秘密の受容
…。
……。
………一週間。
風間コーチが亡くなってから、一週間が経っていた…。
当初お父さんが指摘した通り、その後特に何の問題もなく風間コーチのその死は、不運なプール内での事故死ということで片付けられ、誰もその話題には触れなくなっていた…。
人魚水球クラブは、主催者の徳川コーチが解散を発表し、誰もそれを引き止めることなくひっそりと、その歴史に幕を閉じた。
…あたしはといえば、中学生になってから初めての夏休みの続きを再び満喫するように、自分の部屋のベッドの上に横になっては、相も変わらずゴロゴロとしていた。
…夏休みに入ってからすぐに起きた、あたしが小学生の高学年のときに通っていた人魚水球クラブのコーチの一人である風間コーチの突然の死…。
あたしは何だか探偵気取りで、小学生のときに同じくその水球クラブに通っていて、中一の今は、OB 兼 コーチ補助としてそこに行ったいた、幼なじみの健ちゃんに連絡を取り、風間コーチの死について、健ちゃんから色々と話しを聞いている内に、健ちゃんがあたしに何かを隠しているということに気がついて、不安な気持ちになったりも、した…。
…それから水球クラブのOBで、やはり中一の桂木 修平くんが、突然あたしの家にやって来て、健ちゃんがあたしに隠していた衝撃的な事実を、桂木くん本人の口から聞き出し、それを知ることとなった…。
あたしは居ても立ってもいられなくなって…風間コーチの彼女で、水球クラブのコーチの一人でもある三枝コーチのマンションを訪ね、そこでその全真相を知った…。
あたしはゴロンッ…とベッドの上で大の字になると、部屋の天井を見つめる…。
…誰にだって。
そう、誰にだって人に言えない秘密の一つや二つを持っている、はず…。
…もし自分の大切な人が、大好きな人が…
少年愛者だったら…?
少女愛者だったら…?
SM愛好家だったら…?
同性愛者だったら…?
ある犯罪の加害者だったら…?
被害者だったら…?
…それとも、もっと別な…あたしの想像もつかない、とてつもない “何か” だったとしたら…?
あたしはそれを、受け容れることが出来るだろうか…?
そのことを知っても、愛し続けることが出来るだろうか…?
…。
そんなことをボッ~としながら考えていると…。
クゥ~と、お腹の虫が声を上げる。
…うん!考えると脳の糖質を使うから、お腹が空くよね…。
どんなに真剣に色々なことを考えていても、やっぱりそこは中一の女の子!
空腹に勝るものなんて…絶対に、ない。
あたしは冷蔵庫の中にある、取って置きのモンブランケーキのことを思い出して、少しウキウキしながらベッドから飛び起きると、二階の自分の部屋から階下のリビングへと向かう。
あたしは…刑事であるお父さんに、この一連の物語を何一つ話さなかった。
刑事の娘としても…ううん、ひょっとしたら一人の人間としても、あたしの判断は間違っているのかもしれない…。
…でも、それでも、あたしは…。
…そのとき
“ピンポ~ン”
玄関のチャイムが鳴る。
階段を降りかけていたあたしは
「は~い」
と返事をしながら、急いで階段を降りて玄関へと向かい鍵を開けると、ゆっくりとドアを開いた…。




