低学年組シリーズ 皐月×祐介×藤吾
この学校は校舎は小さいがグラウンドだけは無駄に広い。かといって遊具がたくさんあるわけじゃない。ガランとしただだっ広い平地が広がっているだけだ。
皐月、祐介、藤吾はこのグラウンドで放課後を過ごすことが毎日の日課であった。
「皐月〜ほいパス」
祐介が軽くボールを蹴って渡す
「はい、次、藤吾いきますよ」
祐介からボールをもらった皐月が今度は藤吾へ
「ん」
しかし、藤吾がボールの上に足をおいてボール回しを止めてしまった。なにか考えるような仕草で固まったまま動かない。
「藤吾の奴どうしたんだ?」
「さぁ、でも藤吾が考え事なんて珍しいですね」
2人はお互いに近寄り藤吾の様子を見守る。しばらくすると藤吾が顔を上げ走り近寄ってきた。
「なぁ、お前らさ寂しいと思わねぇ?」
「急にどうしたんですか?」
藤吾の表情は真剣だ。
「サッカーも出来ねぇほど人がいねーんだぜ?なんていうか、その、俺はサッカーがしてぇ…こんなボールあそびじゃなくて」
藤吾がいうと祐介が顔を伏せる。とすぐにお腹を抑えて爆笑し始めた。
「はははッ、なんだそんなコト」
「祐介?」
真剣に考えてることを笑われ藤吾が少し顔をしかめる。皐月は祐介が考えていることを察してクスッと笑った。
「俺は別に寂しくねーよ?そりゃ同年代がこんだけしかいねーとサッカーひとつまともに出来ねーよな、でも、そんなコトより俺はお前らとボール遊びしてる方が楽しいと思うんだ。なにより、こんだけしかいねーからこんなに仲良くなれただろう?」
「そうですね、祐介に同意です」
ボールを蹴りあげながらの祐介の言葉に皐月がにっこり微笑みながら同意する。
「、、、そっか。そーだよな…そーだよな!」
曇っていた藤吾の顔が一気に晴れる。単純だけど深い理解。
3人はこの日より絆を深めた