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陰気童話  作者: 古風
10/10

『とびら』と『わたし』

 『わたし』の目のまえに、『とびら』がありました。


 木でできた、『わたし』より、すこし大きい『とびら』です。

 こげちゃいろで、ところどころ、くろいろの『とびら』です。


 『わたし』は、『とびら』の、とっ手をつかんで、右にまわしました。

 かぎは、かかっていなかったので、『とびら』は、すんなりと、ひらきました。


 『わたし』は、さきに、すすみます。

 すると、『わたし』の目のまえに、『とびら』がありました。


 石でできた、おもそうな『とびら』です。

 まん中だけ、くろいろで、へこんでて、ざらざらした、『とびら』です。


 『わたし』は、へこんだところに手をおいて、おしました。

 『とびら』は、おもくて、なかなか、ひらきません。それでも、ゆっくりゆっくり、ひらいていきます。


 そして、『わたし』の目のまえに、あったのは、ふすま、でした。

 白一しょくで、きれいな、『とびら』でした。


 ふと、『わたし』は、きづきます。

 いつから、『わたし』は、ここにいるのでしょうか。


 わかりません。


 つぎの『とびら』は、上はんぶんがガラスで、下はんぶんが木でできた『とびら』でした。

 その『とびら』の、とっ手をつかんで、おして、ひらきます。


 どうして『わたし』は『とびら』を、ひらいて、くぐりつづけているのでしょうか。


 わかりません。


 左がわと右がわに、わかれている『とびら』が、ありました。

 りょう手で『とびら』をおして、ひらきます。


 『とびら』の、さきには、『とびら』しか、ないのでしょうか。


 わかりません。


 『わたし』は、いったい、だれなのでしょうか。

 『わたし』は、いくつ、なのでしょうか。

 『わたし』は、どんなかおを、しているのでしょうか。


 ぜんぶ、わかりません。


 ただただ、目のまえにある『とびら』をひらいて、さきに、すすんでいくこと。


 それだけは、わかっています。


 『わたし』の右がわ、や、左がわ。

 いちども、ふりかえって、見たこともない、うしろにも。


 なにがあるのか、わかりません。


 かんがえごとをしながら、『わたし』は、びょう、がうってある、『とびら』を、ひらきます。


 ここの、さきには、ずっとずっと、さきには、なにか、あるのかもしれません。なにも、ないのかもしれません。

 きょう、という、じかん、があるのかも、わかりません。


 にぶく、かがやく、ぎんいろの『とびら』を、ひらきます。


 『とびら』に、のばされる手は、こんなにも、しわだらけ、だったでしょうか?

 『とびら』を、ひらくのに、ここまで力が、ひつよう、だったでしょうか?

 『とびら』の、さきにある『とびら』は、こんなにも、ちかくにあったものでしょうか?


 それらは、そうであった、のかもしれませんし、そうでは、なかったのかもしれません。



 いくつの『とびら』を、ひらいたのでしょうか。


 わかりません。


 『とびら』が、とじた、おとを、きいた、おぼえはあったでしょうか。


 それも、わかりません。


 わかることは、一つだけ。わからないことは、たくさん。

 ですが、きにすることは、ありません。


 『わたし』は、『とびら』を、ひらく。


 『とびら』を、ひらく。



 それだけなのです。



 そう、それだけなのですから。

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