懇願
“自業自得…ってどういうこと?健ちゃんに感謝…って一体何を?”
あたしがそう口を開こうとしたとき
「それにしても美心ちゃん、雰囲気変わったね。水球クラブにいたときにはショートカットで、まるで男の子みたいだったのに…中一になった今では髪も肩まで伸ばして、ちゃんと “女の子” してるよ」
桂木くんがそう言って微笑む。
「そっ、そうかな…」
あたしは少し照れながら、頭を掻く。
…。
…確かにあたしは、小学生のときには髪も短くてボーイッシュだった。
…まぁ、外見だけじゃなくて、悪ふざけをする健ちゃんを追い回したり、取っ捕まえて制裁を加えたり、一緒になって泥んこ遊びをしたり、木に登って遠くの景色を眺めたり…。
ある意味本当に、男の子っぽかったのだけれど。
中一になった今ではちゃんと自分を自覚?して、一応?は女の子っぽくしてる?から問題はない…はず…。
?マークが多くなるのが、ちょっと引っ掛かるところだけれど…。
…うん! “終わり良ければすべて良し” よ!
…あれ?何だか使い方が間違っているような…。
でも気にしない…うん!気にしない!
あたしがそう一人、変な風に納得をしていると
「美心ちゃんは風間コーチが亡くなって、どう…思った?」
ふいに優しい微笑みの消えた桂木くんが、真剣な表情で聞いて、きた。
「…ぅん?」
桂木くんのあまりにも真剣な表情に、一瞬返答に困ったあたしだったけど…。
それでも口を開けば
「何だか変な感じ…かな。知ってる人が、この世からいなくなる…っていうか、もう会えないんだな…って。でも正直、まだ信じられない感じで…現実味がなくて…」
あたしがそう応えると、桂木くんは真剣な表情のまま、その言葉を聞いていて…。
そして、ふと
「…僕は…気持ちがすっきりした感じ…かな?…過去の呪縛から解き放たれたみたいに…心が自由になったような…」
そう呟いた。
「…えっ?」
あたしが驚いて、そんな桂木くんを見つめると、桂木くんは見たこともないような寂しそうな顔で、微笑み返した。
…。
…桂木くんはあたしに、何かを伝えようとしている…?
さっきの言葉…そして今の言葉…。
きっとそれは、風間コーチの死に関係していることで、とても言い難い…こと。
そしてそのことに、健ちゃんも関わっているかもしれない、ということ…。
このまま何も聞かないほうが…。
…心が、ざわつき始める…。
…。
……。
………それでも、あたしは知りたい。
知らなくてはいけない、そんな気が…する。
このままここで口を閉ざしてしまったら、目を瞑ってしまったら、いけないような気がする、後で後悔するような気がする。
“そんなのは絶対に、嫌だ”
あたしは心を決めて、小さく息を吸い込むと
「ねぇ…桂木くん。あたしに話したいことがあるのなら話してみて。あたし…絶対に誰にも言わない。もちろんお父さんにも、もし今回の風間コーチのことが事故死じゃなくても…もしそのことに誰かが…健ちゃんが関わっていたとしても…。絶対に誰にも言わないから…。ただ…どんなに辛いことでも、本当のことが知りたいの」
そう一気に言って、桂木くんのことを真っ直ぐに見つめ直した。




