかの学生で
そんなよく分からない奇抜なものを呼く言えば着ているのかも知れないし
悪く言えば頭がおかしいのかも知れない
どちらにしても僕はそれはその人であり
ぼくがくちえをはさむべきではないと考えていたが実際に目の前に来るとそうも言ってられない
「・・・・成仏できないんです・・私」
成仏 それは仏教においてあの世に行くことであり
それは現世から離れることである
またこの世に未練があるものはこの世をさまようとも言う
・・・・・すなわち詰まりは極論から言えば、彼女はこの世に未練があるという事か
僕はない知識を一般常識やらテレビやらマンガやら落語やら何やらから引っ張り出してそう思った
「・・・・・未練があるんですか」
「はい・・」
「それは美大に行きながらも、先がない才能に病んで」
「違います・・あの」
「・・・・・はい」
「結婚して下さい」
そのとき私はあの世婚という存在をどこで知ったのか思い出した
それは今世で結ばれることの無かった人間の魂を沈めるため
その親類が哀れんで心だもの同士をあの世で夫婦にするという
ありがた迷惑なものであり
このどこでも恋愛が闊歩している時代
どこもかしこも親に決められたお見合いがない時代
それは実に時代錯覚だが
そう言う時代錯覚だからこそ寺や神社やそう言う風習が残っているのだろう
落語だってそうだ、そんな現代の話なんかほとんどない時代劇のようなものがいまでもはやっているのは・・・潰れて無くなっていないのは
どの時代の人間でも共感するものはあまり変わらない
時代がそれを望んでいても、別に昔のものが悪いわけではない
それはただはやりなのだ
もしかしたら未来的にはすべてお見合いに戻るかも知れない
もしかしたら人類はすべてロボットになっているかも知れない
どちらにしても良いことがあれば悪いことがある
妨げられるほど・・・・・とにかく僕はそれを見たのである
「・・・・あの世婚と言うものを知っていますか」
「嫌です」
「・・・嫌なんですか」
「ええ、みなさん陰気で後・・」
「あと何なんです」
「・・・特には」
「気になるではないですか・・・とそう言えばそれ以前に本当に幽霊なんですか」
僕の宗派ではそう言う存在は表向きには認めていないことになる
それは別段ガッチガチにそう言っているわけではなく
この世の中で認められていないものは認めるに値しない
つまり追求してそれが本当にあれば認めると言うものである
すなわち今日本になる仏教というものは形を変えているとしか思えない
本来の仏教はチベットなんかに残っているものが昔のままを残していると思われ
そうなってくるといよいよ何とも継ぐ気に離れないことになる
ちなみに兄は三年前性病でこの世を去っている
妹は早々と家を出て、海外留学中、二度と家に戻ってこない気でいる
「・・・はぁあ」私はため息を無関係に付いたことで
彼女の顔が明らかに怯えた
「・・・すいません、幽霊です」
「・・・しかしよく見たらジーパンはいているじゃないですか」
「・・・そういえあれても消えてないものは消えないですから」
「ジーパン好きなんですか」
「・・」彼女は頬を白いのに赤く染めて頷く
よほど好きなのかそれとも恥ずかしいと思ったのか
どちらにしても僕はそのとき考えなくてはいけないことに気が付く
このまま話を聞くだけにとどめるか
それとも彼女に打開策を教える・・と言うか探そうかと提案するか
・・・いやまてまて、最近というものは悪質な一般家庭を巻き込んだドッキリなるものがあるという、あれは見ている分には良いが実際に我が身に降りかかったらと思うと、僕はとても笑えないなとあまり見ないようにしている、ちなみに録画はしている
「・・・・・・・」
彼女は黙ったままだ
しかしなぜ家僕の顔を見ている
「・・・・僕の名前は、笹木 藤雄と言います」
「・・・すいません名乗り遅れました、わたし團掌蛙 湯来雨とも押します、末永く・・」
「ちょっと待って」
「・・・・・何か」
「いやあの、どういう」
「・・・・・・・結婚を」
「・・・・・・無理です」
「でもここはお寺ですし、成仏させてくれるんじゃ」
「・・・・無理です坊主でもないし」
「でもお願いします、いつまでも待ってますから」
「いやそんな告白する放課後の女子生徒と男子というよりかは
刑務所に行く愛する人に対する何かに思えるのだが」
僕はそのお寺に継ぐというものに対してどうも分からない
と言うよりかは仏教そのものが分からない
分からないものと言うより川分からないことが分かるというような学問おような
しかしそれでは本来の、そのままで見る
と言うものとはかけ離れているような気がするが
いつも僕がひねくれた精神論議をするときに出す
「かけ離れればかけ離れるほどそれは確信に近づく」
みたいなものを自分自身に出されてしましそうだが
結局というもの人間の本心は一つしかなく
それから離れるから人間というものはつらいのだ
正論が正論とは限らないと言う所以は
人間の本心に対してそれはそぐわない
拒絶反応を起こす人間が作り出したもの
自然なものではないと言うことである
この世には理屈では通らないことがある
しかし話は変わるが世の中で昔悟ったと言われるもので
欲に生きる、喰いたいものを食い、抱きたいときの女を抱き、眠りたいときに眠る、とは少し違う気がする
・・・・よくというもの事態存在するのだろうか
この世にはすべてが人間が決めたことの上にルールをつくってはいるが
しかしそれは津波の前に一本の藁を置くほどに危ういものである
しょせん精神世界というものを信じるのは
それは人間外の物を捉えた人間の言葉なのであろう
すなわち僕は覚えることも正座も・・・とにかいう、あらゆる物が意味が分からない、正直そんなことよりも僕は昼寝をしたい
型にはめることによりできるものよりかは
自分でその答えに近づく生き方をさせた方がいいだろう
出来上がった物に似せるなど愚の骨頂、その人間一人一人が最高に輝ける物があり、それは絶対なのだ
しかしそれを型に合わせることにより壊すなど本当に馬鹿げている
「あの大丈夫ですか」
「・・・・・・・」
「・・・・・・すいません」
「どうしたんですか、急に謝って」
「いや私のこと見えなくなったのかと思って」
「見えなくなったら謝るんですか」
「・・・・・」
「何で僕を見るんですか」
「何で私成仏できないんでしょう」
「あの聞きたかったんですが」
「はい」
「あなたは今日の葬式でお亡くなりになった」
「はいそうです」
「・・・・・結論から言ってこの寺に悪霊を退散させるような類の物はありません」
「・・・別にいいんですよ」
すると彼女はまた僕を見た
それだけですべて伝わるだろうと言いそうな行為である
「・・・すいません」
「なに」
「君のことは正直タイプです」
僕はそう言いそうになった
しかしそんなことを言ったら彼女が飛びついてくるのは目に見えていた
いやそれはなぜか確信があった、それは良くは分からないが彼女が初めての経験であったがそうなのだろうと思った
だからこそいい加減なことはいえない
しかしそれは好かれるであろうと言う絶対的な安心から今日でなくてもと言う余裕なのだとしたら自分は馬鹿なのだろうか
しかしそれでもそれを望むのならそれはそれであろう
自分は自分だ
「しかし何ですいったいどうやって死んだんですか」
「・・・」
彼女は少し目をそらしたが
「恋煩い」と言った
恋煩い、それはどうだろう、今現在
パソコンを開けば理想以上の何かにあえてしまう時代
そんな不確定な物を煩うなど
化石程度に生きてる存在がない物に思われ
強いて言うなれば久々聞かない落語の若旦那と言うところが、それにようやく当たりそうだが
しかし今現在そんな病はたして存在するのであろうか
心も精神も感情もその他諸々が汚れっちまった私には到底想像出来る
範囲を超えていた
「・・・・よっぽど美男子だったんでしょうねえ」
僕は改めて恥ずかしげも無く無く、彼女を口実紛いに見た
・・・・・・可愛い
それしか出ない
「・・・・・」
彼女はそこで私から目をそらすとこちらに近づいてきてなんと顔を近づけてきた
「・・・・・・・・・・・・・や、・・やめましょう」
僕はとんでもないことを言った
それによって彼女との距離が近づくどころか遠くなるのは千見の如く当然に思われ
僕は後悔と同時に彼女のためにこれで良いのだと勝手に、そう血の涙を流しながら思った
もしかしたらそれで彼女は僕の前から消えてしまう確率がある
彼女はそう言う思いこみの激しい
と言うか、何も考えないわけではないだろうが、自分よりも
そう言われたから、と引き下がってしまうようなおかしさがあるように思った
「・・・・・・・ごめん、でもあなたのことを夢で見たから」
「・・・・・・・・・・」
僕はそのとき恐怖を感じていた
僕の兄はすなわち柳雄は僕の双子の兄である
一卵双生児である
瓜二つである
そんな人間であるが性格は逆行していたと言っても良い
自分は正直なところ目立つわけでもなく普通のような普通な生き方を良しというわけではないが、そう言う感じに生きてきたのに対して
やつは激しく暗かった
それがいることにより周りに暗黒部室がまき散らされているのではないかと疑うほどに
しかしそんな暗黒時代を十八年間過ごした兄がある日突然外国に旅立った
それが果たしてどの様なことなのか未だに不明であるが
しかしそう言いだしたその日から突然それはミラクルに変身したと言っても良い
ものすごーーーく明るい人間になったのだ
それこそが異国帰りの旅人のように
・・・知らないけど・・・とにかくその男が帰ってきたのは
そんな底抜けに明るくなった物がさらに底抜けに明るくなって帰ってきたかというとそう言うこともなく
以前よりも増して暗く
いやくらい以前に死んで帰ってきた
正直似合い過ぎる物があった
あれだけ暗かったことによって死んだからこそ晴れ晴れと明るくなったようにさえ思える
しかし暗いことには代わりはないだろう
死んだのだから・・・・しかも性病で
あっちで何があったのかは不明であった
しかし地元の警察によると何でもものすごい人気歌手だったという
ものすごく疑わしい
しかし今現在問題なのはそんな人間と瓜二つの兄を含めて
この人はどちらを好きになったのかと言うことだった
正直僕と兄を比べることは端から見たら難しい
それは先生に始まり親に終わるくらいな物で
僕たちでさえ、自分がどちらかでなければ見間違う自信がある
・・・とは思えないが、しかし、強いて言うなれば僕のおへそはでべそであり、また兄のへそは引っ込んでいた
これは看護婦のせいなのか天性的な物なのかは知らないが
とにかくプールに時間以外は、端から比べることは実質が意見だけなら無理だ、写真なら100パー無理だ、それは実際にあったことによって始めてその暗さで分かるのである
「・・・・・ちなみにどんな夢だっただの」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・」
「いえないようなこと」
頷く彼女
「じゃあ死んだのはそのせい」
頷く彼女、しかし「っあ、でも、元々病気はしてたの、でもそのせいで」
それは果たして彼女は僕にその責任を与えて有利に進めようとしているのだろうか
しかし僕としては彼女が死んでしまった残念さと、そしてそのまだ撲に決定権があるようなその迫り方が好きだった
「ここにはなんで来たの」
「・・・・新聞で、そっくりな双子って言う物を見て「あっ、これだって」思って直ぐ」
「・・・それいつのこと」
「三ヶ月前」
「・・・・・・何ですぐ僕に知らせてくれなかったの命に関わることでしょ」
「うんうん、その掲載された物がかなり古くてやっと三日前にここに来れたんだよ」
「・・・・はぁ、」
僕はわざと黙った、このなんでもないような雰囲気を味わいたくて
それこそ全神経を集中して彼女という存在を認識したかった
しかしそれに僕はつらさなんて物もまた苦しさもなかった
それが普通のことに思えた
彼女はどうなのだろうか
ただ撲の方を見たりした
「所で何時結婚を」
僕は正直なところ結婚して彼女に殺されても正直それでもいい気がした
しかしあの世で幽霊が殺人を犯して良いという法律はあるのだろうか
今現実に自称幽霊がいるがしかしそう言うことはそう言う物が存在しても不思議ではない
「こんな時に悪いんだけど」
彼女は目を瞑った、本当に悪いんだけど
「地獄ってあるのかな」
「さあ」
彼女はそう首を傾げた
「君は本当に幽霊なの」
「うん」
彼女は頷く
「それじゃあ死んでからのこと詳しくはなして」
「・・・・気が付いたら空を漂っていてあなたを見つけたからここまで」
「・・・・それ以外は」
「・・・・・・」
彼女は黙った
「分からない」
しばらくしてそう言ったきり俯いてしまった
「・・・・・・・・・・・どうする一緒に探そうか」
僕は言った
「その前に結婚」
「ちなみに病名はなんだったの」
「エイズ」
「・・・・・・・・・・」
「どうして」
「輸血感染しちゃったの」
「・・・・元々は」
「白血病に骨壊崩壊症・・・言いたくないけど」
彼女は俯くと下に手をかざした
「入れ歯なんだ」
「・・・・・所で君は出身はどこだい」
「栃木」
「病院は」
「東京」
「ちなみに好きになって付き合った数は」
「ゲームの数以外なら0」
「・・・・・・・最後に聞くけど・・・僕が好きなのそれとも兄」
「・・・・・・」
彼女はビシッとあらぬ方向をうつむきながら僕に人差し指を出した
突き刺した
・・別段本当に当たってはないが
「その証拠は」
「・・・知らなきゃ駄目」
「うん」
全く俺は何をしているのだろう
「脱いで」
「」
僕は服を脱いだ
「ストッーープ」
彼女は蚊の鳴くような声でそう言った
もしかしたら端から見れば、独身の二十歳の馬鹿が一人へ屋でストリップしている異様な風景かもしれない
何せ僕は幽霊に言われるがままなのだから
誰も相手を見えないのかもしれない
「・・・・ほら」
彼女は僕の半分
真ん中
すなわちでべそを指さしてそう言った
「・・・・・」
果たして彼女はどんな夢を見たのだろう
そのとき僕はこの世に
幽霊とそして、予知夢に類する何かの存在を感じたことになる
ちなみに彼女が幽霊だと感じるのはいくら彼女が儚いような存在に思えたからではなく、そう思ったからだ、これは人でもまた何者でもないと
もしかしたら幽霊でもないかもしれない
しかしそれは人だったのだろう
「・・・・所で好きな物ってなんなんですか」
僕は幽霊に一応のお茶を出して聞く
「・・・・ホワイトべーリーのジュース」
恐ろしいことを言う
何を言っているのか分からなかったが、唯一ジュースという単語は聞き取ることはできたが
「・・・お茶大丈夫」
「うん、おいしい」
彼女はそう言ってお茶を飲んでそう言った
「・・・・・・所でさ」
「うん」
「・・・・どんな夢だったの」
「聞きたい」
「うん だけど話したくないって言うならば」
「・・・・・ただ私が助けられる夢なの」
「・・」
「私がビーチ手泳いでいたら突然持病の呼吸困難になって」
「良くそれで泳いだね」とは言えなかった
「そしたら沈みかける私を陸まで導いてくれて
それであなたが助けてくれたの」
「・・・・・」
僕は正直半信半疑だ
怪談話は好きすぎるが、しかしそう言うオカルトチックな物は
・・・・君は今、怪談とオカルトの違いは何だと思っただろう
それは僕の定義だ
「それでその人がカッコよかったんだ」
僕は助けていないので他人行儀にそんなことを言った
「うんうん、そういんじゃなくてただ」
「・・・・なんなの」
「うん、カッコヨかったんだ」
「同じじゃん」
彼女は笑った
普段そんな会話が聞こえてきたら惨めな僕はすぐさま塩をかけられる前にと退散するのであるが
今の僕はもし、この女の言葉にいちゃモンを付ける奴が現れたら張り合ってしまうのかもしれなかった、不思議とそう思った
「あーーー・ああーーー・あ・あ」
僕は下でお経が終盤を迎えているのを知る
僕はこれが始めあえいでいるような発音になってしまい赤面する日々を送ったことがあるが、結局は思いっきりと言い加減がコツなような気がした
そうそこら変も実に微妙に僕の心を猜疑心が立ちこめた
一生懸命に捧げ物としての礼儀を尽くすのではなく
心のある物をやるべきであり
失敗をやめさせるのはなぜか
いけないと言うことはどう言うことか
「それじゃああ、別れのきすして」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕は永遠の時の中でこれが世に言う金縛りかと思った
そして彼女は去っていった
それ以来彼女のかの字も見てはいない
そう言えば先週僕の所というか家族宛に一通の手紙が届いた
それは彼女とそして兄が二人肩を組んで笑っている写真であり
そしてその風景は何処かのバーのようであった