高学年組シリーズ
人口およそ100人ほどの小さな島。その多くは高齢者でしめられていて成人に満たない子供にいたっては全体の20%もない。学校は小中高と混ざっていて皆家族同然のようにすごしていた。これはそんな彼らが産みだす深い友情の物語。
柔らかい風が教室のカーテンを揺らす。
『膨らんでは吸い込まれていくように動くカーテンはまるで生き物のようだ』
と17歳の少年、高山弘樹は心の中で呟く。担任のマキコ先生の授業をする声はこの風のように柔らかく耳に心地いい。
「弘樹弘樹」
後ろの席の笹倉隼人が声をかければ弘樹はユックリと振り返る。彼もまた弘樹と同じ17歳だ。この学校では1クラスしかないので小学生と中学生の低学年組と高校生の高学年組が同じ教室で授業を受ける。そのため低学年組の授業の時は高学年組が暇をするのだ。
「みろよ、また翔の奴寝てるぜ」
隼人の視線の先には同じ高学年組の浦部翔が頬杖をついて堂々と居眠りをしていた。1つ年齢が下の16歳である翔を隼人は暇さえあればいつも構っていた。
「いつものことだろ?放っとけば?」
会話を聞いていたのか今度は弘樹の隣の席にいた栄口涼太が冷めた口調で声をかけてくる。クールでポーカーフェイスな涼太は一見冷めているように見えるが誰よりも友達思いだという事はみんなが知っていた。だから弘樹も隼人も昔から涼太と親友でいる。
「そうだよ、ハヤ君」
涼太に同調したのは翔の親友である鈴木孝介だ。チャラチャラしている翔とはまったく違うタイプで物腰柔らかい孝介はクラス一番のしっかりものだった。
この5人が高学年組であり仲のいいグループだ。
キーンコーンカーンコーン
授業終了を知らせるチャイムが鳴り響くとクラス委員長の弘樹はユックリ立ち上がる。ガタガタ音を立てバラバラに席を立つのを見れば全員が立ったのを確認して弘樹は号令をかけた。
「起立気をつけ礼」
「「ありがとうございましたー」」
弘樹の号令で挨拶を済ませると皆思い思いに席を離れていく。
「おい、翔!また寝てただろー?」
隼人がベシベシと翔の頭を叩けば翔はまだ眠そうに目を瞬かせながら隼人の手を払った。
「ハヤ君だって居眠りするじゃんか」
言い返す翔に反省の色は全く見られない。翔の言葉に孝介がクスッと笑う。
「確かにハヤ君も寝てるね」
クスクスと笑う孝介に翔はウンウンと偉そうに頷いている。
「コイツら生意気だー!」
隼人が弘樹と涼太に泣きつくようにすると弘樹は笑いながらもヨシヨシと隼人の頭を撫でて涼太はまるで聞いていない。