ジョウブツスル
“どうすれば成仏することができるのか?”について考えていたら、目の前に死んだはずの木村が現れた。
だけど、幽霊である私がこの世界にいる以上、幽霊である彼もまたこの世界にいることは何の不思議でもない。
だから、私はびっくりするのを必死に堪えていた―――。
だが、今はそんなことをして、悠長に過ごしている時間などではない。
とにかく、私は答えが知りたいのだ。
どうすれば成仏することができるのか?についての答えが知りたいのだ。
だけど、同じ幽霊の・・・同じ浮遊霊の木村に聞いたところで答えは―――――
―――――って、まてまてまてまて!!!
私「ちょっ、あんた身体が透けてきてるよ!?」
「どうしたの、それ?? まっ、まさか成仏するとか!?」
私は木村の身体が透けてきていることに気が付いた。
いや、正確にいえば、すでに透けている身体がさらに透けていることに気が付いた。
だが、木村は慌てずに、そのことについて私に告げる。
木「そんなこと知ってるよ・・・」
「だって、俺は“成仏”できそうだから、楓に会いに来たんだよ・・・?」
私「えっ?どういうこと??」
「なんで、私なんかに??」
「それに、成仏できるからって・・・?」
木「それは、楓が彷徨わないようにするため・・・」
「だって、楓は自殺なんかじゃない・・・俺に殺されたんだよ・・・?」
「――そもそも、俺は楓の事が大好きだった・・・」
「だけど、楓は全然 こっちに振り向いてくれないし、俺の心は憂鬱な気持ちになるばっかりで、そこから俺は自殺という道を選んでしまった・・・」
木「そう、、、お前にフラれて死んだ俺には、楓を殺すという選択肢しか残っていなかったんだ・・・」
「だって、俺が楓を殺せば、またとこうして楓と話すことができるだろう??」
「でも、だからといって、すぐに楓を殺そうと思ったわけじゃないんだ・・・」
「ただ、楓が俺のことを悪く言うから、それが少しだけ気に入らなくって・・・」
「――だってそうだろう?」
「俺が自殺するに至った理由の一つに“楓にフラれた”ということがあるんだから、楓は少しくらい反省したっていいだろう??」
「だけど、楓は少しも反省なんてしなかった・・・」
「そもそも、する気すらなかったんだから、仕方がないことだよね・・・」
「だから、俺は楓を殺すことにしたんだよ・・・?」
「そう、、、俺は死んでから楓を見守り続けることで、楓を死に追いやったんだ・・・」
「でも、だから、これで楓も死んだことだし、チャラってことでいいんじゃないかな??」
私「ちょっ、待って?」
「それって、一体どういうこと!?」
「なんで私が木村に殺されなきゃいけないわけ!?」
「ってか、私はちゃんと自分の力で死んだし、そもそも私が死のうとしてた時に、木村はすでに死んじゃってたじゃん?」
「なのに、それなのに、どうやって私を殺したって言うのよ!!」
木「さすが、楓だな・・・」
「そんなことにも気付いてないの?」
「本当に楓は鈍感だね・・・」
「まぁいいや・・・答えを教えてやるよ・・・」
私はそこで完全に思考停止状態になった。
だけど、だからと言って、木村の言葉を聞かないわけにはいかない。
そう思って、私は木村の言葉に必死に耳を傾け続ける。
木「少し話は変わるけど、楓は《テルテルボウズの誘惑》っていう都市伝説を知ってるか?」
私「うん、何となくは知ってるけど、詳しくは知らない・・・」
木「よし!じゃあ、どこまで知ってるか言ってみてよ・・・」
私「あれでしょ?」
「なんだか周りの存在を怖く感じ始めた主人公が首吊り自殺をしてしまって、その負の出来事が徐々に連鎖していくっていう話でしょ??」
木「ははっ!」
「本当に楓は雑な性格してるよね・・・」
「だけど、大体の枠組みは合ってる・・・」
「だから、そう思っておいてくれていいんだけど、この都市伝説の問題は“なぜ周りの存在が怖いと思うようになるのか?”ってところにあるんだよ・・・」
私「えっ?」
「なんで、そんなところが問題なの?」
木「あ~、本当に楓は馬鹿だよね・・・」
「この都市伝説は“負が連鎖”するんだよ?」
「ってことは、“主人公の自殺という負の前にも、何か負の出来事があった”と考えるのが当然じゃない?」
「で、そして、なぜこの都市伝説の名前が《テルテル》ウズの誘惑”なのかってことを考えると―――??」
私「はぁっ?」
「ちょ、意味がわかんないんだけど!?」
「もう少しわかりやすく説明してくれないかな?」
「じゃないと・・・・・」
―――――
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木「あぁ、ごめん・・・」
「どうやら、お迎えがきたみたいだ・・・」
「だけど、俺が伝えるべきことは伝えたはずだし、後は自分で考えてよ・・・」
「それじゃあな、楓花・・・」「お前の事、大好きだったよ・・・」
そう言い残して、木村は私の目の前から消えていった―――――。