探偵誕生?
あたしが普段着に着替えて一階に降りて行くと、リビングのテーブルの上には、ラップのかかったオムライスと温野菜のサラダが置いてあった。
こんなときに食欲なんてわかないよ…とは言いたいけれど、やっぱりそこは中学一年生だし…食べ盛りだし…。
何だか変な言い訳を自分自身にしながら、あたしはラップのかかったオムライスを電子レンジに入れて温め始める。
その間に…冷蔵庫の中からミルクを取り出してコップに注いで、ついでにドレッシングを温野菜のサラダにかける。
ちょうど温め終わったオムライスを電子レンジから取り出して椅子に座ると、一人モクモクと食事を始めた。
…うん!
やっぱり、お母さんのオムライスっておいしい!
単純にそんなことに感激しながら、でも満腹中枢が少しずつ満たされてくると、いつの間にかあたしの気持ちは必然的に、風間コーチのことでいっぱいになっていった。
今から二年前…。
あたしが小学五年生のときに発足した “人魚水球クラブ” 。
風間コーチはそこの先生の一人だった。
当時はまだ確か…大学二年生で、それでも小中高大学と水球一筋な水球大好き人間。
人魚水球クラブを発足させた徳川コーチと共に、後進育成のために学業と両立させながら、一生懸命頑張っていた。
まぁ…水球クラブといっても、実際はあたしを含めて生徒はたったの11人…。
しかもその内、女の子はあたし一人だけだという弱小初心者クラブだったのだけれど…。
あたしは食べ終わった食器の残骸をキッチンの流し場まで運ぶと洗い始める。
ひねった蛇口から溢れ出る水流が、何となくプールの水を思い出させる。
正直なところ…。
あたしは特別、水球自体に興味があった訳じゃなかった…。
ただ…幼なじみの健ちゃんが、水球を始めると言い出したので、あたしもそれにくっついて半ば強引に入部したような感じだった。
…うちの近所に住んでいて、いつも一緒に遊んでいた “健ちゃん” こと、高崎 健太くん。
両親同士が仲が良かったということもあったのだけれど。
それ以外にも幼稚園、小学校とずっと同じクラスで…。
なぜか中一になった今も、同じクラスの腐れ縁。
ここまでくると幼なじみというか何というか…。
周りの友だちからはよく、 “あんた達、付き合ってんの?” なんて言われるけれど…、決してそんなんじゃなくて。
友達以上 恋人未満みたいな…幼なじみ特有の独特な関係というか…。
…あれ?
何であたし、こんなこと考えてるんだろう…?
食器を洗い終えて、濡れた手をタオルで拭きながら、あたしは首を傾げる。
…そうそう!あたしは風間コーチのことについて考えていたんだった。
健ちゃんとあたしの関係は、今はどうだって、いい。
それにしても…あたしの脳裏に、ふと疑問が思い浮かぶ。
あんなに水球に慣れ親しんでいた風間コーチが、そう簡単にプールで事故死だなんてあり得るのだろうか…?
確かに体調が悪かったり、予期せぬことでの事故死はあり得るとは思うのだけれど…。
あたしはキッチンの流し場の前で一人、腕組みをして考える…。
何となく気分は、名(迷?)探偵チックだ。
でも…今のところいくら考えても、どんな状況での事故死だったのか、それが分からないと何とも言えない…。
…。
…!
そうだ!
健ちゃんなら、幼なじみの健ちゃんなら、その状況が分かるかもしれない!
あたしは小学校卒業と同時に人魚水球クラブをきっぱりと辞めたけれど、健ちゃんは確か中一になった今でもコーチ補助みたいに、後輩の小学生達の育成に水球クラブへ行くって言っていたような…。
あたしはポケットから急いで携帯を取り出すと、健ちゃん宛にメールを打ち始めた。




