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陰気童話  作者: 古風
1/10

少年と湖

 小さな村で 男の子が三人の子どもにかこまれていました。


「へへん! そんなことを言って 本当はこわいんだろう!」

「やーい やーい! よわむし よわむし!」

「くやしかったら みずうみまで行ってこい!」


 三人にばかにされた男の子は かおをまっ赤にして言いかえします。


「ぼくをばかにするな! 行ってきてやるんだから!」


 けれど 三人の子どもはばかにしたように さらに言いかえします。


「なら みずうみにある 花をとってこいよ!」

「よわむしには むりだろうけどな!」

「あっはっはっ!」

「ちくしょう!」


 男の子はおこって そのまま森のほうへと はしります。

 その小さなせなかに 子どもたちのわらい声がつきささります。


「こうなったら ぜったいにとってきてやる!」


 もりを ずんずん ずんずん進みます。

 大人たちは「ちかづいてはいけない」と言っていましたが 男の子たちはたびたび もりに入ってあそんでいました。

 もりのおくまでくると そこには大きなみずうみが 広がっていました。

 青い水が おだやかに たゆたっています。


「花をもってかえらないと」


 男の子は みずうみのちかくに生えていた赤い花を 一りんとりました。


「へん! ぼくにだって できるんだ!」


 小さなぼうけんに 男の子はむねをはります。


「おや? あの小さな小やはなんだろう?」


 それは 小さいけれど きれいなまる太小やでした。


「あら かわいいおきゃくさまね」


 そこにいたのは それはとてもきれいな女の人。


「あのみずうみには とってもきれいな石がおちているの ねえ いっしょに見ましょう」


 女の人は 男の子のてをとって みずうみへ。


「花だけじゃなくて みずうみのきれいな石ももってくれば あいつらを見かえしてやれるぞ!」


 男の子は はずむ心をおさえて にこにことほほえむ 女の人についていきます。


「ほおら こっちへ来てごらん」


 男の子がみずうみに みをのりだします。

 女の人はわらって 小さなからだをつきおとします。


「わっ」


 どぼん!


 大きなおとを立てて 男の子のからだはみずうみへ おちていきました。


「ずっと ずっと さえずってちょうだい」


 女の人は それはそれは とてもきれいなこえでわらいました。

 水はかまわず もがく男の子の口に はなに とびこんできます。


「たすけて! たすけて!」


 からだが水の中にあるのに こえを出すことはできます。

 おぼれている男の子のこえは 水の中でしかきこえません。


「だれか たすけて! くるしいよ!」


 男の子のこえは だれにもとどきません。


 その村には こわいこわい言いつたえがありました。


「いいかい みずうみにちかづいてはいけないよ。

 そこには 小さな小やがあって 中にとてもきれいな女の人がすんでいる。

 けれども その女の人は まほうをつかう まじょなんだ。

 まじょは 人げんを見かけたら のろいをかけてしまう。

 のろいは ずっとずっと みずうみの中でしか生きていけない からだにしてしまう」


 きょうも みずうみのそこで生きつづける男の子は たすけをもとめます。

 その小さなこえは だれにもとどきません。

 出だしの文章がおかしいと感じた方もいるとは思いますが、園児向けの絵本(参考文献)ではこのような入り方をしたものが多かったので、あえてこうなっています。

 なんの盛り上がりもなく、あっけなく、何も成さず終わる。

 そんな童話を目指して、思いついたら随時更新していきたいと思います。

 …たまには、こんな童話があっても良いと思うのです。

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