友達以上 恋人未満
玄関のドアを開いた先に待っていたのは…
「…よっ!ちょっと早いけど、そろそろ行くぞ!」
プールの塩素で少し茶色くなった髪と、太陽からの紫外線で日焼けした顔…。
そう、幼なじみの健ちゃんだった。
「えっ…?そろそろ行くって、どこに…??」
あたしが驚いて聞き返すと
「お~い!ボケるにはまだ早いぜ?一昨日メールしただろ?映画のチケットを二枚 貰ったから、良かったら一緒に行かないか!ってさ」
あたしはハッとして。
そうだった…そう言えばそんなメールが着ていたけれど…すっかり忘れて…た。
健ちゃんは、そんなあたしの様子を見てニヤリとしながら
「完璧に、忘れてた…だろ…」
そうポソッと言う。
あたしはムキになって
「そ…そんな訳ないじゃない!少し早く来るのが悪いんでしょ?今から用意しようと思ってたところなの!女の子にはね…色々と準備ってものがあるのよ!ちょっとここで待ってて!」
そう早口で言うと、急いで自分の部屋に舞い戻る。
…。
振り向かなくたって、健ちゃんがどうしていたのかが分かる…。
…だって、健ちゃんのクスクス笑う声が、あたしの背中に、耳に、届いていたのだから…。
☆☆☆
明るめのチェックのワンピースに、ポシェットを合わせて…。
…これも、デートって言うのかな?
いつもより少しだけおしゃれをしたあたしは、少し先を素っ気なく歩く健ちゃんのその背中を見つめながら…ふとそんなことを考えていた。
健ちゃんはいつもと同じで、とてもラフな格好…。
薄いブルーのTシャツに、ジーンズ姿。
…そんな薄いブルーのTシャツを見つめていると、まるでプールの中にいるみたい…。
…!?
次の瞬間…ふいに、小学生の頃の健ちゃんの顔が思い浮かんでは、消えた…。
あたしの両肩に手を置いて、真剣な眼差しで…
“美心、後片付けはいつも俺がするから、美心は絶対にするなよ!…そして倉庫ドアは、絶対に開くな!約束だぞ!”
そう…言う。
…何度も
“約束だぞ!”
と…。
水球クラブの練習が終わって…風間コーチに初めて後片付けを頼まれたあの日…。
健ちゃんがあたしの側にやって来て、真剣な表情で何度も囁いた、言葉…。
あたしはその迫力に、ただ小さく頷いて…倉庫の前で健ちゃんが後片付けを終えて出て来るのを…じっと、待っていた…。




