不審と思イ込ミ
カラオケの後、彩音ちゃんは自分の部屋で考え事をしていた。
その考え事とは、もちろん夢樹将也君との関係について。
――なぜ、最近の将也君は笑わないのか?
――なぜ、将也君は、この間のカラオケの誘いに乗らなかったのか?
あの日は本来、将也君の塾がない曜日。
だから、彩音ちゃんは不審に思っていた。 将也君を・・・。
だが、悩んでいても何の解決にもならない・・・。
そう思った彩音ちゃんは、将也君にメールを打ち始めた。
「なんで、この間 カラオケに誘った時に、塾があるなんて嘘ついたの?
いつもなら、塾が休みの日だから、そんな事 言わないよね?
だから、将也君から本当の理由を聞きたくてメールしました。
連絡待ってます。 彩音より。 」
いつもなら、絵文字とか顔文字とかで可愛くデコってある彩音ちゃんのメール。
だけど、今回のメールには、そんな可愛さが一つも存在しない。
要するに、それだけ余裕がないっていう証拠―――。
実に彩音ちゃんはわかりやすい。 面白いくらいわかりやすい。
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だけど、そんな彩音ちゃんも もうお仕舞・・・。
だって、何時間待っても将也君からの返信は来ないんだもん♪
――幽霊って、電磁波的な能力を操れるんだ♪ みんな、知ってた!?
そんな理由で、私は彩音ちゃんが将也君に送ったはずのメールを操って未送信状態にした。
いやっ、正確に言えば彩音ちゃんの携帯には“送信成功”って出ているわけだから、未送信状態ってわけではない。
だけど、どちらにしろ将也君の携帯に届かないように妨害したことは事実。
だから、彩音ちゃんは決断することになるのである―――――。
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彩「なんでっ・・・」
「なんで・・・返信が来ないの?」
「やっ、やっぱり嫌われちゃってるのかなっ・・・私っ・・・」
彩音ちゃんはベッドの上で、泣くのを必死に堪えようとしているが、残念ながら その努力は報われず 顔は涙で濡れている。
だから、そんな涙を拭うために、彩音ちゃんは顔を枕に沈め込ませた。
そして、鼻水を啜る・・・。 しかし、それ以上に溢れ出る涙と鼻水。
もう これで、彩音ちゃんの人生も終わり・・・。
私は彩音ちゃんの耳元にフワフワと近づいて、囁いた。
私「楽になりなよ・・・」
「自分のためにも、私のためにも・・・」
「だから、お願い・・・死んで頂戴・・・」
――私は嗤いながら そう言った。
だって、全てが思い通りなんだもんっ!!
彩音ちゃんの死も、後々見せるであろう将也君の悔し顔も―――。
それもそのはずだ。 だって、将也君は悪くない!!
この間 カラオケに行けなかったのは、塾での特別授業があったからだし、今回の彩音ちゃんが待っていたメールの返信ができなかったは、そもそも自分の携帯に彩音ちゃんのメールが届いていなかったんだから仕方のない事。
だから、彩音ちゃんの死んだ理由がわからない将也君は、「なぜ相談してくれなかったんだ!!」って悔しがるに決まっている。
だけど、私は多分 その姿を生で見ることはできない。
だって、将也君が悔しがる頃に、私はすでに成仏してこの世にはいないのだから♪




