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陰気童話  作者: 古風
7/10

犠牲と結果

 そのせかいは、ゆるやかに、あれはてていました。

 人はたくさんいますが、ほかの生きものは、どんどん、すがたをけしていました。

 よくよく、じしんがおきて、雨がたくさん、ふるようになりました。


 けれども、みんな、いつものことだと、気にしません。

 そうして、すこしずつ、すこしずつ、せかいは、おわりにちかづいていました。



「きみは、ほかの人と、ちがうんだ。

 えらばれた、とくべつな人なんだ」


 しょうねんは、せかいにせまっている、きけんをしりました。

 せかいのひみつを、しりました。


「きみは、このせかいが、おかしくなっていることを、しっている」


 まじめなこえに、そうだと、しょうねんは、くびをたてにふります。

 しょうねんに、こえをかけているのは、くろいかみのけに、くろい目、くろいふくに、くろいくつの、けんじゃでした。

 けんじゃは、まじめなかおをして、くもった空に、目をむけます。


「きみは、かみさまに、えらばれた。

 だから、しかくがある。

 ここでぎしきをして、みんなの、くるしい気もちを、とりこむんだ」


 しょうねんと、けんじゃは、とうのてっぺんにいました。

 ずっとむかしの人たちが、かみさまとお話をするために、いろんなぎしきをしていた、とうでした。

 かぜがふいて、しょうねんと、けんじゃのふくが、はためきます。


「そうして、さいごに、ここから、とびおりるんだ。

 せかい中のくるしい気もちを、とりこんだ、きみ。

 きみが、そのおもいといっしょに、いなくなる。

 それで、このくにの、いいや、このせかいに生きている、みんなを、たすけることができるんだ!」


 けんじゃは力づよくいい、しょうねんへ、ぎしきにつかう、どうぐをわたしました。

 けんじゃは、どこかがいたいみたいで、けがでもしたような、かおをしました。


「かなしいけれど、これはきみにしか、できないことなんだ」


 けんじゃは、とてもくるしそうです。

 しょうねんから、目をそらします。


「ぎしきをしなければ、このせかいに、ひどいことがおきてしまう。

 だから、このぎしきを、やってほしい」


 けんじゃは、ふるえごえでつぶやいて、立ちさってしまいました。


「みんなを、たすけることができるのは、ぼくだけ」


 まいにち、なんかおかしいな、とおもいながら、生きていたしょうねん。

 けんじゃは、そんなしょうねんに気づいて、せかいのひみつを、はなしていたのです。


 しかし、なんとおそろしいことでしょう。

 このままだと、せかいが、たいへんな目に、あってしまうというのです。

 そして、せかいを、すくうことができるのは、いま、ここにいる、しょうねんだけなのです。


「ぼくだけが、みんなをたすけることが、できるんだ」


 このとうから、はなれたところでは、みんながわらって、たのしく、くらしています。


「ぼくだけが、みんなをたすけることが、できるんだ!」

 

 しょうねんは、せかいの、ききをしらない人たちのことを、つよく、おもいます。

 みんなのえがおを、まもらなくちゃと、つよく、つよくおもいました。



 それから、なんにちかした、よるのことでした。

 ひっそりとたつ、とうのおくじょうから、しょうねんが、とびおりました。

 せかい中のくるしい気もちを、とりこんだ、しょうねんが、とびおりました。



 そうして、せかいは、へいわになりましたとさ。




「めでたし、めでたし」


 じめんに、人がたおれていました。

 あの、しょうねんでした。


「なあんてな!」


 しょうねんのふくに、あかい、しみがひろがっていきます。

 しみは、ひろがりつづけて、土にまで。


 しょうねんの、あたまは、へこんでいました。

 しょうねんの、うっすらあいた目が、うごくことは、もう、ありません。

 しょうねんは、いきも、していませんでした。


 たかいとうから、とびおりた、しょうねんは、しんでいました。


「あっはっは!」


 かぜがふいて、すながとんできます。

 もう、にどとうごくことがない、しょうねんに、すなが、つもっていきます。


「ほんとうに、とびおりた!」


 人を、こばかにしたようなこえが、空からきこえてきました。


「おもいつきを、しんじて?

 しんじて、とびおりた!」


 しんでしまった、しょうねんのよこに、人が、やってきました。

 くろいくつに、くろいふく、くろい目に、くろいかみの毛の人でした。


 それはなんと、せかいのきけんをおしえてくれた、けんじゃです。


「ばかか? ばかだ!

 ただのにんげんが、一人で、せかいをすくえるわけがない!」


 あっはっは! 

 けんじゃは、こころのそこから、わらっていました。


 おや? けんじゃのせなかから、なんと、白いはねが、生えてくるではありませんか。

 あたまのてっぺんに、わっかがあって、きらきらと、ひかっています。


「きみは、へいぼんなにんげんだ!

 てんしさまのひまつぶしを、しんじてとびおりた、ばかなにんげんだ!」


 ああ、なんということでしょう! 

 けんじゃは、てんしだったのです。


「とってもたのしくて、ばかばかしい、げきだったよ!

 おもしろすぎて、わらいをこらえるのが、たいへんだ!」


 白いはねをうごかして、てんしは、じめんをけりあげました。


 ぜんしんがくろい、てんしの、きれいなこえが。

 だれもいない、はらっぱに、ひびきます。


「そう、きみのぎせいは、なあんのいみもない!

 きょうも、あしたも、あさっても!

 なあんにもかわらず、せかいはつづくのさ!」

 

 ゆうがに空をとびながら、てんしはわらいました。


「あっはっは!

 なあんのいみもない、ぎしきをして、たかいとうから、とびおりて。

 それが、むいみだった、かんそうは?

 ああ!

 きみはもう、しゃべることも、できない!」

 

 てんしは、ずっとずうっと、わらいつづけました。

 あかい、しみがひろがったじめんに、まっ白なはねが、いくつも、いくつも、おちてきました。


 やがて、よがあけ。

 きれいな青空に、あさをしらせる、かねのおとが、なりひびいたのでした。



 おしまい。









 お久しぶりの、一読有難うございました、です。

 色々ひねくれ過ぎて、どうしようもなくなった結果が、これでした。

 後味の悪さを感じていただければ、幸いです。


 …趣味が悪い?


 それは、気のせいで、ございます。

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