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真相

山積みになったUSBメモリと…小さなビデオカメラ一つを前にして…。

あたしはただただ呆然ぼうぜんとそれらを見つめ続けて、いた。


こんなにたくさんの、記録…。

この一つ一つのUSBメモリの中に、人魚水球クラブの男の子達全員の…。

桂木くんの…健ちゃんの…苦しみと悲しみと憎しみと怒りがおさめられて、いる…。


あたしはやり切れない想いと共に、そんな中…妙に落ち着き払った声で、淡々と一人話し続ける三枝コーチの声を黙って聴いていた。


「…それでね、良介が死んだ日の夜。この記録したモノを、ビデオカメラを、良介の部屋から全部持って来たのよ~。もちろん、ノートパソコンの中身も全部削除しておいたわ~。どうしてそんなことをしたのか…と言うとね…」


三枝コーチはここで一度、言葉を切ってから


「私も…人魚水球クラブの生徒達全員と、ある意味同罪だから、なのよ…」


淀みなくんだ声で、はっきりとそう言った。

あたしはその言葉にハッとして、三枝コーチを驚きながら見つめると…。

三枝コーチは寂しげに微笑んで


「昨日のことなのに…もうずっと昔のことみたい…。徳川コーチは丁度お休みで…私と良介と健太くんと数人のOBが、生徒達の指導にあたっていたのよ…。そのうち健太くんが、『タイル拾いゲームやりましょう。ただの個人戦じゃつまらないから、風間コーチ VS 俺達OBも含めた生徒達全員でどうすっか?』…なんて言い出して。地味に、タイル拾いゲームは盛り上がるわよね~」


ここで三枝コーチは、鼻でクスッと小さく笑うと


「…今考えれば、良介もバカよね…『よ~し!受けて立ってやるぞ~!』…なんて言いながら、爽やかに笑ってたわ~…」


そう言ってあたしから視線を外すと、まるでその瞬間を思い出すかのように…どこかくうを、遠くを見つめながら、続ける。


「私は審判役で…。プールの中にばらかれた色付きのタイルを見て張り切る良介と…どこか対照的な生徒達に向かって、スタートの合図の笛を吹いたのよ。…もちろん一番最初に飛び込んだのは、良介だったわ…」


甲高かんだかく響く笛の

そしてプールに次々と飛び込んで行く水しぶきの音…。


あたしにもその瞬間が、見えてくるようだ…。


「おかしいな…と思ったのは、生徒達全員が笛の音からワンテンポ遅れて、みんなで目配せをしながら…先に潜っている良介の上におおかぶさるようにして順番に潜って行ったこと。…そして、一番最初に水面から浮かび上がって来た、健太くんの顔を…その瞳を見た瞬間…」


三枝コーチは、その瞬間の健ちゃんの瞳を思い出したのだろうか?

そっと2~3秒目を閉じて…そして再びゆっくりと開いた。


…風間コーチをプールの底で、生徒全員で覆い被さるように抑えつけて…。

いくら大人の水球選手でも、真っ直ぐ水平に潜っているところを十人前後の子ども達に覆い被さられるように抑えつけられたりしたら…。


そしてそれを先頭に立って行ったのが… “健ちゃん” 。

だから健ちゃんが、一番最初にプールから顔を、出した…。


…健ちゃん、どんな気持ちだったの?

一体、どんな…?


あたしのその疑問に、まるで応えるように


「…とても…満足そうな…。そう、何とも言えない…今まで見たこともないような表情かおで微笑んだの…。まるで大きな何かを成し遂げた後みたいに…。そして…水槽すいそうの外からしんそうに見つめている私に気がついて…目と目が合った瞬間、…もう一度ゆっくり…同じ表情で、瞳で、微笑んだ…の」


三枝コーチは静かにそう言ってから


「…でも私…思ったのよ~。…良介はみずからのごうからのがれ切れずに、人魚達から復讐ふくしゅうをされて…そして永遠に…」


三枝コーチはここで一瞬言葉を切ると、そのまま続けて


「私の “モノ” になったんだから…それでいいって…ね」


そう言うと、怖いくらいにあたしを真っ直ぐに、見た…。

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