DOS子ちゃんとPINGくん
この物語はマニア向け童話となっております。タイトルを見て意味が分からない方には、最後まで意味が分からない物語である可能性が高いです。
読む前に、あらすじおよびタグを確認されることをお勧めします。
もう一度繰り返しますが、これはマニア向け童話です。どうぞご注意下さい。
むかしむかし、DOS子ちゃんという働き者の娘がおりました。
けれど彼女は一度にひとつのことしか出来ず、正しい言葉を使わなければうまく仕事が出来ないため、周囲の人は「面倒だなあ、でもこの子しか仕事の出来る子はいないしな」とどこかあきらめ気味に彼女と付き合ってきました。
そんなある日、DOS子ちゃんに弟が出来ました。
名前をWIN太郎くんといいます。WIN太郎くんはDOS子ちゃんの何倍もの仕事をこなし、同時にいくつものことも出来る賢い子でした。たまにグズったり癇癪を起こすこともありますが、それもご愛嬌です。
最初はDOS子ちゃんとの扱いの違いに戸惑っていた周囲の人も、気がつけばすっかりWIN太郎くんのとりこになりました。
周囲の人は、WIN太郎くんばかりと付き合うようになり、次第にDOS子ちゃんのことを忘れていきました。華やかなWIN太郎くんとは違い白黒の多いDOS子ちゃんは、黒い画面に白い■を点滅させながら、仕事が来るのをずっと待っていました。
そんなある日、WIN太郎くんの家にひっそりと間借りしていたDOS子ちゃんの部屋の扉を叩く人が現れました。誰だろうかと思ったら、扉の向こうから「こんにちは、僕はPINGです」と声が聞こえてくるではありませんか。
そして扉の向こうの彼はこう言いました。
「あなたの力を貸してください」
PINGくんは続けて言いました。
「僕の仕事は、人探しです。いろんな人がいるかどうか探すんです。その仕事には、あなたの力が必要です」
DOS子ちゃんは答えます。
「ええ、私でよければ喜んで」
そして、DOS子ちゃんはPINGくんを打ち出しました。
「あなたはいますか? そこにいますか?」
そんな言葉とともに、PINGくんは世界中を飛び回り人を探します。
すると答えが返ってきます。
「いますよ、ここにいます」
また違う人を探すために、DOS子ちゃんはPINGくんを打ち出しました。
「あなたはいますか? そこにいますか?」
「いますよ、見つけてくれてありがとう!」
たまにはいない人もいました。それでもめげずに、DOS子ちゃんはPINGくんを打ち出しました。コウモリの超音波のように、潜水艦のソナーのように、目に見えない誰かを探すために彼女は何度もPINGくんと仕事をしました。
「PINGくん、私この仕事好きよ。見知らぬ遠くの人と話が出来るのが、とても楽しいの」
「それはよかった、DOS子ちゃん。僕は君とずっとこの仕事をしていきたいんだけど、一緒にいさせてくれるかな?」
「ええ、喜んで」
DOS子ちゃんは嬉しそうに微笑みました。
こうしてDOS子ちゃんは、弟のWIN太郎くんの家でPINGくんと慎ましやかに暮らしました。
PINGくんが部屋に帰ってくる時は、扉をノックして「DOS子ちゃん、あなたはそこにいますか?」と問いかけ、彼女もまた「いますよ、私を見つけてくれてありがとう」と答えるようになりました。
『終』
黒い画面でPINGを打ち出したことのある方は、二人の行く末をどうぞ温かく見守ってあげてくださいませ。